オン・インデペンデンス・トゥデー
再誕歴7703年ジュライ12日。
ベルモンド伯爵領、 ベルモンド邸。
広間に集められたサン、 マルガレーテ、 フェザー。
セルデンとジョン。
ルン、 セイバーダー、 バーリィ、 デトネーター。
ネヨーとデトネーターお抱えの決闘者スプリングヘア。
ワームウッドとベルモンド、 そしてケイ。
「・・・・・ベルモンド、 独立って本当か?」
決闘の為にやって来たのに長々と待たされたセルデンが若干イライラしながら尋ねる。
「勿論、 だ
ケイ君、 説明を」
「はっ・・・フロップス、 インターコネクト、 アグリー
それぞれを領を統一し独立を宣言しました」
沈黙が部屋を包む。
「黙っている事はねぇでしょう!! 今すぐに兵隊送って領地を取り戻しに行きましょうぜ!!」
セイバーダーが立ち上がる。
「勢いは良いが落ち着け若いの」
ワームウッドが制する。
「しかし大臣」
「落ち着けという言葉の意味を説明するか? 若いの?※1」
※1:訳.黙れ
「・・・・・すみません、 しかしこういうのはとっとと動いた方が良いんじゃないのですか?」
「それは向こう側の理屈だ」
デトネーターが言葉を紡ぐ。
「どういう事ですか? 危険な状況だと私は認識していますが・・・」
サンが尋ねる。
「・・・・・ベルモンド閣下」
「いや、 これは仕方ないでしょう、 独立なんて勉強の範囲にならない位に
滅多に起こらない事です」
「それもそうですね、 では説明しましょうか、 現代における独立について」
デトネーターが説明を始めた。
「独立と言うのは魅力的な言葉です、 新しく国を作り王になる
胸が躍ります、 しかしながら厳しい所が多々有ります」
「厳しい所・・・やはり軍事面じゃないのか? 3つの領が合わさっても
俺達門閥貴族には敵わないだろう」
「それも一つの点ですが・・・・・そうですね、 会社経営に考えると分かり易いですよ」
セイバーダーの言葉を一部肯定しながらも言葉を紡ぐデトネーター。
「会社経営?」
「社長になるのは夢が有るが会社をどう運営していくのか?
と言う話です、 会社を作って会社のあれこれをする
敏腕社員が企業して社長としてやっていけるかは別問題です」
「あー、 確かに」
成り上がり当初に色々苦労した事を思い出すセイバーダー。
最初は『このまま公爵まで上り詰める』なんて考えていたが事務処理の辛さで
『このままでも良いか』と妥協したのだった。
「そして何よりも維持出来るかと言う所が問題です
この3つの領はこれと言った特産品も無い所故に貧しい
畑や農場も少なく、 果たして自給自足出来るのか・・・」
「・・・・・今までは如何していたんだ?」
「我が領で出稼ぎしに来て貰って見返りに食料を渡す契約を結んでいた」
バーリィが答える。
「なるほど」
「だがしかし他国の人間を雇うなんて事はしないから彼等の食料源は断たれた
その3つの領には水源は有るのかい?」
「いえ、 隣の領からの大きな河川が流れています、 既に河川はせき止めましたので
水源も経たれています」
バーリィの問いに答えるベルモンド。
「・・・・・つまり連中は食料と水が無くてピンチって事?」
「そうなりますね、 戦争ならば一時的ですが
独立となると国家運営は日常ですから永続的な食料と水の供給が無ければピンチですよ
最悪、 水は井戸を掘れば有るかもしれませんが
水資源は一気に乏しくなるので焼け石に水です」
セイバーダーに答えるデトネーター。
「破綻必至で独立宣言、 何でそんな事をしたんだ?
おい、 騎士、 答えろ」
「・・・・・」
「お前だよ!!」
「あ、 はい!!」
セイバーダーに尋ねられて答えるケイ。
「『度重なる領主の不祥事に腹を立てた』との事です!!」
「それは理は通っている、 しかしながらこの場合は賠償の請求でしょう
独立なんてやる方が可笑しい」
ルンが断言する。
「何者かの入れ知恵・・・と見るのが普通でしょうな
やはりここは攻め込んだ方が良いんじゃないのですか?」
セイバーダーが問う。
「いやいや、 ここは包囲が無難だ」
「包囲ですか?」
ワームウッドの言葉に問い返すセイバーダー。
「相手は殆ど武器を持った事の無い市民達、 しかしながら何をするのか分からん
ならば包囲して待てばいい」
「悠長ではありませんか?」
「いやいや、 人間て言う物は囲まれると精神が乱される者
独立戦争以外にも包囲をした事が有るが包囲された側は飢え死にする前に
殺し合って自滅するんだ、 囲まれて精神が不安定になって
閉鎖空間で殺し合う」
「こえー・・・って言うか大臣閣下そういう戦い方もするんですね
イケイケの武闘派かと」
「あのなぁ、 ワシだって考えて戦うわ」
「お言葉ですが!!」
マルガレーテを声を挙げる。
ぎろり、 とマルガレーテを見るワームウッド。
「は、 発言を許可願います!!」
「どうぞ」
「全員が独立に賛成している訳でもないと私は推測します
彼等も死なせるのは余りにも可哀想です」
「優しいお嬢さんだなぁ、 しかしそれに関しては問題は無いと思うぞ」
「その点は問題無いぞマルガレーテ、 独立政府との交渉の為に特使が今日ここに来る事になっている
独立反対派の者達はその時に救えば良い」
「分かりました」




