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ジ・エンド・オブ・フェスティバル

再誕歴7703年フェブラリー15日。


ルナティックサーカスのサーカステントの楽屋、 芸人達が談笑している。


「いやぁデカイ興行だなぁ、 俺達の名も爆上がりってか?」


芸人の1人が笑う。


「俺達のギャラも上がるってさ」


スターの1人としても名高い豹の獣人のキリマンジャロが事も無げに言う。


「ホントかキリマン!?」

「あぁ、 何でもここをホームタウン※1 にしないかってお誘いが有ったらしい」



※1:登記上の本住所の事。



「誰から?」

「領主のチーズ、 スカイミラーの芸を見たらそうなるな」

「あの人やべぇもん、 ウチの人気の7割方は座長で持ってるし」

「だなぁ・・・あの人は頭のネジが外れてる

命綱無しで逆立ち火の輪くぐり綱渡りって常人ならやろうとも思わねぇだろ」

「あの程度、 お遊びだよ」


ルナティックサーカス古株の牛の獣人、 ステーキが事も無げに言う。

彼も芸人だがスカイミラーの様な無茶な芸をして失敗し右目を失い

現在は目隠しを主とした芸を得意とする。


「ステーキの旦那は辛辣だなぁ」

「いや、 事実だ、 俺とアイツの出会った所はこんなもんじゃねぇよ」


ぐび、 とビールを一気飲みするステーキ。


「出会った所って?」


新入りの芸人が尋ねる。


「あー、 若いのは知らないのか」

「結構有名な話だぞ、 シャイニングランドの人食い賊」

「人食い賊?」

「シャイニングランドには人食い賊って呼ばれる人や獣人を好んで食う

イカれた連中が大勢居る、 ガキの頃の俺とスカイミラー

後他多数はそいつ等に食い殺されるのを待つ日々だった

だがスカイミラーは隙を突いて見張りを打っ殺して俺達を解放してくれた

そこから逃げた連中でルナティックサーカスを立ち上げたって訳だ」

「・・・家に帰るとかは?」

「しないしない」

「何故?」

「察せよ」

「え? どういう」

「おっつかれー!!」


スカイミラーが楽屋に入って来る。


「「「お疲れ様でーす」」」

「ういーっす、 お、 ステーキ()ってるな? 俺にもくれよ」

「あいよ」

「サンキュ」


スカイミラーがステーキからビールを貰って一気飲みする。


「っはああああああー、 旨いなぁ」

「だな」

「・・・・・何か辛気臭いなぁ、 何話してた?」

「俺とお前の過去話」

「世界一レベルで辛気臭い話すんなよなぁ!! 止め止め!!

今女子陣が()ってるから、 飯行こうぜ」

「だな」


ルナティックサーカスの面々は外に食事しに向かうのだった。




再誕歴7703年マーチΩ日。


祭りの最終日。

ハートレスの処刑当日。

処刑人と教誨師、 そして処刑の見届け人としてワームウッドもやって来た。


「軍務大臣閣下、 本日はよろしくお願いします」

「あぁ、 にしても凄い規模の祭りだなぁ・・・」


群衆が『殺せ』の大合唱。

ハートレスの死を今か今かと待ちわびている。


「ここまで嫌われるとはな・・・無様なもんだ」

「こうなって当然、 さっさと殺すべきだったわ」


セイバーダーとセルデンは談笑している。


「喧しかったが良い茶人にも出会えたし概ね満足だ」


ベルモンドも呟く。


「さっさと終わんないかなぁ・・・」


エトナがぽつりと呟いた、 と同時に銅鑼が鳴り響く。


「さぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁ!!!!!

御待たせしました皆さん!! 祭りのクライマックス!!

ハートレスの処刑の始まりだああああああああああああああああああああああ!!!!!」


ドン!! と花火が打ち上がり咲き乱れる。


「派手だなぁ・・・」

「良い花火師だ、 紹介して欲しいな」


スクイドとルンが花火への賞賛を語る。


「今まで30人のメイドがアンタより先にあの世に行っちまって

アンタを今か今かと待って居るぜ!! メイドより地味な絞首刑での死だけども

アンタの死に様を見たくて皆うずうずしてるんだ!!

最後の教誨師さんに最後の言葉を伝えたらとっとと死んでくれ!!」


スカイブルーがにこにことハートレスに語る。

ハートレスの自死を防ぐ為に噛ませていた(くつわ)が解かれ

教誨師が最後の言葉を訪ねた。


「最後に何か言い残す事は?」

「・・・・・」


ハートレスは飢えと渇きで如何にかなりそうな精神を抑えながらも口を開いた。


「僕は皆の為に行動して来たんだ!! それなのに君達は僕に協力してくれない怠け者だった!!

君達は自分達の無能さや怠惰を僕達に押し付けて僕に責任転嫁しようとしてる!!

目を覚ましてくれ!! 今までみんな仲良くやって来たじゃないか!!」

「ふざけんな!!」

「どの口が言っている!!」

「お前達が上げて来た税金はお前達の浪費で滅茶苦茶じゃないか!!」

「私の夫を返せ!! この人殺し!!」

「メイドにも『お前の言う通りにやったのにこの様だ責任取れ!!』って言われてるのに

まだ自分が悪いと思っていないのか!!」


群衆達が罵声を浴びせる。


「ここまで来ると残酷すぎるな・・・これがあのハートレス家の最期か・・・」

「・・・・・」


先代のハートレス準公爵と交流が有ったベルモンドとセルデンは目頭を押さえた。




その後、 ハートレスの処刑は粛々と終わった。

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