ザ・フォール・オブ・ア・ファイブ・バイナリー・スター
再誕歴7700年ディセンバー12日。
ベネルクスフジ決闘場。
ここでベネルクス王国とドラゴヴァニアの領土問題解決の為の国家間決闘が行われる。
既にドラゴヴァニアの代表者5人が現れて決闘場で待機している。
「遅ぇ・・・何やっている毛無し猿共・・・」
ドラゴヴァニア五連星※1 の一人
地獄の吐息フレイムが腹立たしそうに言う。
※1:ドラゴヴァニア最強の5人の戦士。
一人で一個大隊に相当する戦力を有すると言われる。
「ヴォレンが死んだ事で対ドラゴニュート戦において
ベネルクスは大きく戦力を落としたで候
きっと恐れて震えているで候」
ドラゴヴァニア五連星の一人
猛毒の吐息ポイズンが静かに語る。
「カカカ・・・久方の戦じゃ、 先鋒は貰うぞ?」
ドラゴヴァニア五連星の一人にして副リーダー
暴風の吐息アラシが笑う。
「アラシ老は60年ぶりの戦、 血が疼いているでしょう
存分に暴れて下さい」
ドラゴヴァニア五連星の一人にしてリーダー
金剛龍帝スターダストが礼を尽くす。
「カカカ・・・無論じゃ・・・
しかし・・・お前の親父つまりドラゴヴァニア五連星の前リーダーがヴォレンに殺された時
何時か仇を討つつもりで過去最強メンバーを揃えたつもりじゃったが・・・
まさか奴が人間同士のいざこざで死ぬとはのぉ・・・」
「えぇ、 やはり人間は愚かしい生き物ですね」
ドラゴヴァニア五連星の一人にして紅一点
激流の踊り子レイクが呟く。
「しかしながら・・・相手は私達ドラゴニュートを三枚におろせる程の
強さを持つ魔人ヴォレンを倒す程の強者、 果たして勝てるでしょうか」
「所詮は女子供、 脳が詰まってないな」
「何だと火龍が、 水龍の力舐めるなよ?」
「愚かで候、 解説するで候
ヴォレンはドラゴンを殺す事に執着していた経歴を持つで候
多くのドラゴンを殺した事でヴォレンは次第にドラゴンスレイヤーと呼ばれる
ドラゴンに特攻を持つ人間になったで候※2」
※2:特定の種族を殺し続ける事で特定種族に強くなる事は多々ある。
「ヴォレンが猿同士の殺し合いで死んだのは
人間はドラゴンじゃねぇからだ、 特攻が効かない相手にはドラゴンスレイヤーは脆い
そして猿が如何に強かろうとドラゴンスレイヤーじゃなければ勝てる!!」
「その通りだ、 しかしフレイム、 油断はするなよ」
「ハッ!! 心配ねーぜリーダー!!
油断も抜かりもねぇ!! 既に祝勝会の準備はバッチリよ!!」
「まぁ酒を呑もうとする・・・・・来たか」
やって来るベネルクス王国代表!!
レオ、 ジョウゲン、 エッフェル、 ポイニクス、 ヴォイド!!
そして!!
「どうも最強決闘者のチーズです」
「我等はドラゴヴァニア五連星・・・?」
違和感に気が付くスターダスト。
決闘場に上がったのはチーズのみ。
「他の連中は上がらないのか?」
「俺様一人で五人抜きにする」
「ぶふぁあああああああああああああああああああああああ!!!?
何言ってんだお前!!」
フレイムが爆笑する。
「猿がドラゴニュートに勝てると思ってんの?
しかも5人抜きぃ? ヴォレンでも出来なかった事を出来るとでも?」
「いやぁ、 ここに来るまでは5人抜きしようかなぁと思っていたけども
実物を見て気が変わったよ」
「ほぅ、 種族の実力差が理解できたか?」
「五匹纏めてかかって来い」
「・・・・・」
黙るフレイム。
「馬鹿馬鹿し過ぎて話にならんわ、 アラシ老、 やっちゃってください」
「うむ、 任せろ」
闘技場から降りるアラシ以外の4人。
「それでは決闘を始めます」
現れる立会人。
「ルールはクラシカル、 見せ合い無し無制限、 互いに問題有りませんね?」
「無いね」
「うむ、 それで良い」
「それでは立会は立会人№005が行います、 両者名乗りを」
「蜥蜴擬きに名乗る名は無い」
「ふん、 無礼な餓鬼に名乗る名は無い」
「いざ尋常に始め!!」
チーズが腰のKATANAを抜き、 そして飛び上がるアラシ!!
ドラゴヴァニア最高齢とは思えない程の跳躍力である!!
そして、 おぉ!! 背中から龍の如き翼が!!
ドラゴニュートの変身能力を一部使用し翼を生やし飛行しているのだ!!
「なっ!?」
「馬鹿な!?」
「何だと!?」
驚くエッフェル、 ポイニクス、 ヴォイド!!
「早いがその程度の斬撃避ける事は容易いの、 人間共も驚くとは・・・
レベルが落ちたか?」
「お、 お前何やってんだチーズ!!」
ヴォイドが叫ぶ。
「ふん、 攻撃を避けられるとは思っていなかったのかの?」
「頭とか視野の広さとか色々足らん爺さんだな」
「・・・は?」
「立会人ッ!!!!!」
スターダストが叫ぶ、 アラシが振り返る。
立っていた筈のフレイムとポイズンの首が刎ねられ、 スターダストの左腕が半ば切られている!!
レイクは腰を抜かして尻もちをついている。
「決闘の最中に待機中を攻撃するとは何事か!! これは重大な反則行為では無いか!!」
スターダストが溢れ出す血を抑えながら叫ぶ。
「愚かな事を言うな五連星!!」
レオが叫ぶ。
「『油断をしていたからと殺されました』とそんな恥ずかしい事を良くも抜け抜けと!!」
「何だとこのジジイ!!」
「落ち着けよ」
ジョウゲンが制す。
「・・・立会人、 今回の件はナポレオン裁定※3 案件じゃないですか?」
※3:五連勝ち抜き戦等の多人数での決闘の際に待機中の決闘者に対して
決闘中の決闘者が放った範囲攻撃が当たるのは待機中の決闘者の不注意であると言う裁定。
大砲を使うフランス皇帝ナポレオンが提言し広めた裁定である。
この裁定を採用している立会人も多い。
「確かに」
「立会人!! これはフェアではない!!」
「ごちゃごちゃうっせぇわ」
「!!」
アラシの上を取るチーズ。
「このワシの上を取るとは人間にしてはやるっ!!」
「そもそも俺様は5人纏めて来いって言ったのに勝手にどっかいったのはお前等だろうが
無茶苦茶言って駄々を捏ねるな、 ボケが」
「かぁ!!」
アラシが龍へ完全に変身した!!
緑色のウィンドドラゴン!!
「喰らえ我が必殺の暴風の吐息!!」
アラシの龍のブレスが轟く!!
ドラゴニュート最大の必殺技である龍の吐息!!
各々属性は違うが文字通りの必殺技である!!
そしてアラシのブレスの属性は風!!
文字通り暴風の息である!!
「KANATA・トルネード」
「!!」
突如として横向きの竜巻が発生!!
暴風の吐息の数倍は有ろうかと言う暴風である!!
一体何が起こったと言うのか!? その一部始終をアラシは龍の動体視力で見た!!
チーズはKATANAを抜いた後、 ウィルパワーで刀身を構築しリーチを伸ばす!!
そして長くなった刀身のKATANAを扇風機の如く回転させ竜巻を発生させる!!
先程、 フレイムとポイズンの首を刎ねたのはリーチを伸ばしたからか!!
「認めん・・・」
歯軋りをするアラシ。
風の龍たる自分が風で殺される等、 認められない。
そして何より・・・・・
「めんどー、 ねむー」
欠伸をしながら戦うこの不遜な決闘相手に人生でかつてない程激昂した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
KATANAトルネードの中に突貫するアラシ!!
「ワシの身体持ってくれええええええええええええええええ!!」
絶叫しながら竜巻の中を進むアラシ!!
風で肉体が切り刻まれながら進む!!
腕が落ちる!! 足が切られる!! 尻尾が千切れる!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
アラシは構わず突貫する!!
進む為の翼が有れば!!
噛み殺せる牙が有れば!!
この生意気な餓鬼を殺せる!!
「死に腐れええええええええええええこの餓鬼ガアアアアアアアアアアア」
アラシは決死行の末に竜巻を抜けた!!
「KATANAビーム」
アラシの脳天にビームが撃ち込まれ押し戻された。
アラシの身体は竜巻の中に戻され、 アラシの肉体はバラバラにされたのだった。
そしてそのまま地表のスターダストとレイクを包む。
「よーし、 これで5匹全員死亡っと、 どーよ雑魚共!!
俺様の実力は理解して貰えたかな!!」
「この戯け、 まだ残っているぞ」
「うん?」
チーズがレオが指差した場所を見るとそこには今にも絶命寸前だが
尚も立ち上がるスターダストの姿が!!
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
「り、 リーダー・・・私を庇って・・・」
「レイク・・・お前は逃げろ」
「そ、 そんな!!」
「立会人!! レイクは棄権だ!! 文句は無いな!!」
「逃げれば戦闘不能なので問題はありません」
「さぁ行け!!」
「そんな・・・出来ないです・・・」
「!!」
スターダストは即座に龍に変身!!
金色の光り輝く龍!! そして即座にレイクを掴んでぶん投げた!!
「わああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」
これでレイクは戦線離脱である。
「行くぞ・・・にんげ」
ざくり、 と喉をKATANAで貫かれるスターダスト。
「ば、 馬鹿な・・・歴代最硬の私の鱗が・・・いとも容易く・・・」
「歴代最硬ね、 だが俺様は世界最強なんだ」
ばっ、 とスターダストの首を刎ねたチーズだった。




