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ホワイ・ノット

「バロッグの贔屓目、 と思っていたがこれはこれは・・・」


興味深そうにフェザーとの戦いを見るマーナガルム。


「陛下が欲しがるのも分かる人材だ」

「過大評価では? 寧ろ聖剣を使っていて皇族とは言え敵は素人なのに

一撃で済ませられないのは頂けないですなぁ」


マイルズが鼻で笑う。


「いやいや、 あの聖剣は恐らくダモクレス級※1

それならばヴァカには出来ませんよ」



※1:聖剣の等級。

下から無銘級、 ダーインスレイヴ級、 ダモクレス級、 レーヴァテイン級。

無銘以外は過去に存在した有名な聖剣から取られている。

分かり易い力量関係を現代兵器に例えるならば

無銘級:軍用車両

ダーインスレイヴ級:爆撃機

ダモクレス級:空母

レーヴァテイン級:核兵器

となる。

因みに等級は戦闘能力のみを判断して付けられている為

リスクを含む聖剣も多々有る為、 使いやすいかどうかは別問題である。



「何だそれ? あの聖剣がどれだけ強いか知らないけどもS級の恥さらしでは?」

「セルデン侯爵は如何思います?」

「そうだな、 あの皇族とやらは寒がっている様子が無いので

本人にも冷気の耐性を付与している物を見るべきだろう、 是非とも欲しいな」

「ですよねー」

「おい、 無視するなよ」

「無視するのは寧ろ優しさですけどね」

「はい?」


ベネルクス95世の言葉に冷や汗を流しながら返事をするマイルズ。


「な、 何かご不興でも・・・」

「聖剣の等級も知らずに人を下げる事を言うのはどうかと思いますよ

例えるならばオレンジとグレープフルーツの違いも知らずに

あーだこーだ騒ぐような物ですよ、 気の毒過ぎて構う方が可愛そうです」

「・・・・・オレンジとグレープフルーツって同じじゃないですか?」

「・・・・・」


ニッケルとオレインを見るベネルクス95世。

即座に目を逸らす二人。


「何かの病気なのかもなぁ・・・・・」

「???????」






一方、 その頃ゲオルギー配下のロマノフ帝国軍人たちは


「うけるわー」

「マジでざまぁないな、 普段エラそうな事言っているくせにこの様かよ」

「無様だなぁ」


彼等はゲオルギーの事が大嫌いなのでせせら笑っていた。


「・・・・・・・・・・!!!」


一人の男を除いて。

彼の名はミハイル・リャブコ。

武人の家柄であるリャブコ家の男である。

とは言え武人だが武芸を嗜む男であり平民と変わらず

ゲオルギーに対しても忠誠よりも嫌悪が勝る。

しかしながらこの戦いは彼の脳裏に深く刻み込まれていた。


後年、 彼が記した【システマ武芸入門】の序章にてこの戦いの記録が記載されている。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


武芸の家に生まれた私が武芸を志すのでは無く軍隊への道を選んだのは

武芸よりも戦略の方が大事だと思ったからである。


100人力の武芸者よりも100人の兵隊の方が強い。

所詮100人斬りなんて物は英雄譚等の作り物にしかない。

皇族が代々受け継ぐ神が作りし剣を使うのならば兎も角

普通の人間では100人を倒す事は不可能。


そう思っていた。

境界線(グラニュツィ)城での戦いは私の常識を遥かに超えていた。

非公式(アネクドート)を相手に圧倒出来る南の連中の決闘者

名前はフェザーと言った、 少年だった。


だがしかし非公式(アネクドート)を相手に正に赤子の手を捻る様に

一方的に戦っていた。


私にはそれはとても衝撃的だった。


武術が、 人の力が、 神の作りし力に打ち勝つ。

そんな事が目の前で起きてしまった、 ならば・・・・・


私はその後、 衝撃的過ぎて放心状態になってしまい

担架で運ばれて帰国する事になった。


しかしながらあの戦いを見た以上、 やらない訳には行かない。


『100人力の武芸者よりも100人の兵隊の方が強い。』

『所詮100人斬りなんて物は英雄譚等の作り物にしかない。』

『皇族が代々受け継ぐ神が作りし剣を使うのならば兎も角

普通の人間では100人を倒す事は不可能。』


私を武芸の道から遠ざけていた言葉は全て『やらない言い訳』だったのだ。


目の前で実際に起こった出来事を否定する訳には行かない。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ミハイルは二度とヨーロッパ連合の地に足を踏み入れなかったが

彼がリャブコ家の武術から着想した『システマ』は後の世でも活用される事になった。

が、 それは別の話である。




「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」


ゲオルギーは地面に叩きつけられてフェザーに恐ろしい数の攻撃を叩き込まれている。

既に氷の城塞リョートリオート・クレムリンは陥落寸前である。


「こんな、 こんなところでええええええええええええええええええええええ!!!」


立ち上がろうとしてもその瞬間に力を入れた部位を攻撃される。

氷でガードされているが立ち上がれない。

このままでは突破は時間の問題・・・

その時、 城の扉が勢い良く開かれた!!


「?」


フェザーがちらりと見るとロマノフ帝国の軍服と色違いの服を着た者達が現れた。


「ゲオルギー・ロマノフ!! 貴様を捕えに来た!!」

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