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サスペンス・パーソン

「「・・・・・」」


ベネルクス95世と共に一緒の馬車に乗るフェザーとサン。

空気が重い。


「・・・・・陛下、 聊か狭いのでは?」

「普通でしょう」


耐え切れずにサンが口を開く。

ベネルクス95世の馬車は文字通りの馬車である。

以前※1、 フェザー達が乗った重キャリッジとは雲泥の差である。

護衛として四方を守る馬車の方が豪勢と感じる。



※1:チャプター3:キル・トゥー・バード・ウィズ・ワン・ストーンの

ホープ・フォー・アン・オーバーヴェルミング・ヴィクトリー参照



座席が有って乗れる、 4人乗り位の馬車だ。


「一国の王が乗る代物では無いのでは?」

「サスペンション※2 や防音、 防御性能に重きを置いています

例え火山地帯を走っていても揺れ一つ物音一つしません、 火山弾の直撃でも無傷ですよ」



※2:路面の凹凸を車体に伝えない緩衝装置としての機能と車輪・車軸の位置決め

車輪を路面に対して押さえつける機能を持つ事により乗り心地や操縦安定性などを向上させて

振動させずに移動する事が出来る機構。



「馬は死ぬでしょう」

「死にますね」

「・・・・・陛下、 私達をこの馬車に同席させた理由は一体なんですか?

まさかフェザーをまた寄越せと言う訳では無いでしょう?」

「フェザーを知らない女でフェザーを欲しがらない女なんて居ないでしょう?」


さらりと言うベネルクス95世の言葉に赤面するフェザー。


「ご、 御冗談を、 陛下」

「しかしながら今回は別件ですよ、 色々頭が痛い案件がありましてね」

「頭が痛い案件?」

「その通り、 信頼できる人間にしか話したくないので態々来て頂きました」

「・・・・・どのような御用件ですか?」

「えぇ、 実は少々気になっている輩が何人か居ましてね」

「気になっている輩?」

「主に二つ、 まずは【ブラック・シンゲツ・コーポレーション】

彼等がハートレス領を引き継いでから有力者が集まって来ました

カロリング、 カリオストロ、 そしてツゴモリ

ツゴモリに関しては前々から【ブラック・シンゲツ・コーポレーション】と関係はありましたが

他二つは財界の大物、 この二人とチーズの接触には不安しかありません」

「今更ですか、 僕はずっとチーズは何か有ると思っていましたよ」


ベネルクス95世の言葉にフェザーが『何を今更』と溜息を吐く。


「何故?」

「不思議に思いませんか? 常々自分は最強だと言っていて

更に他人の事なんて一切気にしない男が何で社会の中で生活しているのか?

彼と共に過ごしていて彼の事を好きになった事は無いですが

彼が社長になって金持ちになるとかそう言う事に興味があるように思えません

裏組織のボスになって世界征服を企む、 と言う方がまだ納得出来る」

「いや、 それは無いんじゃないのかな」


サンが割って入る。


「カロリング、 カリオストロ、 この二人の経営者としての手腕は凄い

冷たい印象も受けるけどもだからこそ世界征服なんて荒唐無稽な事はしないんじゃないの?」

「私も同じ意見です、 だからこそ怪しい

チーズなんて人格破綻者を使うリスクを考えればカロリングとカリオストロが

彼に協力するなんてありえないと思う、 からこそ怪しい」


ベネルクス95世が険しい顔になる。


「そしてもう一つはマーナガルム男爵、 彼も行動が怪しい

悪事を働いて利潤を得るのは分かるが何がしたいのかが分からない

発言権はあるのに爵位を求めないと言うのは理解が難しい

フィクサーを気取りたいのか? と思ったが違う」



※3:政治活動や企業の営利活動における意思決定の際に

正式な手続きを経ずに決定に対して影響を与える手段や人脈を持つ人物の事。



「彼の事は良く分かりませんが・・・黒い噂のある人だと思います」

「ネーデル公爵のお気に入りですから強く接する事も出来ない

マーナガルムもそうですがカロリングやカリオストロが

私の元に手の物を送っている可能性も否めない、 周囲の人間が信用ならない

そこでフェザー、 そしてサン伯爵令嬢

万が一の時には私に協力して頂きたい」

「言われるまでも有りません、 一臣下として国家に忠誠を尽くすのは貴族として当たり前です

それとは別にフェザーは渡しませんが」


サンが礼節とユーモアをもって答える。


「勿論、 私も協力します」


フェザーも答える。


「ありがとう、 サン伯爵令嬢も今は無理だけど爵位を与える事も考えておくわ」

「ありがたき幸せです」

「・・・・・そろそろ着くわね」


三人が話しているとチェルノボグ城に辿り着いた。

ベネルクス95世が近衛騎士に連れられて馬車から降り、 フェザーとサンもその後に続く。


「やぁやぁフェザー君、 陛下と何の話をしていたのかね?」


にっこりと笑って近づくマーナガルム。


「・・・・・ただの世間話ですよ」

「そうか、 しかしやや気負っているな、 大丈夫か?」

「気負っているのは閣下と話しているからですよ

ネーデル公爵門閥の中でもマーナガルム男爵の名は有名ですし」

「そうかそうか、 では決闘を頑張ってくれよ

君のような優秀な平民が貴族になるのは喜ばしい事だし平民の希望だ

是非とも頑張ってくれよな」

「閣下、 そろそろ」

「うん? あぁ、 じゃあ行こうか、 またな」


側近のハティに連れられて去っていくマーナガルム。


「・・・・・」

「確かに胡散臭い男ね」


サンが呟いた。

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