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フロージング・スマイル

時間は少し遡る。


「見張りから伝令!! 外の連中は一ヶ所に集まっています!!」

「何をするつもりだ・・・?」


マイケルは訝しんだ。


「いや、 寧ろ・・・」

「如何します!?」

「・・・今なら撤退も可能だな、 戦闘員30名を残して他は撤退!!」

「撤退ですか!?」

「あぁ!! 三対一の法則※1 だ!!」



※1:守備側を破るには攻撃側は3倍の戦力が必要だという法則。

長年の戦闘における統計の結果導き出した値である。



「ですが!! 敵の正体が不明なのに戦力分散は!!」

「非戦闘員を矢面に立たせる訳にはいかん!! 当然私は残る!!」

「!!!?」


隊長自らが残ると言うのならば他の者達は文句を言う事は出来ない。

マイケルはその後、 上の階に上がって矢を放った。

矢は何本か敵に当たったが・・・


「氷の壁!?」


ゲオルギーの非公式(アネクドート)により氷の壁が形成され

氷のトンネルにより追撃は不可能になった。


「聖剣使いカ、 ならば話は簡単ネ」


マイケルについて行った菜花が喋る。


「簡単? どういう事だ菜花?」

「聖剣はウィルパワー使いとは違って加減が厳しイ

即ち狭い場所且つ軍隊を率いているのなラ

多用したら味方殺しになル」

「確かに・・・そしてこの状況、 見て見ると挟み撃ちに出来るな」

「なら20残っテ

20後ろに回り込ませれば良イ」

「戦闘員10は撤退に使う」

「ならガタイの良い奴を非戦闘員から連れて来れば良イ」

「怒るぞ」

「安心しろ、 度胸のある奴はいるサ」


画して戦闘員、 非戦闘員混成20人が残り守備

戦闘員20人が背後から回り込み強襲

戦闘員10人が護衛する102人が撤退と言う形になった。

数の優位性よりも素早く後詰の部隊を呼び救援を求める。

また非戦闘員の撤退を優先した形となった。


そして現在、 合図の笛の根を聞こえた事で挟み撃ちの形で一斉に攻撃が始まった。




「ぐぁ!?」

「ぎゃ!?」


まず攻勢をかけていたロマノフ帝国軍は背後からの強襲により

打撃を受けるも反撃に転じる。


「チィ・・・結構鍛えてるな」


北征遠征部隊の戦闘員、 決闘者崩れのブロッコリは

敵を剣で斬った後で吐き捨てた。


「えぇい!! 何をしている!! こっちは槍だぞ!?」


敵の主力武器は槍、 剣道三倍段※2 に基づくのならば槍が勝って当然である。



※2:槍や薙刀に対して剣術で戦う場合、 三倍の技量が必要と言う事。

射程距離(リーチ)の差から起こる優位性はそれ程までに大きい。



ならばブロッコリが強いのか?

否、 彼は決闘者崩れの男、 C級決闘者程度の実力しかない。

だがしかし彼は弱いながらも百戦錬磨。


「ぎゃあ!!」


敵は鍛えているが実践慣れはしていない、 槍を持っていて使えるだけならば

一般人と変わりない。

事実彼等は戦闘経験と言えば獣狩り程度、 人と戦うのはほぼ初体験である。


「ちぃ!!」

「っ!!」


だが鍛えているのも事実、 一撃では倒せない。


「何やってるんだ上の連中は!!」


ブロッコリが叫ぶ、 挟み撃ちの筈なのに上からの攻勢が無い、 一体何故!?

次の瞬間、 轟音が響き天井が崩れた。


「うわああああああああああああああああああああああああああ!!!!?」

「な、 なんだあああああああああああああああああああああああああ!!!?」


天井からは氷の塊が降り注いだ。


「氷!? ゲオルギ―殿下!? 何をして」


叫んでいた兵士の1人が氷に押し潰される。

それからは散り散りに退避した。





「・・・・・・・・・・IQ※3 が20違うと会話が成立しないって言うじゃないか」



※3:数字であらわした知能検査の結果の表示方式のひとつである。

知能が高いほど数字が大きくなり知能が低いほど数字が小さくなる。 



マイケルが呟いた。


「何だIQって」


ゲオルギ―が尋ねる。


「頭の良さだよ、 私は頭は良い方では無いがここまで悪くは無い」

「私の作戦を読み切れなかったんだから悪いんじゃないのか?」

「いや、 お前は物凄い頭が悪いと思うぞ、 こんな事やるとは思わないじゃないか」


マイケルは半分片腕が氷に呑まれてながらも呆れている。


「敵味方関係無しに全力を出すとは予測も出来なかった」


完全に凍り付いた菜花を見て溜息を吐くマイケル。


「想像力の欠如と言った所か?」

「味方を犠牲にするなんて頭が悪いんじゃなくて頭が可笑しいレベルだろう・・・」

「味方じゃない部下だ、 そして私は皇族でこいつ等は平民

幾らでも使い潰しても平気だ」

「皇族?」

「最初にロマノフ帝国第二皇子ゲオルギ―・ロマノフって名乗っただろう」

「聞いてなかったよ、 そして聞いた事も無い国だ」

「永久凍土に閉ざされた世界唯一の国だ

と思ったがまさか我々の他にも人間が居るとは思わなかったぞ」


そう言って非公式(アクネドート)を構えるゲオルギー。


「妹を殺した報いを受けろ」

「妹さんとやらも兄貴がこんなに自軍の兵士を殺す兄を持って恥ずかしいと思うよ」

「皇族は平民を幾らでも使い潰して良いんだよ、 そんなの常識だろ?」

「・・・・・あ、 そう」


心底安心したように笑うマイケル。


「・・・・・おい、 何を笑っている?」

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