ワーキング・プア
再誕歴7702年ジュライ8日。
スターダスト評議国、 首都コア。
御者に飯屋【チープス】に連れられたマクガフィン。
「よぉ新入り!!」
「お疲れ様です、 先輩」
御者は先にご飯を食べていた自分より若い男に頭を下げる。
「そっちは?」
「あぁ、 客ですよ」
「客ぅ? ・・・何だ厄ネタ※1 か?」
※1:厄介な客の事。
迷惑客とは分けて考える。
迷惑な事をする客とは裏腹に迷惑な事はしないが後々面倒になりそうな客である。
マクガフィンが何処かの令嬢で令嬢の脱走を手伝っていると思われたのだ。
「違う違う、 ちゃんと金は貰ってますよ」
「ふぅん、 金が有るのにこんな所で飯か? 物好きだなぁ」
「手早く食べられますし、 所で今日はガラガラですが何か有りました?」
「あぁ、 何か知らないが最近連続無差別テロが立て続けに起こってるんだよ
この間なんかこの国のトップの娘が狙われたとか」
「!!」
マクガフィンは総毛立った。
「・・・・・そりゃあ恐ろしい話だが、 人が居ない事と何の関係が?」
「逃げ出す人が多くてさ、 御者達はてんやわんやだよ
世界の終りとか言い出す奴も出始めて国外に逃げ出すとかヴァカらしい
けど、 稼ぎ時だしな文句言わずに働いているよ」
ガツガツと食事を続ける先輩。
御者とマクガフィンは席に着いた。
「じゃ、 如何する? もつ煮込みとかおススメだけど」
「もつ? って何?」
「内臓だよ、 豚とか牛の」
「内臓食べるの?」
険しい顔になるマクガフィン。
「安いし旨いぜ、 1杯2ユーロ」
「もう少しマシなのは無いの?」
「贅沢だなぁ、 じゃあソヤのスープは如何だ?」
「ソヤって何?」
「大豆をつぶして団子状にして油で揚げた奴、 ボウル1杯で1ユーロ」
「肉のスープは無いの」
「ねぇよ、 贅沢だなぁ」
「いや、 普通ので良いよ、 普通のBLTサンドで良いよ」
「何だいそりゃ」
「ベーコン、 レタス、 トマトのサンドイッチ」
「贅沢だなぁ、 そんなもんねぇよ」
「贅沢って事も無いでしょ」
「贅沢だよ、 先輩!! 先輩の手取りは幾らか教えてやってくださいよ!!」
「んあ? 200ユーロだよ!! こんちくしょう!!」
現実の月収で言うと8万円である。
「そ、 そんなに少ないの?」
「あぁ!! 全く!! 俺達移民は割食ってばっかりだよ!! 全く!!
保険やら移民税やらなにやらで俺達は奪われてばっかりだ!!」
ガツガツと苛立ちながら飯を食う先輩。
喰い終わるとさっさと何処かに行ってしまった。
「・・・・・」
「まぁ、 上流階級だけじゃなくて平民よりも下の暮らしだわな
これが移民のリアルだ」
「・・・・・」
絶句するマクガフィン。
「とりあえず飯食おうか、 何にする?」
「・・・・・任せる」
「ほい!! じゃあもつ煮とソヤスープね!!」
やってきた料理を食べるマクガフィン。
味は思ったよりも悪くは無かった。
しかし気分が最悪である、 移民に対してマクガフィンは良い印象を持ってなかった。
国民から職を奪っているとさえ思っていた。
しかしながらこんなにも貧しい生活を送っているだなんて思いもしなかった。
「食ったし、 さっさと行こうか」
「えぇ・・・そうしましょう」
マクガフィンは誓った、 ジュエルの事だけでは無く移民の事についても
父親とよく話し合おうと。
自分達は色々と可笑しいとマクガフィンは理解した。
「・・・・・じゃあ如何する?」
「如何する・・・って?」
「副幹事長と元執事、 どっちから洗う?」
「そうね・・・じゃあ副幹事長の所に向かってくれるかしら?」
「ほいよ!!」
御者は馬車を走らせた。
周囲にも馬車が目まぐるしく走っていた。
「如何やら逃げ準備が激しくなっているらしいな」
「そうみたい っ!?」
遠くから爆音が響く。
激震も走った。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」
「隕石がまた落ちた!!・・・黙っている事は出来ないわ、 直ぐに皆に真実を伝えないと
急いでアンガスの元に、 っ!! 止めて!!」
制止するマクガフィン。
急ブレーキをかける御者。
「ど、 如何したお嬢」
「アンガスの馬車が走ってた!!」
「えぇ!? ど、 どれ!? 辻馬車しか居なかったぞ!?」
「辻馬車に見せかけた政府公用馬車よ」
「そんなのあんの!? そ、 それでその馬車はどれだ!?」
「車輪が赤い塗装をされた馬車よ!!」
「車輪の塗装・・・確かに見た事ねぇ!! 直ぐに追いかけ・・・
いや、 少し距離を離してからの方が怪しまれねぇか?
尾行ってバレるんじゃあないか?」
「見失わないでよ!!」
「わかってら!!」
御者は馬車を走らせた。
追いかけた先は・・・・・
「何だ・・・ニホン? 風の屋敷?」
「リーパのレストランね・・・・・ここで何をするつもりか知らないけども後を追いましょう」
「分かった・・・でもまずちょっと良いか?」
「何よ」
「ちょっとトイレ・・・」
「・・・・・私も行って来るわ」
そう言って馬車を出た二人だった。




