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アイ・ドント・ブリーブ・ユー

再誕歴7702年ジュライ6日。



サン伯爵令嬢領のサン伯爵令嬢邸はこれまでにない緊張感に包まれた。


「朝早くすまないわね」

「い、 いえいえ!! 寧ろ陛下をお迎えするには粗末な所で申し訳ありません!!」


ベネルクス95世がやって来たのだ。

サンと向い合せに座り、 フェザーを含む従者達は後ろで見守っている。

ベネルクス95世の後ろでは護衛らしき髭を蓄えた男が立っていた。


「そちらの方は?」

「特命省のダッチマン」

「「「「「「!?」」」」」」


王家直属のエージェントで有る特命省が出張って来るとは何事か、 と驚愕する一同。


「実は今日はフェザーに頼みが有って来た」

「頼み・・・ですか?」


フェザーが困惑する。


「それ故に人払いを頼もうかサン伯爵令嬢」

「・・・・・お言葉ですが陛下、 フェザーは私の従者

私の従者に対して何か有るのならば私も話に加わるのは当然では無いでしょうか?」

「政治的に非常にデリケートな話だ、 貴女は聞かない方が良い」

「政治的にデリケートな話題ならば私も聞きましょう

彼にだけ責任を押し付ける訳には行きませんので」

「・・・・・」


表情は変わらないが明らかにイライラし始めているベネルクス95世。


「お言葉ですが宜しいでしょうか?」

「・・・・・何、 フェザー?」


フェザーの言葉に顔を挙げるベネルクス95世。


「サン様が言っている事は至極真っ当な話です

雇用主に対して雇用者に何をさせたいのか

それが分からなければ何とも言えないのではないでしょうか?」

「・・・・・それもそうね、 貴女の意志を尊重していなかったわ

サン伯爵令嬢、 申し訳ないわね」

「いえ、 お気になさらず・・・」

「では単刀直入に言おう、 まず今回の私の頼みは政治的にデリケートな話だが

ハッキリ言って私の私的な、 極めて個人的な物である

それ故に私は省庁を動かす事は出来ない、 強いて出来る事と言えば

君がいない間の護衛をサン伯爵令嬢の元に置く程度だ」

「フェザーが行くのならば私も共に行きたいのですが」

「駄目だ」


サンの言葉を拒絶するベネルクス95世。


「何度も言っていているがデリケートだ

だから貴女は行かないで欲しい、 と言うか行くだけでも危険だ」

「何処にフェザーを送り込むつもりですか?」

「スターダスト評議国」

「スターダスト? 存じ上げませんが・・・その国が何か・・・」

「私は天国に行きたいんだ、 だからこそ黙って見過ごす訳には行かない」

「はい?」


唐突な話題変換に戸惑うサン。


「ヨーロッパ連合加盟国の一つ、 スターダスト評議国

ヨーロッパ連合の中でも急成長を遂げた国、 小さい領土だが発展具合は凄まじい

しかしながらヨーロッパ連合に軍備を全て丸投げしており

連合軍の傘にただ乗りしていると揶揄される

しかも国家が上げた利益は全て投資に回され国家としての格が上がらず

それ故にヨーロッパ連合からの加盟料も微々足る支払い

正直に言うと嫌われている国だ」

「・・・・・合法では有りますよ

但し投資で損をする危険がありますので利益を全部投資にするというのは

正直燃え盛る栗※1 の様に近づきたくない」



※1:日本の故事成語【さるかに合戦】において栗は猿の油断を誘う為に

燃え盛る囲炉裏の中で数日待機し近付いて来た猿に飛び掛かり目玉を抉った。

この事から【燃え盛る炎(あからさまに危険な物)には近づくな】と言う教訓を指して

栗と呼ばれる。


「大体30日でこの国は滅ぶ、 隕石の衝突によって」

「「「「「「!?」」」」」」


驚愕する一同。


「いや、もう6日経っているから24日か」

「ちょ、 ちょっと待って下さい!!」


サンが制する。


「ヨーロッパ連合には災害支援の為の法律が有った筈!!」

「隕石衝突は支援法の適用外、 彼等の国土の半分

いや7割強が破壊され尽くされ生き残った国民は全員死ぬだろう

スターダスト評議国を支配する二大政党の内

政権を牛耳る与党の星派は『隕石衝突はデマ』と国民を騙しながら

逃げ支度を始めている

野党の九頭派は星派は真実を捻じ曲げていると国民に真実を伝えているが

受け入れられていない」

「幾らなんでも隕石を砕くなんて」

「フェザーでも無理だ、 そこまで求めていない

だがしかしヨーロッパ連合の総力を挙げれば10日

いや、 8日有れば全国民を避難誘導する事が可能だ

ヨーロッパ連合は普段の行いからスターダストを見捨てる構えだ

だがしかしその気にさせる事が出来る物がある」

「それは一体?」

「エメラルド・タブレットだ」

「エメラルド・タブレット!?」

「何が記されているかは分からない、 だがこのアイテムは何らかの文書だ

この文書の移譲によってはヨーロッパ連合が動く目も出て来る」

「危険過ぎる・・・でも見殺しにしたら後味が悪過ぎるわ

フェザー、 無茶苦茶な話だけども行って来てくれるかしら?」

「勿論行って来ます!!」

「ちょっと待って下さい」


フェザーの返答を制するサン。


「何か隠していませんか?」

「・・・・・何かとは何かね? サン伯爵令嬢

人を疑うのならば疑う理由は有るのかね?」

「有ります」


ベネルクス95世の言葉に毅然と返すサンであった。

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