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コリジョン・オブ・スターダスト

再誕歴7702年ジュライ1日。


スターダスト評議国、 首都コアのアーツツ総合病院。

この病院はスターダスト評議国議員とコネクションを持っていた

ドイツ医療従事者が開いた病院で

ドイツ帝国最新医療を受けられる事で有名である。

その病院の集中医療室で一人の少女が目を覚ました。


「・・・・・ぁ」


彼女は声を出そうとしたが声が掠れていた。


「患者さんが目を覚ましました!!」


室内で待機していた看護師が叫んだ。

室外から医者が慌てて入って来る。


「マクガフィンさん!! 目が覚めましたか!! ここが何処だか分かりますか!?」

「・・・びょー・・・いん」

「あぁ良かった!! 如何やら無事でしたか!!」


マクガフィンと呼ばれた少女は起き上がろうとする。

彼女はスターダスト評議国の与党、 星派の幹事長ペーパーの娘である。


「あぁ!! まだ起き上がっちゃ駄目ですよ!!」

「・・・?」


マクガフィンは違和感に気が付いた。

左半分の視界が無い、 どうやら包帯で覆っているらしい。


「顔・・・大丈夫なの?」

「・・・・・あ」


医者が目を逸らした。


「こ、 ここで打てる手は尽くしましたが、 その・・・損傷が酷く

で、 でも本場ドイツならば綺麗に成形し直す事が可能です!!」

「・・・・・」


その言葉に不満をあらわにするマクガフィン。

そしてまた違和感を感じた。


「・・・!?」


左腕の肘から先が無くなっている。


「こ、 これは!?」

「こ、 ここで打てる手は尽くしましたが、 その・・・損傷が酷く・・・

切除しなければ命に関わる事態でしたので・・・」

「っ!! 父さん、 いや、 ジュエルを呼んで!!」

「・・・・・」


目を伏せる医者。


「私のお付きの!! ・・・・・」


ジュエルとはマクガフィンのお付きの執事”だった”。

マクガフィンと彼は互いを愛し合っていた、 しかしながら彼女の父は娘と彼が付き合うのは

良くないと考えて娘から別れを切り出させた。

結果として彼は解雇となり・・・


「赤い星?」


ジュエルを首にして赤い星、 そんな訳の分からない記憶と単語がマクガフィンの頭に浮かんだ。


「残念ながらジュエルさんは・・・」


医者は悲痛に言った。


「・・・どういう事?」

「あの事故でジュエルさんは亡くなったのです」

「事故?」

「えぇ、 灯油の輸送馬車が事故を起こして転倒して大爆発・・・」

「・・・・・」


ありえない、 とマクガフィンは感じた。

揮発油※1 なら兎も角灯油が爆発するなんて事はあり得ない。



※1:ガソリンの事。



「と、 兎も角ペーパー氏を呼んできます!!」

「その必要は無い」


外から入って来たのはアンガス、 ペーパーの腹心の部下とも言える代議士である。


「外してくれ」

「は、 はい・・・」


医者は部屋から出て行った。


「マクガフィンさん、 申し訳ありませんが父上は今大変忙しい状況に陥っていますので

暫くお会いする事は出来ません」

「驚くに値しませんよ・・・!!」


マクガフィンはずっとずっと父親の事が嫌いだった。

子供の頃、 寝込んだ時も

母親が大怪我で入院した時も

母親の葬式にもペーパーは忙しいから来なかった。

その上、 彼は予定が空けばこちらと積極的に会おうとするのだ。

此方の予定とは関係無く。


「事故の事は気にしないで静養していてください

その顔はドイツで治すので暫くしたらドイツに転院しなくてはなりませんし」

「事故って可笑しいじゃないですか、 灯油が何で爆発するんですか?」

「そこは警邏にでも調べて貰いましょう、 と言いたい所ですが

貴女は敏い方です、 調べられてしまうでしょうしお教えしましょう」


椅子に座るアンガス。


「スターダスト評議国の天文学者によるとこの国に国家壊滅級の隕石

いや、 隕石群でしょうか、 兎も角それが衝突します」

「なっ・・・暗雲※2 は!?」



※2:暗黒集合体の事、 本来夜空とは掴めない存在なのだが

夜空が”濃い”と物質の特性を持つ、 その"濃い"夜空の部分を暗雲と呼称する。

これによって日頃の隕石衝突の8割以上が

防がれているという研究結果が出ている。



「巨大隕石の衝突ならば暗雲に阻まれて終わるだろうが

隕石群ともなると10%でも通ると厳しい」

「こ、 国民達は!?」

「隕石衝突の話はデマという公式発表をしています」

「え・・・それは如何言う・・・」

「・・・・・」


察するマクガフィン。


「国民を見捨てて自分達だけ逃げるつもり?」

「良い方は悪いですが・・・そうなりますね」

「信じられない・・・国民あっての議員でしょう!?」

「国民を見捨てたのはヨーロッパ連合だ!!

連中が今回の件は連合の支援法の適用外だと言って来て

我々を見殺すつもりだ!!」


顔を覆って項垂れるアンガス。


「いずれにせよ、 貴女の一件は隕石衝突によるものだが

公表出来ないから近辺を走っていた灯油輸送馬車とのアリバイ調整の為に

この様な形となった」

「こんな事が許されると!?」

「決めたのは俺じゃねぇ!! アンタの親父だ!!」


マクガフィンに指差すアンガス。


「俺だってヤダよ!! こんな真似したらまともに生活出来ねぇよ!!

延々と国を見捨てた卑怯者扱いだ!! でも政治屋の俺はボスに逆らえねぇ!!

アンタの親父が居なくなったら生き残りが困るから誰も批判出来ねぇけど

俺は違うんだよ!!」


ボロボロと涙を零すアンガス。


「親父が隠してるお宝があれば連合も説得できるかもしれねぇが・・・

俺には親父の説得は無理だ・・・腹決まってやがる・・・」

「お宝・・・?」

「詳しくは知らねぇけどもそれが有ればヨーロッパ連合でも

イニシアチブが取れるとかって聞いたよ・・・あるかどうかは知らねぇけども・・・

ここで切らねぇって事は重要なブツなんだろうよ・・・」


立ち上がりふらふらと立ち去るアンガス。


「・・・・・」


マクガフィンは俯いた後に目を見開いた。


「ジュエル・・・貴方が何で死んだのか、 はっきりさせるわ!!」


そう言って顔を起こした。

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