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ピッグ・コンヒュージョン

再誕歴7700年ディセンバー8日。


セルデン侯爵領のコロシアムの管理責任者であるデンエンは

自身が経営するコロシアムの責任者室にて

決闘代行業【サホロ・ファイターズ】代表のサホロを待っていた。


「・・・・・」


デンエンは頭を抱えていた。

デンエンは今年のコロシアムのセルデン侯爵に収める税収が

前年よりも落ち込んでいた為、 デンエンの個人資産から前年分の税収になる様に

私財を没収されてしまっていた。

サホロ・ファイターズの決闘者の模擬決闘※1 や

猛獣相手との戦いの見世物をさせていたのだが

イマイチ客足の伸びが悪くなり始めている。

利益を出す為にサホロ・ファイターズのコロシアム使用料※2

を上げているが芳しくない。



※1:仕事が無い代理決闘者達が行う模擬的な決闘。

見世物であるがここで強さを見せる事で仕事に繋がったり

今回の様なコロシアムで行った場合にはコロシアムのチケット売り上げから報酬が貰える。


※2:コロシアムで模擬決闘を行った事による発生するコロシアムの使用料。

チケット売り上げが悪ければ決闘代行業は赤字に成りかねない為

上げ過ぎるのも考え物である。



コロシアム使用料は今でも高いがもっと上げなくてはならない。

サホロにはその事を話さなくては・・・


「どうも」


責任者室にサホロがやって来た。


「早いですね」

「えぇ、 今日はこちらに御話が有ったので」

「話? 一体何でしょうか?」

「実は我が社はこの度、 社名が変わりまして」

「社名が?」


名刺を出すサホロ。

そこには【セルデン・サホロ・ビルダーズ】代表取締役サホロと書かれていた。


「ビルダーズ? ファイターズから?

ちょっと決闘代行業としては変な名前では?」

「土建業に事業内容を変更しようと思いまして」

「ふぁ!?」


驚くデンエン。

鬘がズレ落ちる。


「じょ、 冗談は止して下さい!!

サホロ・ファイターズはこの街でも大手の決闘代行業!!

そんな会社が潰れたら大パニックになりますよ!?」

「いやいや、 決闘代行自体は続けますが今後は民間で細々とやります

コロシアムで大々的な興行を止めるだけで

市民の皆さんの迷惑にはなりませんよ」

「う、 ウチはどうなるんですか!?」

「さぁ、 それは分からないですね」

「貴方方が戦わないとウチも収益が大分落ちます!!」

「それはお気の毒に」

「お気の毒じゃない!!」


机を叩くデンエン。


「今までコロシアムを使わせてやったじゃないか!!」

「こちらも使用料を払いました

最近どんどんコロシアムの使用料が上がっているじゃないですか

此方も利益が出なくて退職する者が多かったんですよ

お互い様です」

「ふざけるな!! マンネリになって来たから猛獣を仕入れて戦わせて

盛り上げて互いに大儲けしたじゃないか!!」

「いいえ、 猛獣と戦って再起不能になった決闘者の治療費を払わなかったお陰で

こちらは大打撃を受けましたよ」

「・・・・・私のバックにはセルデン侯爵家が付いている

あまりふざけた事をしているとどうなるか分かっているのか?」

「名刺見てないんですか?」


ぴらり、 と名刺を再度見せるサホロ。


「セルデン・サホロ・ビルダーズ・・・セルデン!?」

「えぇ、 私達って決闘者ですからあまり学が無いんですよ

そこでセルデン侯爵の御子息のジャン様が優秀なブレインを御紹介して頂いて

安心して働けると言う訳です、 事実既に私達は建築現場を任されています」

「うぐ!!」


完全に積みである。


「じゃ、 じゃあ私は如何すれば良いんだ・・・」

「新しく決闘代行業と契約をすれば良いんじゃないですかね」

「む、 無理だ・・・この街の他の決闘代行業は

コロシアムを借りる金なんて無い・・・」


コンコン、 とノックされる。


「管理人さん、 ジャン様がお見えです」


従業員が伝える、


「な、 す、 直ぐにお通しして」

「もう来てますよ」


ジャンとフランクが現れた。


「あれ? デンエンさん、 髪の毛は?」

「あ」


落ちた鬘を慌てて被るデンエン。


「こ、 これは一体どういう事ですかジャン様!!」


デンエンは激昂する。

サホロ・ファイターズをコロシアムから切り離すのは

セルデン侯爵家の意志か否か、 それを確かめる為に

しかしながらジャンにとってデンエンの将来は

冥王星に住んでいるニートが明日何を食べるかと同じ位如何でも良い事である。


「用件を伝えます、 これから私の部下のフランクが

ベルモンド伯爵令嬢のサンの部下のフェザーと言うS級決闘者と戦います」

「え、 S級決闘者!?」

「侯爵家特権によりコロシアムを使用します※3 ので準備して下さい」



※3:セルデン侯爵領にありセルデン侯爵の庇護下にあるコロシアムなので

セルデン侯爵家及びその関係者は自由且つ無料でコロシアムが使える。



「わ、 分かりました」

「それか観客を入れて下さい、 チケットの売り上げは全部頂きます」

「全部ぅ!? そ、 それは」

「うっせーぞハゲデブ!! 戦うのは俺とフェザー!! お前に一銭も入る訳ねーだろうが!!」


ダン!! と机の上に足を乗せるフランク。


「こらこらフランク、 止めなさい

どうせこちらの言う事には逆らえないんだから

あ、 隣領との決闘に空席が多いと恥なのでサクラ※4

も入れて満員にして下さい」



※4:客の仕込みである。

一説には桜の様にパッとやって来てパッと去る事からそう言われている。



「サクラぁ!? ちょ、 ちょっと待って下さい!! サクラを雇う金は!!」

「そんな物自費で出して下さいよ」

「幾ら何でも無茶苦茶じゃないですか!!」

「いえいえ、 必要最低限ですよ、 父上にも確認しました」

「侯爵自らが!?」


逃げ道は無いと悟る。

チケットの売り上げがゼロ、 しかもサクラを入れる事で

サクラへの支払いとサクラのチケット代も負担しなければならない。


「客引きを頑張るしかない・・・」

「その意気だよ」

「分かりました・・・それで決闘は何時・・・」

「さっきベルモンド伯爵領からフェザー御一行は来たばかり

かなりの長時間の馬車旅だったから今すぐにでも始めたいってさ」

「・・・・・いや、 いやいやいや、 ちょっと待って下さい

今すぐではサクラも何も出来ませんよ」

「じゃあ二時間後に」

「二時間!?」

「はい、 急いでね」

「アわわわわわわわわわ!!! い、 行って来ます!!」


デンエンはダッシュで部屋から出て行った。


「ZAMXaww」

「本当にZAMXawwだよねぇ」


残されたサホロとジャンはくっくと笑っていた。


「あの金の亡者の狼狽えた姿、 見せて差し上げたいですよ」

「もっともっと狼狽えさせるよ」

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