ドッグ・スクリーム
「「・・・・・はぁ?」」
ピラとアリメンタリウスは訳の分からない言葉に二人揃ってすっとぼけた返答をした。
「何を言っているの? どういう事?」
「いや、 だからコーデックスと結婚するのは私で
コーデックスと子供を作るのも私の筈だから子供を返してって言ってるの」
「子供を返しても何も貴女はコーデックスの何? 彼の葬式の時、 見かけなかったけども?」
「すみません、 コーデックスって誰ですか?」
ピラが尋ねる。
「「私の旦那」」
ノスルとアリメンタリウスが二人揃って言う。
「・・・・・私はコーデックスと結婚して、 婚姻届け出して
子供を産んで、 彼の葬式の喪主を務めて、 子供を育てた
それなのに貴女はコーデックスと結婚したと言い張る?」
「違うの、 コーデックスと結婚するのは私の筈なのよ
貴女が横から割り込んで来たのが悪いのよ」
「いやそもそも貴女は一体誰ですか? 貴女なんて知りませんよ?」
「コーデックスから聞いてないの?」
「はい」
「そんな筈はない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ノスルは大声で叫んだ。
「はぁ・・・・・はぁ・・・・・私はコーデックスの妻なのよ」
「・・・・・違いますって、 だから貴女は一体誰なんですか?」
「私はコーデックスと一緒に剣の道を究めようとしていたのよ」
「・・・・・誰の事を言っています?」
アリメンタリウスはさっきまでよりも困惑した。
「私の夫であるコーデックスは武芸者でしたが剣士では有りませんよ
剣も使う多武芸でした、 一つの武器に固執する様な人では無いですよ」
「そんな筈はない!!!!!!!!!!!!!!!!! 彼と私で剣の道を究めようと誓い合った!!!!!!!!!
そんなふざけた男では無い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
彼を侮辱するなああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
絶叫するノスル。
「ふざけているのは貴女では?」
一歩も引かないアリメンタリウス。
「何だと!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?」
「私は貴女の事を何も知らないし会った事も聞いた事も無い
結婚式にも葬式にも貴女は来なかった」
「呼ばないからでしょ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「夫は若い頃に世話になった人たち4、50人は呼んでいましたよ
貴女は夫と結婚をするような仲だったら呼ばれていない方が可笑しいでしょう」
「いや・・・私は剣の道を究める為に旅立つと書置きを残した・・・
だから気遣っていたんだ、 うん・・・」
「呼ばれた人の中には修行中の武芸者も何人か居ましたけど・・・・・
そもそも貴女は誰ですか?」
「私はノスル、 【餓狼剣】最強の剣士」
「【餓狼剣】・・・・・・・・・・」
憎悪を込めた眼でノスルを睨むアリメンタリウス。
「カレーでの戦いの敗戦の原因となってコーデックスを死に追いやった連中ですか」
「え・・・・・」
ノスルは顔面蒼白となった。
「夫だけでは無く子供まで私から奪おうと言うのですか?」
「【餓狼剣】が悪いんじゃない!!!!!!!!!!!!!!
カレーでの戦いは現地に赴いた連中が糞だっただけだ!!!!!!!!!!!!!!!!
我々は悪くない!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
憎悪が消えて心底軽蔑する様に見下すアリメンタリウス。
「・・・・・そもそも貴女洗濯婦の職場に襲撃をかける事の意味を御理解していますか?」
「はぁ!!!!!!!!!!!? 何を言って」
ばっ、 と飛びのくノスル。
「アリメンタリウスさん!! お待たせしました!!」
途中でその場を離れたピラがフェザーとサンが連れて戻って来る。
「貴様が【餓狼剣】から逃げて来たノスルか!!
武術省から武術盗用※1 で既に指名手配されている!! 大人しくお縄に着け!!」
※1:武術省認可の武芸流派に所属していた者が勝手に逃げ出した罪。
手続きを取れば問題無く武術流派からは抜けられるので
その手続きを怠った場合に問われる罪である。
ベネルクス王国の武術流派を他国に流出させない為に制定されて法だが
ヨーロッパ連合成立後は有名無実として適用される事は稀である。
現在、 武芸流派に対して著しい背任等の罪で適用される。
「何だと!!!!!!? 私が何時逃げたというんだ!!!!!!!!!!!」
サンの勧告に絶叫するノスル。
「今現在、 四狼街から逃げただろうが!!」
「コーデックスが勝手に婚姻して勝手に死んだからこうして来たんだろうが!!!!!!!!」
絶叫するノスル。
「そうか、 フェザー、 捕まえろ」
「はい」
会話は無理と判断したサンがフェザーに指示を出す。
フェザーはウィルパワーを使って足を強化し速攻でノスルに近付いた。
「速い、 だがっ!!!!!!!」
ノスルもフェザーに近付く。
【餓狼剣】の基本型の一つ”歯牙の構え”脚の発条を使い
敵に突進し、 相手を切り伏せる。
(速い)
とフェザーが思う前にノスルの剣がフェザーに食い込んだ。




