バーキング・ドッグ
「話は単純です、 ツゴモリさん達が私達から買った土地の使い方に問題が有ると
私達は言いたいのです」
「使い方に問題ねぇ・・・事業計画書に不備でも有ったのか?」
「不備だとこの守銭奴が!!」
セイバーダーの言葉に激昂するノスル。
「連中はここを道にしたいと言っているじゃないか!!」
「道? 中継地と聞いていたが?」
「ノスル、 また適当に話を聞いていたのか?
ここに馬車の停留所やそれに伴う物資保管所、 交易の経由地としての拠点を
ここに作ると言う話じゃないか」
「道と何が違うと言うんだ!!」
ストレイドッグの説明に対して激怒するノスル。
「ここを通過するという点に関しては道と変わりないじゃないか!!」
「いや、 自分の土地を如何使おうと勝手だろ、 何言ってんだお前」
チーズが心底不思議そうに尋ねた。
「ノスルさんの考え方は置いておいて下さい
ちゃんとした問題は有ります」
トレッファーが説明する。
「我々が懸念しているのは4つ、 名誉と安全です」
「2つじゃねぇか」
「安全に関しての懸念が3つあります」
「3つか、 じゃあ書面にして私に出せよ
不法占拠をして【餓狼剣】を貶めるな」
「この犬が!! 権力に媚びやがって!!」
ストレイドッグの言葉に飛び掛かりそうになるノスルを抑えるトレッファー。
「私達でも分かる懸念を貴方が気が付かない筈が無い
そうでしょうストレイドッグさん」
「ちょっと待て、 理由すら考えていないのか?」
「いや、 そうじゃなくて、 貴方は抗議しないのですかって話です」
「ふん、 パッと思いつく理由ならば抗議の必要性を感じなかったから黙っていた」
「それは少し不義理では?」
「じゃあ懸念を言え、 論破してやる」
トレッファーを見据えるストレイドッグ。
「・・・懸念の第一は名誉ですね
この街が単なる中継地点と化し、 【餓狼剣】の街と言う誇りが無くなってしまう
凄まじい問題点が有ります」
「中継地点の何が不名誉だか私には分からない
馬車の停留所やそれに伴う物資保管所、 交易の経由地としての拠点を作る
と言う事はそれを維持する雇用が生まれ、 その雇用を求めて人が集まり
更にその人々の為のサービス提供の雇用が生まれると言う事だ
人が居なくなって来ている四狼街としては良い話だと思う」
「金の亡者になれと!?」
「金が最優先では無いが金が無ければ生きていけない位の
道理位は弁えていると思ったがそこまでヴァカになったのかノスル」
「何だと!?」
ノスルを抑えるトレッファー。
「まぁ貴方ならばそういう答えを返すだろうなとは思っていましたよ
安全に対する3つの懸念が有ります
一つは騒音、 一つは外患、 一つは病
先程、 貴方が言った通りになれば人が集まります
人が生きていれば音を発し、 大勢集まれば騒音になります
更に集まった人間の中には悪人も混ざっているでしょう
今までだって国外の人間が悪事を働く為にこの街に潜り込んでいた
それと同じ理屈で病人も来るでしょう」
「防疫か・・・」
「ヴァカらし」
呆れるチーズ。
「・・・・・何か可笑しい事を言っていますかね?」
「『五月蠅いから』『悪人が病人が混ざるかもしれないから』『人を増やすな』?
ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアカじゃねぇの?
街に住んでおいて他の人間が住むのは嫌、 それは通らないだろう
そもそもお前等の街じゃなくて国が所有する街なんだから
お前等の意見を尊重しなくてはいけない理由って何?」
「貴様ッ!!」
ノスルを抑えるトレッファー。
「他所者の貴方には分からないでしょうが私達は昔からこの街を守って来たんです
この街と【餓狼剣】には絆が有るんです」
「・・・・・この街って生き物なのか?」
「「「「は?」」」」
チーズの言葉に唖然とする一同。
「絆と言うとこの街は生きていて、 対話をして絆を育んだ
と言う事になるだろう? しかしながら俺様の見立てでは無生物にしか見えないのだが・・・」
「・・・・・いや、 そういう訳では無いが絆が有ります」
「じゃあ証拠は? 何かしらそう言う根拠が有るのだろう?」
「・・・・・ずっとこの街を私達は守って来ました」
「だから?」
「・・・・・だから絆が有ります」
「守ると絆が生まれるのか? 如何言う理屈で? 無生物の街と?
街に自我が生まれるとでも言いたいのか?
あ、 いや、 待て、 違う
国が所有する街なんだから街に自我が有ろうがなかろうが関係無い
街には人権は一切無いからな街が嫌がっても如何でも良いだろうさ」
「貴様ァ!! さっきから!!」
ノスルを抑えるトレッファー、 を蹴とばすチーズ。
「トレッファー!? お前!!」
「・・・・・」
ノスルをこの上なく軽蔑した目線で見下すチーズ。
「俺様にとってはどっちも雑魚だが、 アイツよりもお前は強い
にも拘わらずお前は抑えられる事に抵抗を大してしなかった
要するに、 お前は戦うつもりが無いんだろ?」
「・・・っ違う!!」
「お前、 剣を持つ事すらしてねぇだろうが
そうやって虚勢張るなよ、 鬱陶しい
お前等のプライド守るごっこに付き合っている程、 暇じゃねぇんだ
さっさと失せろ」
「私は彼が来るまでこの街を守らなければならない!!」
「知るかよ、 誰だよ、 彼って」
「コーデックスだ!!」




