ウルフ・テイル⑤
ギルデロイは古株だが【四狼】になれる実力は普通ならなかった。
ストレイドッグの師匠だが既に実力は追い抜かれており
更にストレイドッグは【四狼街】の代官にまでなった事により
自分を追い抜かれた事に対して嫉妬して、 義務教育を無視した剣の指導
更に出生届を含めた書類改竄も行った。
セイバーダーにバレた事により厳重注意が為された。
この事に対してノスルは納得しておらずストレイドッグに抗議するように求めたが
『法令順守』とストレイドッグは抗議を拒否した。
セイバーダーが改竄された書類と実態を調べていると
子供達の数は本来もっと多い筈なのに数が合わない。
セイバーダーは即座に【四狼街】を封鎖、 ヒューガルデン伯爵に相談して
即座に【四狼街】を徹底調査、 結果として数が合わない子供たちの内
【餓狼剣】の教育を行うと言って連れ去り人身売買を行っていた事が発覚。
当然ながら奴隷禁止三原則に抵触し、 関係者を全員を捕縛、 後に処刑。
関係者の中には【餓狼剣】のギルデロイの腹心だった者も含まれていた事により
事態は尋常じゃなく悪くなった。
この事実は【餓狼剣】全体のイメージ悪化、 最悪解散命令が出される。
【四狼商業ギルド】の経営悪化、 収入減少、 【四狼街】も財政破綻するのは目に見えている。
今回の一件に対して【餓狼剣】を守るために責任を取って
書類改竄を指導していたギルデロイを処刑し、 セイバーダー男爵の監視の為に
四狼と街政にセイバーダー男爵の部下を入れる事を決定した。
確かに書類改竄をしていたがギルデロイは奴隷の売買をしたい訳ではなかった。
当然ながらギルデロイは抗議し、 ノスルも同調した。
が、 武術省の粛清班※1 が動き出した事により事態は
【餓狼剣】かギルデロイかの二者択一の状況に陥ってしまった。
※1:武術省の許可無く武術流派を開く
また著しい問題行動を起こした武術流派に対して粛清を行う部署。
ベネルクス最強流派も粛清班に滅ぼされた。
ギルデロイに対してセイバーダーは『死後の名誉を保つ様にすると保証』し
ストレイドッグは自らの師匠に対して『街と共に死ぬか、 街を守って死ぬか』の二択を提示する。
ギルデロイは自らの処刑を了承し、 捕縛され処刑される。
彼の死後、 セイバーダーは約束通り『死後の名誉を保つ為』に四狼街にギルデロイの銅像を建立した。
この事に対して激怒したのがノスルであった。
彼女はストレイドッグを『権力に迎合し剣士の誇りを捨てて師匠を殺した飼い犬』と非難したが
ストレイドッグは彼女を非難したA4サイズ※2 27枚の文書を送りつけた。
内容は今回の事件に対して自分の所感と確実に失敗するであろうギルデロイの計画に対して
一切止めなかったノスルの責任を論う物であった。
※2:210mm×297mmの紙。
文字が読めないノスルは代弁してもらい、 内容を把握し激怒。
だが一応の理は通り、 ストレイドッグも自身に対して
『殺したいほど憎んでいるが殺すと【餓狼剣】の損失であるから殺さない』と思っている事を知り
自制する。
その後、 ストレイドッグとノスルは冷戦状態に陥りながらも
【四狼街】の運営を続けていた。
そして時は流れ再誕歴7698年。
【四狼商業ギルド】が【ジュウサンヤ・ブラックスミス・ギルド】と連携し
KATANA工場を建てる事が決定した。
7571年の半島戦争、 復興の際に商人に対して疑惑の目を持つという問題も解決したと言える。
KATANAは【餓狼剣】も多用する為、 かなりのメリットになるだろう。
しかしここで問題が発生した。
【ジュウサンヤ・ブラックスミス・ギルド】のKATANA工場を建てる予定の場所が
ビッグジョイが売買した土地でありその土地の所有権を持っているという男が現れ
土地を10万ユーロで買い取る様に要求。
ストレイドッグは裁判で争いたかったが、 時間がかかり
時間がかかれば【ジュウサンヤ・ブラックスミス・ギルド】は撤退する。
ならば買い取れば良い筈だが10万ユーロなんて大金は無い。
途方に暮れるストレイドッグを後目にノスルが10万ユーロで土地を買い取った。
難を逃れたが唐突に現れた10万ユーロに対して困惑するストレイドッグ。
出所を聞いても『借金をした』と主張するノスル。
10万ユーロも借金出来る所が有る訳が無いと思ったストレイドッグだったが
借用書はツゴモリ・コングロマリット傘下の金融、 ツゴモリ・バンクだった。
文字が読めないのに契約するとはと思ったストレイドッグだったが
『担当者は気分が良い女性で長い付き合いの友人である
金利とか色々有るが形式的な物で実際の金利は0』と主張するノスル。
そんな虫のいい話を信じていないストレイドッグは即座にツゴモリ・バンクに問い合わせる。
その結果、 月ごとの金利、 遅延損害金20%、 と言う高額の金利である。
『そんな高額の金利は支払えない、 金利が膨らむ前に如何にかしなければ』
と金策に励むストレイドッグだったが結果として金利の支払日になってしまった。
金利の支払い免除と引き換えに四狼街の土地の20%弱を譲渡し負債を解消する事で合意した。
勝手な事しているとノスルは激怒したが
元々は勝手に金を借りたノスルが悪いとストレイドッグは主張。
長きにわたる冷戦状態に辟易していたノスルが遂に爆発。
自身に従う【餓狼剣】の剣士達と受け渡し予定の土地に立て籠る。
そもそもが『約束とは違う』『私はそんな話聞いていない』と主張し徹底抗戦の構えを見せる。
立て籠り始めて50日目、 ツゴモリ・コングロマリットに恩を売りたい
【ジュウサンヤ・ブラックスミス・ギルド】が間に入り交渉。
武具の割引を引き換えに立て籠りが終了したのだった。




