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バッド・サーヴァント・アンド・グッド・マスター

ジャンとフランクはベルモンド伯爵領の街の借馬車屋※1 に向かった。



※1:街の外には強風が吹き荒れているので

出る為には特別な訓練を積むか暴風対策をした馬車に乗らなければならない。

しかしながら庶民が馬車を維持するのはコストがかかり過ぎる為

こうして借馬車屋が馬車を貸し出している。

馬車のみならず御者も付いて来る。



「いらっしゃいま、 うえぇ!?」


従業員が驚く。


「済まない、 マネージャーを呼んで貰えるかな?」

「は、 はい!! しょ、 少々お待ち下さい!!」


少し待つと身形の良いマネージャーがやって来た。


「大変長らくお待たせしました、 私、 当店のマネージャーです」

「セルデン侯爵の息子のジャンです

早速ですが重キャリッジ※2 でセルデン領まで往復をお願いします」



※2:キャリッジとは高級な馬車で有り

重キャリッジは高級かつ重装甲の馬車である。

貴族の乗る馬車としては申し分ない。



「セルデン侯爵領までですか・・・馬は何頭にします?」

「何頭まで出来ます?」

「16頭ですが8頭居ればセルデン侯爵領には一日で着きます」

「じゃあ縁起を担いで9頭※3 で、 御者は優秀な者をお願いします

それから犬※4 も」



※3:馬九行く(うまくいく)の語呂合わせ


※4:キャリッジドッグと呼ばれる馬車の護衛として並走する犬。

馬よりも二回り小さいが勇猛な犬種である。



「分かりました、 では先にお会計の方を宜しいでしょうか」

「いや、 先に実物を見せて下さい」

「分かりましたー、 ではこちらにどうぞー」


馬車を置いてある車庫に案内されるジャンとフランク。


「重キャリッジは当店にはこの1台だけですが自信を持ってお勧めできます」


金の装飾が施された豪華且つ装甲が厚い馬車を見るジャンとフランク。


「これか・・・中を見ても?」

「どうぞ」


馬車の中を見るジャンとフランク。


「座り心地は良いですね」

「乗り心地も最高ですよ、 サスペンション※5 も付いていますから

振動とかは感じません」



※5:乗り心地や操縦安定性等を向上させる機構。



「ふーむ、 これで幾ら?」

「ここからセルデン侯爵領ですと片道1万ユーロ

往復ですと2万ユーロですね、 更に保障費として1万ユーロを頂きます」

「・・・・・」


馬車の中を指で触るジャン。


「埃が付いてるね」

「いっ!? な、 す、 直ぐに清掃を」

「どういう事だっ!! 碌に掃除もしていない馬車を使わせようとしたのか!?」


フランクが詰め寄る。


「た、 大変申し訳ありません!!」

「申し訳ありませんだと!? 申し訳無いですむか!!」


マネージャーの襟首を掴むフランク。


「ひいいいいいい!!」

「まぁまぁ落ち着きなさいフランク」

「ジャン様が言うのなら・・・」


襟首を放すフランク。


「しかしながら備品をきちんと綺麗にしていなのに保障費を求めるのは

聊か都合が良過ぎないですか?」

「げほ・・・な、 何分滅多に使わないものでして・・・

わ、 分かりました、 補償費はこちらで負担しておきます」

「金で解決するつもりか!?」

「いやいや、 フランク、 別にそんなに怒っていないから

目くじらを立てないでよろしい、 次は馬ですね」

「は、 はい、 馬は此方に・・・」


厩舎に向かうジャンとフランク。


「馬は力強く賢い者を九頭立てにします」

「・・・・・」


ジャンが馬の足を見る。


「一頭に付き1000ユーロ、 合計で9000ユーロになります」

「蹄鉄※6 が古くなっていますね」



※6:馬が蹄に付ける防具。

装備した馬のDFEとSPDが上がる。



「いえ、 まだまだ使え」

「てめぇ!! ジャン様の意見にケチをつけるって言うのか!?」


フランクが詰め寄る。


「た、 大変申し訳ありません!!」

「申し訳ありませんだと!? 申し訳無いですむか!!」


マネージャーの襟首を掴むフランク。


「ひいいいいいい!!」

「まぁまぁ落ち着きなさいフランク」

「ジャン様が言うのなら・・・」


襟首を放すフランク。


「しかしながら私も武家の家柄

馬には一家言あります、 少々不安が拭えませんね」

「げほ・・・わ、 分かりました

一頭700ユーロで5600ユーロで如何ですか!?」

「金で解決するつもりか!?」

「いやいや、 フランク、 別にそんなに怒っていないから

目くじらを立てないでよろしい、 次は犬ですね」

「は、 はい、 犬は此方に・・・」


勘のいい読者の方々は既に気が付いているんだろう!!

ゆすり※7 である!!



※7:相手の弱み等につけこんで、 おどしつけること。



ジャンが適当に文句をつけて、 その文句に呼応してフランクが動き

ジャンが諫め馬車代を抑えようと言う手法である!!

なんたる姑息か!!

この調子で犬も安く済ませたジャンとフランク。


「で、 では御者を紹介します、 当店でも特に優秀な」

「「あ、 ケレル」」

「じゃ、 じゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃ、 ジャン!! 様!!」


マネージャーが紹介した御者は明らかに混乱していた。


「お前・・・行方不明になっていたと思っていたらベルモンド伯爵領に来ていたとは・・・」

「え、 あ、 じ、 実は母親がこちらの生まれで介護をしていまして・・・」


嘘である、 生まれも育ちもセルデン侯爵領。

勿論両親もセルデン侯爵領在住である。


「そうか、 知らなかった」


嘘である、 本当は既に両親が何処に居るのかを知っている。


「お知り合いですか?」

「え、 えぇ・・・すみません、 少し個人的に御話を良いですか」

「私は構いませんよ」


ジャンと共に引っ込むケレル。


「本当にすみません」

「すみませんじゃすまないよ、 君に貸した3万ユーロ、 返して貰うよ」


ケレルはジャンに借金をしており、 返せなくなってベルモンド伯爵領まで逃げて来たのだ。


「さ、 三万!? お、 俺が借りたのは二万ユーロの筈・・・」

「利子が転がりに転がって膨れ上がっているんだよ」

「そんな・・・は、 払えません・・・」

「じゃあ君の実家に行って返して貰おうか

全く子供の不手際を親に伝える私の身にもなって見ろよ

とても辛いんだよ」


嘘である、 本当は何も思っていない。

ついでに言うと、 既に両親を探し出して立て替えて貰い

足りない分は両親を鉱山に売り払い働いて返して貰っているので

実際にはもうケレルには借金は無い。


「お願いします!!

漸く就職出来て生活できるようになったんです!!

何卒ご容赦ください!!」

「・・・今回、 君が働くと幾らもらえる?」

「え、 えっと・・・1万ユーロを支払って貰い

その中で俺は1000を貰えるんです」

「凄いピンハネされているな、 まぁ良い

じゃあその1000をとりあえず貰おう」

「そんな、 今回はセルデン侯爵領まで行くんですから滞在費とか・・・」

「じゃあ今すぐ3万返せ」

「うぅ・・・」


項垂れるケレンであった。


画して値切りに値切った結果


馬車のレンタルが往復で2万ユーロ。

馬のレンタルが5600ユーロ。

犬のレンタルが3000ユーロ・

御者のレンタルが差し引き9000ユーロ。

合わせて37600ユーロの会計になったのだった。


「あ、 領収書下さい、 宛名はセルデン侯爵家で※8」



※8:経費で落とすつもりである。

ケレルから1000ユーロキャッシュバックされるので

支払金額は38600ユーロ、 つまり1000ユーロを懐に入れるつもりである。

なんたる外道か!!

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