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カムバック・ジョン

再誕歴7701年ディセンバー31日。


セルデン侯爵領の侯爵直轄の街にあるミルクホール。


その席の一つにてジョンはぼーっとしていた。

過日の決闘から、 何も気が入らなくなってしまった。

相方だったラダー・エクスプレメントは未だにまともに話が出来ないらしい。

一体何が起こったのかジョンは知らない、 正確には覚えていない。


「はぁ・・・」


ジョンは自分が腑抜けになってしまったのだと実感した。

文字通り臓腑が全て抜け落ちてしまったかの様な感覚になった。

ジャンはジャンで色々進めているらしく跡継ぎが代るかもしれないとさえ

囁かれている、 普段の彼ならば激昂するが怒る気にもならない。

本当にやる気が起きない、 全くやる気が起きない。

自分がここまで意味分からん状態になるとはまるで想像が付かなかった。


「・・・・・」


目の前のミルクティーを前に早二時間、 最近はずっとこうしている。

幼馴染のアンポールが死んだ。

と言うのにまだ心が動かない、 自分の心は死んでいるのだろうか?

心の琴線に触れていないのか? 友が死んだのに?

殺し合い一歩手前まで行った相手が死んだのに?

自分の心が一切揺れ動いていないのがジョンには信じられなかった。


「ジョンサマ」

「・・・如何したグレゴリー・・・」


グレゴリオから声をかけられる。


「ミセの人とオノボリ※1 が揉め事みたいデスよ」



※1: 田舎から見物などのため都会に出てきた者に対する蔑称。



「そうか・・・」

「・・・止めないんデスか?」

「・・・・・止めるか」


よいしょと椅子から立ち上がりのそのそと歩き出す。


「あ、 剣・・・」

「あぁ・・・」


席に置いておいた剣をグレゴリオから受け取る。


「・・・・・」


グレゴリオは長年ジョンと共に居るがこんな状態のジョンを見るのは初めてである。

とは言え仕事は楽になったので良いと言えば良いが

それでも何だかなぁ、 とは思う。


「だから!! 自分の絞ったミルクを客に出すのは性的搾取です!!」

「だーかーら!! 意味が分からない事を言わないでっていってるでしょ!!」


店主のエトワールが見知らぬ者達に詰め寄られている。

ジョンは知らない事だか彼等は活動家の一味である。


「何で分からないの!? 貴方は男に搾取されているのよ!?」

「はぁ!? ちゃんと金を貰って商売をしているのに何を言っているの!?」

「そういう性風俗を行うのは良くないって言っているでしょ!?

獣人として恥ずかしくないの!?」


ジョンは自分の魂に土足で入られたとその時感じた。


「おい」

「何よ!!」

「あ、 ジョン!! じゃなかった若!!

この人達訳の分からない事を言って邪魔してくるの!!

如何にかして!!」

「こんな時間からこんないかがわしい店に来て

貴方、 若いのに恥ずかしくないの!?」


ジョンに指を指す活動家。

その指毎、 腕を叩っ斬るジョン。


「・・・・・は?」


ぶしゃあ、 と腕から血が流れる。


「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!?」

「腕!! 腕が!?」

「何をしているの!? 誰か警邏を!!」


ジョンはそのまま唐竹割で一人を真っ二つにしたのだった。


「一旦黙れ、 お前達」


ジョンは青筋を立てて怒っていた。

活動家達は黙った。


「お前等さ、 ここを娼館だと勘違いしているのか?」

「え?」

「ここを娼館だと勘違いしているのか?」

「え?」

「次『え』って言ったら足ぶった切るぞ」

「いえ!! 思っていません!! ですがいかがわしい店です!!」

「・・・・・つまりアレだ

お前達は私が動物性愛者(ズーフィリア)だって言いたい訳だ?」

「はっ? え?」

「ここまでの侮辱を受けたのは初めてだ

何だか最近無気力だったが火を付けられた気分だよ」

「ちょ、 ちょっと待って下さい!!

あの獣人の女性の母乳でしょ!?」

「お前さぁ!! 獣人は獣だろうが!! 『獣』人だろうが!!」

「そんなの差別じゃないですか!!」

「ヴァカかお前は!! 獣人は獣人だろうが!! 人間じゃねぇ!!

それの何処に間違いがあるってんだ!!」

「彼等にだって心は有りますよ!!」

「獣にだって心は有るだろうが!! あぁ、 なるほどね

お前達、 アレだろ、 何か獣とか動物や自然を守って偉いでしょー

とかやりたがる奴だろ、 だから獣と人が同じとか訳分からん事言うんだろ?」

「確かにそれもあるが女性の性的搾取を」

「だから獣人だろうが!! 動物だろうが!! 動物に欲情する等悍まし過ぎるわ!!

とりあえずこれからお前達の首を刎ねる!!

こうまで侮辱をされた以上、 生かして帰せん!!」

「待て待て待て!! 私達のバックにはドイツの公爵様が付いている!!

殺したらタダでは済まないぞ!!」

「・・・・・」


ジョンはきょとんとした顔で続けて行った。


「で?」

「で? って・・・公爵だぞ公爵!! アンタなんて」

「そうじゃなくて『殺したら』だろ? じゃあ殺す事は可能なんじゃないか」

「・・・・・は?」

「だから『殺したら』『タダじゃすまない』のであって

殺す事自体は問題無く殺せる訳だろ?」

「政治的にも問題が出る・・・出るじゃないか!!」


活動家の一人が失禁しながら叫ぶ。


「問題が起きてしまったのならば大人しく裁判にでも出るよ

だからお前はお前の殺人事件の犯人である私の裁判をあの世から見守ってくれ」

「ひ、 ひいいいいいいいいいいいいいいい!!」

「ちょっと待ってジョン!!」


エトワールが叫ぶ。


「店が汚れるから外でやって!!」

「正論だなぁ」

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