アイ・テイク・フル・レスポンシビリティー
「おはよう諸君、 着席しなさい」
ベネルクス95世の号令で座る大臣達。
「さて、 今日の議題は何だ?」
「私から議題があります殿下、 じゃなかった陛下」
サイプレスが挙手する。
「また予算を寄越せと言う事かサイプレス卿
貴女は度々足りない足りないと喚いているがはっきり言って運営に疑問がある
最早民間に任せず我々がやった方が速いのではないのか?」
「エンペスキーさん、 貴方には人の心は無いのですか?
差別や貧困に苦しんでいる人は大勢居るんですよ?」
「一向に苦しんでいる人の数が減らないのは可笑しいだろう
民部大臣殿は新しい省庁を追加してどんどん予算を圧迫している
非常に迷惑だ、 これ以上予算を圧迫しないで欲しい
財源も無いんだし」
「財源は有ります」
「有る? 何処にあるのだ?」
ドグラマグラが尋ねる。
「国境省の予算を減らしましょう」
「は? 貴様何を言っている?」
不機嫌そうに言うワームウッド。
「ちゃんと理由は有ります、 まずドラゴヴァニアが滅んだじゃないですか
だったらドラゴヴァニアとの国境警備は要らないですよね?」
「居るだろ、 ドラゴヴァニアが滅んだのならばドラゴニュートが逃げてくるかもしれんだろう
実際問題二匹密入国しようとした」
「信じられませんね、 ヨーロッパ連合軍は生き残りのドラゴニュートの殲滅を発表しました
殲滅です、 皆殺しです、 ならばもう生き残りはゼロでしょう」
「ドラゴヴァニアには戸籍制度は無いから生き残りの数は分からんぞ?
それにドラゴヴァニア経由で侵入してきたらどうするんだ?」
「そもそもの話、 ヨーロッパ連合で互いに同盟国ですし侵略の危険性は無いでしょう?」
「犯罪者が来るかもしれんだろうが」
「ですが、 それでもドラゴヴァニアと言う脅威自体が減ったのだから
予算を減らすのは構わないかと思いますが、 陛下、 如何思います?」
「減らすのは構わないと思うが」
「陛下!!」
ワームウッドが机を叩き立ち上がる。
「落ち着け軍務大臣、 予算を減らすのは構わない
しかしながら君の所に予算は渡そうとは思えないなサイプレス」
「え?」
困惑するサイプレス。
「内務大臣殿」
「は、 国土省からの通達によりハウバリン公爵領へ大勢の人々の移動を確認しました
人権保護団体【Noreturn Yesterday】、 共和平等団体【I,m Intelligence】
女性権利団体【CurePretty】、 亜人権利団体【AtoZ】」
「そいつ等は確か民部大臣の省庁が金を恵んでいる連中!! どういう事だ!!」
怒鳴るワームウッド。
「こんなに大勢が移動出来るだけの金が有るのに
予算が無いと言うのは少々納得がいかない」
「いや!! 陛下!! お待ち下さい!! この4団体が一ヶ所に集まると言う事は
もしや反乱を企てているのでは無いでしょうか!?」
ベネルクス95世の言葉に対しワームウッドが吠える。
「言いがかりです!! 彼等は人々の為に戦う団体です!!
決して反乱などそんな大それたことは致しません!!」
ワームウッドの言葉に対してサイプレスも吠える。
「内務大臣殿、 その4団体の人々は大体どれ位の人数ですか?」
「2000人ほどになります」
「なっ・・・それ程の人数の移動を見過ごす訳に行きません!!
陛下!! 私は民部大臣の緊急逮捕を要求します!!」
「何を言っているのですか!! 彼等は先も言いましたが反乱なんか致しません!!」
「・・・・・軍務大臣、 貴方は少々勘違いをしている様だ」
「何ですと!?」
溜息を吐くベネルクス95世。
「まず初めにサイプレスが支援した団体がハウバリン公爵領に向かっている
サイプレスの部下なら兎も角サイプレスが統括する省庁が支援した組織です
サイプレスと関係が有りますか?」
「金を払っているのだから便宜は図れると思います」
「ふむ、 では仮に便宜を図っていて団体がサイプレスの部下でも
ハートレス判例※1 でサイプレスには法的責任を問えないと判断する」
※1:チャプター4のクイーンズ・ウィッシュ参照
「しかし2000人ですよ!? 門閥貴族の騎士団でも2~300人程度!!
その気になれば一つの貴族領を落とす事は充分に可能です!!」
「怪しいと思うならば調べるなりなんなりして反乱なり不正なりの調査をすれば良い
それでもしも証拠が出たのならば捕らえれば良い」
「陛下、 陛下は彼等を、 いえ彼等を信じた信用していないのですか?」
サイプレスが情に訴える。
「サイプレス」
「はい」
「弁えろ」
「・・・はい?」
困惑するサイプレス。
「弁えろと言った」
「え、 いや、 ちょっと?」
「三度も言わせるな」
「・・・・・」
サイプレスは黙った。
「陛下、 捕えれば良いと仰いますが2000人を捕まえるのは」
「何を言っている、 サイプレスを捕まえれば良い」
「えっ!?」
「信用しているのだろう? ならば問題は起きない
それならば問題が起こったらお前が逮捕される、 いや処刑されるでも良い
なんにせよ問題が起こったらペナルティ発生は何の意味も持たないだろう」
「し、 しかし」
「うん? 信用しているのではないのか?」
「・・・・・」
サイプレスは黙った。
「さてと、 他に何か議題は有るか?」
「では陛下、 開墾省からの報告でチーズが統治する土地の開墾が終了したそうです」
「そうか、 ならば――――――――」
会議はその後も続いたのだった。




