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フェザー・テイル・3

サンが書いた自らの半生を記した書物『フェザーテイル』は歴史上重要な位置を占める。

何故なら再誕歴末期における【月光戦争】新暦黎明期の【編集合戦】両方の渦中にいた

サンは再誕歴と新暦を跨ぎ世界の移り変わりを見て更に書物に残した唯一の人物である。

歴史上極めて重要な人物であるが文才は残念ながら無い。


公式発表は殆ど役に立たない状況で

『フェザーテイル』は各地の伝承(サーガ)とも整合性が取れており事実と見るのが一般的である。


しかしながらサンは中世時代の貴族である。

それ故に我々現代を生きる人間との考え方の差異は乖離していると言わざるを得ない。

サンの政治論の一部を抜粋すると



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


アメリカでは議会制民主主義なんて民衆から王を選出すると言う

王政をややこしくしたシステムが幅を利かせているらしい

最終的に王が生まれるのならば王政と変わらないと思うし

民主主義と言う名前も共和主義を言い換えただけでは無いか?

違いが良く分からないので共和主義者と呼ぶ事にしよう。


話を戻すと共和主義者共と話していると彼等は気が触れているとしか思えないので

彼等なりの狂った理屈が有るのだろう。

共和主義なんて物は現体制の王を始末して新しい王を決めるだけの方便ではないか

事実としてフランス革命では王家が配されて新しく皇帝が選出される結果になった。


既に過去の実績としてフランス皇帝ナポレオンと言う過去の実例がある。

革命を果たしたフランス国民が革命の後に手に入れたのは

ナポレオンと言う新しい王だ、 フランスの民を思うと胸が痛くなる。


だがしかしフランスで王政復古※1 が実現した。

正しい国政が戻るのか? と思ったが

またしても共和制が敷かれるかもしれないと言う動きが出始めて来る。

『第二共和政か?』新聞で見出しが出たが

何故歴史から学ぼうとしないのか甚だ疑問である。

第二共和政の後には第二帝政が始まるのだろうか? 共和主義者は現実を見ていない。

共和主義に被れた友人と話をしていても同じ人間と話している気がしない。

別に私とて家格が絶対とは考えないが君主や貴族を廃止して国が成り立つのだろうか?

アメリカは今の所、 上手くやっているらしいが将来的に人間が増えて来たら

確実に国は別れ第二のヨーロッパが出来るだろう。


そもそもの話、 国民に国政を考える力は有るのだろうか?

考えている暇があるのならば働いて貰わないと国が成り立たないのだから

ちゃんとして仕事をして欲しい。

国政が変わったから直ぐに生活が良くなる物では無いのだ

革命を起こしてしまえば生活の立て直しで余計に生活が苦しくなるだろう。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


※1:フランス革命で国王が処刑された後

第一共和政、 第一帝政が続いたが皇帝の死により新たに王が実権を握った。




この様に平民は政治に関わるべきでは無いと言う論説を展開している。

ベネルクス王国貴族ならば一般的な考えである。


例えるならば化石燃料は産業革命以前にはまるで注目されていなかったし

仮想通貨も最初期は価値が低かった。

大学生も自分達の大切な学生生活を無為に過ごしてしまう事が有りがちである。

私達現代人も将来的に何が価値を持つか

若しくは潜在的に価値を秘めているのに気が付かないと言う事が多々在る事だろう。


そもそも現状が恐ろしく絶望的な状態なのだ。

作中では平穏に過ごしている登場人物達だが地球の自転が4倍になり

常に暴風が吹き荒れている中で暴風を防ぐ為の施設が整えられている場所での

描写が殆どであり、 暴風防止の為に必死になる必要がある。

その為、 改革をする暇も無いと言う有様である。


中世の貴族に今の様な人権を求めるのは酷である。

しかしながらフランス革命後、 貴族にも平民に優しくしようと言う文化も芽生え

極端な搾取は無くなり無礼打ちはほぼ無くなった。

有能な人材は平民でも登用若しくは貴族に引き上げる

と言う法式を取っている貴族もおり、 奴隷制は禁止された。

義務教育も制定され始め識字率も大幅に向上した。


このまま徐々に平民達の権利拡充に努めるべきだった。

しかしながら、 この権利拡充に待ったをかける2つの事件が起きたのだった。



一つは【ハウバリン公爵門閥内同時多発的抗議活動】。

ハウバリン公爵門閥内の各領で行われた様々な主張を持つ活動団体による抗議活動である。

抗議活動と言えば聞こえは良いが中にはテロリストすら混じっており

活動団体全てが白眼視※2 される事になった。



※2:冷淡し軽蔑する事。

晋の国の阮籍が気に入らない人を見る時は上目づかいをして白目を見せたことに由来する。



もう一つは【ベネルクス95世暗殺未遂】である。


この二つの事件によりベネルクス王国では民間の活動団体が厳しくチェックされ

平民達の権利拡充も著しい阻害を受ける事になったのだった。


反面、 民間活動団体へのベネルクス政府から出る支援金の大幅減額のお陰で国庫に余裕が出来た。

ヨーロッパ連合の中でも真似する者が増え、 人権意識は遠のいた。

しかし後の【白雪戦争】においてこの国庫の余裕が無ければ早期決着は難しかった。


結果として平民の権利拡充は遠のいたが

侵略という最大の人権侵害は防いだという皮肉が生まれたのだった。

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