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フォー・アウェイ・ドア

ガンガン、 とドアノッカーの音が再び響いた。


「・・・・・如何する?」

「出ない訳にはいかないだろう・・・私が出よう」

「ポドウィン爺ちゃん、 大丈夫?」

「心配要らん・・・はぁ・・・」


ポドウィンはどぼどぼと玄関に向かった。



ガンガンガン!! とドアノッカーの音が乱暴になってきている。


「今開けます!!」


そう言ってポドウィンは玄関のドアを少し開けた。

ガッ、 と足を玄関の隙間に差し込み中に入るアンポール。


「な、 だ、 誰ですか!?」

「騎士のアンポールだ」

「男爵のサイトウタダシとヴィングだ」


ずかずかと入って来る男爵二人。


「な、 何の用ですか!?」

「聞きたい事は二つ、 スァルビア男爵の居場所と

騎士に給料ケチった執事は誰かって事だ」

「給料をケチった!? アレはコストカットですよ!!」


激昂するポドウィン。


「コストカット? 何だ、 お前がやったのか?」

「えぇ、 私は執事長としてスァルビア男爵か」

「イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」


叫んで頭からポドウィンを左右真っ二つにするアンポール。

激昂の表情のまま、 びしゃり、 と臓物を撒き散らし倒れる。

アンポールが血塗れになり、 ヴィングは嘔吐した。


「殴って情報を吐き出させた方が良かったのでは?」

「サイトウタダシ男爵、 こんな物が分かっていない老害なんて

喋らせても碌な事を言わないでしょう、 じゃあ奥に行きましょう御二方は」


ぐらん、 と邸が揺れた。


「地震、 にしては揺れ方が変だな・・・」


たったった、 と走る音が聞こえる。


「誰か来たな」

「ヴィング、 吐くのはそこまでだ構えろ」

「は、 はい!!」


貴族ならば鍛えるべし、 戦乱を経験した門閥貴族ならば部下にはそう教えている。

少なくともベルモンド麾下の貴族は文官でも武装した状態で男5人は制圧できるくらいの

力量を求められる、 故に武装している。

サイトウタダシは刀、 アンポールとヴィングは剣である。


「ぽ、 ポドウィン!?」

「な、 何やってんだおめええええええええええええ!!!?」


やって来た使用人達が叫ぶ。

特にウリムが絶叫する。


「やべぇ!! 逃げろ!! 殺されるぞ!!」

「待て、 逃げられると思っているのか」


アンポールは使用人達の前に立ちはだかる。


「ちげぇよ!! お前等じゃねぇよ!!」

「は?」

「頼む逃がしてくれ!! このままじゃあ俺達もアンタ達も全員死ぬ!!」


ウリムの表情を見てただならない事態になった事を察知するアンポール。


「爺ちゃん!! 爺ちゃん!!」


愛文(アーウィン)がポドウィンに駆け寄る、 と同時に跳ね飛ばさる。

ついでにニッパーソンも跳ねられる。


「!!?」


アンポールは剣を構えて男爵二人とポドウィンの死体の間に割って入った。


「殿※1 は務めます!! お逃げ下さい!!」



※1:後退する部隊の中で最後尾の箇所を担当する部隊。

要するに『俺に任せて先に行け』と言う奴である。



()を視認したアンポールは即座に勝てないと判断し促す。


「分かった!! 持ちこたえよ!!」

「え、 え?」


困惑するヴィングを連れて全力で走るサイトウタダシ。

事情は全く分からない、 が

アンポールはセルデン領の生まれ、 戦闘能力はベルモンド領生まれの比では無い。

ならばアンポールを信じて即時撤退と判断。


使用人達も全力で玄関に向かって走って逃げる。


「ぎゃ」


逃げる背中から愛文(アーウィン)の湿った声が聞こえた。

恐らくは血を吐きながら叫んだのだろう。


「イイイイイイイイイ」


水音と共に猿叫が途絶える。


「アンポー」

「振り向くな!! 走れ!!」


叫ぶサイトウタダシ。

走って20秒もかからない玄関までの距離が永遠程に感じた。


「xt」


叫びにもならない声がした。


「アーチン」


振り返ったニッパーソンも死ぬ。

玄関扉迄あと数歩。

この数歩が遥かに遠い。


「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」


言語化出来ない叫びが響いた。

人間の声なのだろうか?

さっきから一体何が起こっているのだろうか?

脳裏にそんな疑問が起こるがそれ以上に体が全力で走る。

何か(・・)いる、その事実だけで全力疾走をする。

単純だが現状はそう言う事である。

あと3歩、 だが何か(・・)に触られるヴィッグ。

脳裏に思い出されるのはこれまでの走馬灯。

特に秀でた才能も無く、 大して学問に打ち込んだ訳でも無い学生生活。

武術も必要最低限のギリギリの代物、 受け継いだ地位。

これ以上を望んだが手が届かぬと功名心と嫉妬に苦しんだ。

あ、 もう終わるのか、 と思ったその時にグサっ、 と後ろで何かが刺さる音がした。


「お前の相手はこっちだ化物!!」


血で湿った絶叫が響く、 絶命寸前のアンポールが叫んだのだった。

僅かの時間、 2秒ほどの時間を稼ぎ、 その時間を使った何とか邸の外に脱出成功したのだった。


「ぜっーぜっー」


肩で息をするウリム。


「安心しろ・・・あれは邸の外に出て来れない・・・」

「アレは何だ!?」


ウリムの説明に声を荒立てて尋ねるサイトウタダシ。


「俺がやったんじゃねぇよ!!」

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