ワード・オブ・【Fワード】オールド
スァルビア男爵邸にて。
使用人達が頭を抱えていた。
「どうすんのさ・・・一体・・・」
顔に深い皺が刻まれたメイド長のアーチンが言葉を絞り出す。
「・・・逃げよう・・・もうどうしようもない・・・」
庭師の顔に深い皺が刻まれたニッパーソンが提案する。
「逃げる、 逃げるだと!? ふざけているのかニッパーソン!!」
執事長のポドウィンが叫び、 息を切らす。
「ポドウィン爺ちゃん、 落ち着いてくれよ・・・
ニッパーソンは所詮下民の出、 私達貴族の血とは違う」
ポドウィンの孫娘、 愛文がポドウィンの背中を摩る。
「貴族たって跡を継げなかっただろう」
執事のウリムが毒づく、 ポドウィンよりも都市は若い筈だが
毒づく性格のせいかポドウィンよりも置いて見える。
「何だと!?」
「この状況はお前のせいだろうが!! お前があんな事するから!!」
「や、 止めてよ二人共」
「うるせぇぞアーチン!! てめぇもなぁなぁで済ましているがもう限界だ!!
そもそもの話、 何もかもポドウィンが悪い!!」
「いや、 ウリムさん、 ポドウィンさんを庇う訳じゃないですが
スァルビア男爵にも問題が有ったと思いますよ」
「「「あの男をスァルビア男爵と呼ぶな!!」」」
ニッパーソンの言葉にポドウィン、 アーチン、 ウリムが反論する。
「す、 すみません・・・」
「そうだ!! あの男がスァルビア男爵を継いでから滅茶苦茶になったんだ!!」
ここで少し説明が必要だろう。
彼等は先代スァルビア男爵の代から仕えて来た者達である。
愛文は先代スァルビア男爵とは面識は無いが
それでも今代のスァルビア男爵は許しがたいと思っている。
何で彼等が今代のスァルビア男爵を憎んでいるのかと言うと
身も蓋も無い事を言うと逆恨みである。
再誕歴7630年オーガスト18日。
先代のスァルビア男爵が死去。
この場合、 スァルビア男爵の子が後を継ぐ筈なのだが
先代スァルビア男爵の女性関係が荒れており
ブリュッセルに居た本妻と長男の他にも2人の愛人と3人の隠し子が居た。
本妻は激怒し慰謝料を受取り長男と生家に帰った。
本妻は貴族の出身だったが愛人の一人は貴族産まれだが放蕩が過ぎて勘当され
もう一人は平民だった、 しかしながら愛人の子に跡を継がせる事を良しとしなかった
ベルモンド伯爵はヨーロッパ戦役にて多大な功績を収めたジャンダルムに
スァルビア男爵の地位を授与した、 ジャンダルムはヨーロッパ戦役のどさくさに紛れて
汚職に手を染めた部隊を撃退し英雄とすら称えられて人物である。
彼がスァルビア男爵の地位に着いて最初にした事は邸内の使用人のコストカットである。
先代スァルビア男爵は荒れた女性関係の為に遊び歩いており
家の事は使用人達に任せきりで様々な不正を行っており
執事長だったポドウィンは自身と交友関係の有る貴族子息を大勢雇っていた。
こんな大人数は要らないと使用人の数は大分減らされていった。
使用人達の為に浪費した財を補填する為にスァルビアは別宅も売り払い高級宿とした。
使用人達は猛抗議したが結局、 押し通され多くの使用人達は路頭に迷った。
ポドウィンは辞めた使用人達に対して次の職を探す為の紹介状を書く事を
スァルビアに求めたがスァルビアにとっては知らない連中だったので紹介状を書く事は無かった。
貴族の三男坊で特に体も強くなかったポドウィンは執事として教育を受けたが
彼の友人の貴族子息達はそうでは無かった為、 紹介状を書く事を無かったのは
スァルビアにとって英断だった。
スァルビアは自身の事よりも領民達を思い、 自分に使う金を減らし続けた。
最盛期には100人を超す使用人達も10人足らずにまで減って行った。
邸も使わない部屋をどんどんを閉鎖しコストカットに勤めた為
使用人達の給料も仕事量の減少に比例して減って行った。
使用人達は先代スァルビア男爵の時代からは信じられない程、 落ちぶれて行った。
とは言え使用人としての適正給料なのでただ単に彼等の金銭感覚が可笑しくなって
戻せなくなっていったと言う事である。
ポドウィンは内心憎悪を抱き、 何時か殺そうと思っていたが
同僚が後ろから誘うとしてはスァルビアに見破られ
同僚が毒を盛ってはスァルビアに見破られ
同僚が殺し屋を雇ってはスァルビアに見破られ
処刑台に送られ続ける様を見て怖気づいたのだ。
何時かやる、 と心に決めて先送りにし続けていた。
だがしかし、 彼は何時までも決行に移せなかった。
そもそもそこまで彼は必死になれなかったのだ
今ある生活を全て犠牲にしてまで出来ないと、 口先だけの憎悪を並べていた。
そんな彼も老齢に至りそろそろ息子で執事をやっているアポルウィンに
執事長を譲ろうかと思っていた矢先にアポルウィンが逮捕された。
罪状は釣銭の誤魔化しである、 貴族の使用人で少し質の悪い者ならば誰でもやる事だが
立派な横領である、 スァルビアは容赦無く起訴して刑務所に叩き込んだ。
ポドウィンは激怒して抗議したが受け入れられず態度が悪いとして減給と停職処分を受けた。
ポドウィンは停職中に頂点に達した憎悪を満たす為に
スァルビアを殺す為の手段を模索した、 そして何という運命の悪戯か。
スァルビアを殺す為の手段があっさりと見つかった。
そして停職が解けたポドウィンはスァルビアを殺害に成功、 したのだが・・・
「もう俺達は5人しかいねぇ!! 如何すんだよ!! この状況!!」
ウリムが激怒する。
「しかも目と鼻の先に既にベルモンド伯爵達が来てるんだぞ!?」
「うぐ・・・だ、 だが、 これがバレたら私達は如何なる!? 再就職は望めないぞ!!
貴族としての生家に戻る事も最早出来まい!!」
「だが」
ガンガン、 とドアノッカーの音が響いた。




