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イズ・ユアー・ヘッド・イン・カオス

ベルモンド伯爵の麾下の代官達の数は22。

故にこの場には22人の代官が居なければならないのだが

何故か7人欠席している、 1人はスァルビア男爵。

今年のメイ15日から病に臥せっていると言う知らせが有り今日もこれないと知らせが有った。

これはおいておこう、 問題は残りの6人である。


「その6人は過日、 私の所にやって来ました」


自慢げに言うヴィング、 彼も中堅よりの若手であり

若手の代官の中ではまとめ役を買って出る男である。


「・・・・・それで?」


溜めていたので促すベルモンド。


「彼等は現状に対して強い不満が有りました」

「不満か、 居なくなったのはソリューション、 フロップス

インターコネクト、 アグリー、 ディレクトリ、 そしてブヴァール

彼等は皆男爵位であり、 私は彼等にその様に報いてきた筈だ

ブヴァールに関しては彼は準子爵位が内定していた筈」

「え!? そ、 そうなんですか!?」


ヴィングが驚愕に目を見開く。

貴族がこうも感情を表に出すのは宜しい事では無いが

それよりも6人の居場所である。


「・・・・・本人に既に報せは出て居たし、 この会議が終わった後に受勲の予定だった」

「いや・・・え・・・そ、 そうですか・・・

と、 兎も角ですよ!! 我々の不満は待遇では有りません!!」

「・・・・・我々? 我々とは?」

「我々若手です!!」

「ちょっと良いですかね?」


クリフォール準男爵が挙手する。

女性ながらも準男爵位を継承した巻き毛が特徴的な眼鏡美女だが

やや皮肉っぽいきらいがある。


「我々若手って言いますが私は別に不満に感じて居ませんよ?

そうやって主語を大きくしないで下さいよヴィング様」

「そん通りっす、 あ、 ですよ!!」


合いの手を入れる騎士アンポール。

彼はセルデン侯爵麾下から移籍してきた男である。

セルデン侯爵領では期待のホープだったがジョンと過去にやり合った事で

ジョンとは相容れないと考えベルモンド伯爵の麾下に加わった。

礼儀よりも実務に割り振っているが実力は伯爵領の騎士の中では随一である。


「俺は寧ろ満足してますね!! 何か色々と支援して貰いましたし!!」

「途中で割って入るのは良くない・・・

しかしながらヴィング様、 これで御理解出来ると思いますが

私達若手は貴方と同意見ではありませんのであしからず」

「だがしかし!! 貴様等とて不満には思っているだろう!!

いや寧ろ中堅にも不満に思っている者は居る!!」

「ヴィング君、 |すこーし五月蠅いかな 《ちょっと黙れ》?」


エルジェが釘を刺す。


「っ・・・申し訳ありません」


ヴィングは不満気だがこの場で逆らうのは得策ではない

不敬罪として逮捕される可能性もある。


「しかしながら、 私共の不満は聞いて頂きたい」

「うん、 聞くよ? 聞くけどもさ、 ゆっくり静かに喋ろうね?」


エルジェは努めて子供に言い聞かせるように喋る。

これは彼なりの怒りの抑制法であり、 逆に言えば怒る一歩手前である。


「7571年の半島戦争、 7613年のヨーロッパ戦役、 この二つの戦乱により

ここに居る大半の方々は功績を挙げておられます

その功績で貴族になった方々もいらっしゃるでしょう」


その場の温度が急激に下がった。

半島戦争、 ヨーロッパ戦役で断絶した貴族は何家も有る

【旗国50家】ですら半分近くが断絶した。

そして半島戦争、 ヨーロッパ戦役で功績を挙げた者達が褒章として

断絶した家を継ぐと言う事もあった。

また褒章として新しく貴族位を賜る事も有った。

ヴィングが何を言うのかは分からないが態々口に出すと言う事は愉快な事にはならないだろう

前々から『○○は平民上がりで~』と言う男だった。

日常生活で言うのならばともかくこういう会議の場所で言うと言うのは宜しくないだろう

そしてヴィングは分かっているのか分からないのかは不明だが

半島戦争、 ヨーロッパ戦役、 両方でベルモンドは最前線で戦っている。

何で門閥貴族が最前線に出ているんだよと疑問に思う読者諸賢もいるだろから説明すると

ベルモンドは先代ベルモンド伯爵の四男だった為、 現場指揮官として最前線で戦う事になった。

因みにセルデン侯爵も最前線で共に戦った、 その為嫌い合っているが憎む事は出来ない。

更に言うとセルデン侯爵は先代セルデン侯爵の十七男である。


「ヴィング君、 これはね、 君のことを思いやって言うんだけどさ

|それ以上喋らない方が身のためだと思うよ《舐め腐っているんならばこの場で貴様の首をたたっ斬る》?」

「いえ、 喋らせて頂きます」


がたっ、 と数名の代官が立ち上がる。


「まぁ、 喋ってからだ座れ」


ベルモンドの指示で座る代官達。


「ありがとうございます、 しかし泰平のこの時代

私達若手は何時功績を挙げれば良いのでしょうか?」

「・・・・・はぁ?」

「戦乱の時代ではない現状、 功績を挙げるのはとても難しいでしょう

ヨーロッパ連合も有る事ですし小競り合いでは戦乱すら起きない

これで家格を上げるのは難しい、 にも拘わらずフェザーと言う孤児の平民を騎士にする

これは我々、 いや出て行った6人は納得がいかなかったでしょう」

「・・・・・即ち、 君、 いや君とその6人の言いたい事を要約すると

『自分達がこれから出世できるチャンスが有るのか分からないのに

フェザーが騎士になったのが気に食わない』と言う事か?」


ベルモンドが呆れた様な眼でヴィングを見る。


「無いでしょう」

「何が?」

「昇格のチャンスが」

「はぁ・・・」


ベルモンドは頭を抱えた。


「いや、 お前の頭は乱世かよぉ!?」


アンポールが叫んだ。

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