タブー・クロス sideナーロウ
再誕歴7701年メイ18日。
ナーロウはカジノ・アタリメにある安宿に泊まっていた。
一応の防犯体制は敷いてあるが一番グレードが低いと言っても過言では無い宿である。
この宿に連泊すると安く済む為、 コストを下げて意味でも連泊している。
ナーロウが部屋で一休みをしているとドアがノックされる。
「ん? 誰だ?」
ガチャ、 と鍵が外から開けられ警備が入って来る。
「な、 何だアンタ達は!?」
「ナーロウだな? 背任共謀の容疑で逮捕する」
「は、 背任!? 共謀!? 何の話だ!?」
警備員達は答えずにナーロウを運んで行った。
運ばれた先にはスクイドとマーブルが待ち構えていた。
「誰だアンタ達!?」
「この街の領主のスクイドだ」
「アンタが荒らしてくれたカジノのオーナーのマーブルだ
やってくれたな」
「なっ!? 何だって言うんだ!?」
「アンタがやらかした事について話を聞きたい」
「話!? な、 何の事だ!?」
スクイドは機械を取り出した。
「う・・・・・そ、 それが何だって言うんだ・・・・・」
「・・・・・」
スクイドは手元を弄ると機械が反応した。
「!?」
「ふん、 種が割れてしまえば何でもヴァカみたいな話よ
化物の正体見たり枯れ尾花※1」
※1:化物だと思って恐れていたが
よく見たら枯れたススキの穂だったという諺。
尾花とはススキの別称である。
疑心暗鬼で物事を見ると悪いほうに想像が膨らんで
ありもしないことに恐れるようになる意味である。
余談だがこの諺を提唱した日本の哲人武士、 横井也有は
健康十訓なる健康に必須の十戒を守りとても長生きだった。
”ザ・ジャパン・スリーガイズ”と称えられた徳川家康、 豊臣秀吉、 織田信長よりも
長生きをしたと言う伝説が残っている。
「ディーラーがこの機械を操ってアンタに指示を出していた
要するにディーラーが不正をしていたと言う訳だ」
「だ、 だがそれが私に何の関係が有る!!」
「ウチの敷地に有る以上、 ここのカジノ全てには公平性が求められる
カジノ・アタリメは誰にでも公平なカジノだ、 俺のカジノでイカサマは許されない
公平性が無いカジノはクズだ、 俺のカジノはクズでは無い
俺のカジノの公平性を損なわせる真似をする様な奴には
俺も公平性を欠いた行いをする他ない
特にディーラーとグルになってヨコる※2 様な極めて公平性に欠ける様な男には
それ相応の報いを受けて貰おう、 但し」
※2:カジノのディーラーが客と共謀してイカサマをして店の金を奪う事をヨコと言う。
尚、 ディーラーが店の指示でイカサマをして客の金を奪う事をタテと言う。
スクイドがピッと指を指す。
「貴様がディーラーと組んで奪った金を返せば執行猶予で済まそう
それ位の司法取引はしてやっても良い」
「し、 執行猶予!? ぜ、 前科持ちになれと!?」
「では牢屋に行くか?」
「う、 うぅ!! た、 頼みます!! 家に妻と娘が居るんです!!」
頭を下げるナーロウ。
「ふぅむ、 如何します? マーブルさん?」
「そうだなぁ・・・金さえ返せば良いですよ、 金さえ貸せば
但し利子をつけて返してもらおう、 16万程にね」
「うぐ!? そ、 そんなにですか!?」
「まぁこの位は妥当かと思うよ
とりあえず君が稼いだ金から残りは差っ引いて残りは分割払いで構わないよ」
「わ、 分かりました・・・」
「で君が奪った金は?」
「金は貸しロッカーに保存してあります」
「分かった、 場所は?」
ナーロウは場所を話した、 そして頭を抱えた、 危機を脱する為だったのに・・・
余計な負債を背負ってしまった・・・一体如何すれば・・・・・。
だが
「男爵閣下!!」
話した場所に向かった警備が血相を変えて帰って来た。
「如何した?」
「貸しロッカーですが管理人が縛られて拘束されていました!!
ロッカーに強盗が入った様です!!」
「強盗だと!?」
「じゃ、 じゃあ金は!?」
「それが・・・言われた番号のロッカーは蛻の殻※3 で・・・」
※3:何も無い状態の事。
もぬけとはセミやヘビが脱皮する事、 若しくはその抜け殻の事を指す
もぬけの語が見られる最も古い例は
漢和辞書『和名類聚抄』の【倍美乃毛沼介】で
ヘビの抜け殻を指しており
語源は諸説あるが身抜や衣退の意味に由来すると考えられている。
但しこれら全てが事実を隠蔽するカバーストーリーで
【も】と言う謎の存在が実在する事を隠す為にこんな言葉を作ったのではないか
という俗説も存在する。
「・・・・・」
呆然とするナーロウ。
「んじゃ、 司法取引も無しだな、 おい連れてけ」
「はっ」
連れていかれるナーロウ。
最早立ち上がる気力も無いのだろうか、 引き摺られていった。




