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ノー・ニード・フォー・ア・セカンド・ソード

再誕歴7700年ディセンバー1日。


ベルモンド伯爵領の街にて決闘場が用意された。

決闘場と言っても小さな広場である、 大きさは12m×12mの正方形の面積144㎡。

主に祭事に使われる広場で見物人が周囲に集まって来ている。


「はい、 並んで並んで―」


マルガレーテは整理券の販売を行っていた。

決闘場の提供をする代わりに見物人を入れて見物料を取るやり方は

ベネルクス王国では珍しいやり方ではない。

偶に発生する収益として活用している。

周囲には出店も出来ており軽いお祭り状態である。

シェイブド・アイス※1 を食べながら決闘が始まるのを待つベルモンドとサン。



※1:かき氷の事、 氷は貴重品なので割と高い



「ふぅ、 サンは良いのか?」

「終わったらフェザーとシェアしますよ」

「そうか、 フェザーは?」

「時間までには来ますって」

「来ます? どういう事だ?」

「さぁ、 あ、 ジョンだ」


ジョンが現れた、 動きやすい軽装に大きめのナイトリィソード※2 を帯剣していた。

周囲の喧噪が静寂に変わる。



※2:貴族戦士用の剣、 門閥家紋等の貴族にのみ装飾が施されており

一般的な剣とは一線を隔し日本の刀に負けるとも劣らない代物である。



「お早いお着きで」


現れる立会人№707。


「まだ時間が有るとは言えまだ来ないのは感心し無いな」


ごきごきと首を鳴らすジョン。


「ここが決闘場か?」

「えぇ」

「チンケな場所だな、 せめてコロシアム位は用意して欲しかった」


決闘場に入るジョン。


「さてと、 あの執事はまだか?」

「来たみたいですね」

「遅かった、 な?」


立会人が振り向いた方向を見ても誰も居ない。


「おい、 居ない」


ダンッと着地音が響く。

そして周囲から感嘆の声が響く。


「お待たせしました」


フェザーが現れた。


「滑空※3 か・・・中々派手な登場だな」



※3:空を滑るように飛行すること。

滑らかに落下しているとも言える、 普通はグライダー等の機材が無いと出来ない芸当だが

コツを掴みウィル・パワーによる身体強化が有れば生身でも可能。



「いえいえ嗜みですよ」

「そうか、 見せ合いだ、 ほら」


ジョンは持っていた剣をフェザーに渡す。


「・・・ブルー・ブラッド※4 の剣ですか」



※4:ブルー・ブラッド・カンパニー。

主に貴族の為の物品を作成している総合商社。

貴族からの受けが良い華美な代物から数世代使える頑丈な宝物まで多様なニーズに答えられる。



「良い剣ですね」

「褒められてもな、 お前の武器は?」

「これです」


フェザーが持っていたのは棒である。

普通の木の棒、 一応加工はしてある。


「・・・俺を舐めてるのか?」


怒りを込めてジョンは尋ねる。


「ポイント制ならばむしろ軽い方が良いでしょう」

「見た目と違って、 慣れている様だな・・・やはり単なる執事ではないか」

「武器の見せ合いも終わりましたし、 それでは決闘を始めます!!

立会人は№707が行います!! 両者名乗りを!!」


決闘の前には名乗るのが作法である。


「無用!! 殺し合いの前に挨拶も何もないだろうが!!」

「・・・・・ベルモンド伯爵が長子の執事、 フェザー、 かかって来い未熟者」

「!!」


わあああああああああああああと歓声が挙がる。




「始まりましたね」


キャタラがピラーがサンとベルモンドの所にやって来る。


「如何なりますかね?」

「そこまで不安になる必要は無いでしょ

この前、 フェザーはジョンの攻撃する前に全て潰した

それ位の実力差があるのよ? 楽勝よ」

「それは如何かな」

「?」

「あれを見よ」


決闘場でジョンが両手で顔の横に剣を構える。


「・・・? 何あの構え・・・あれじゃあ振り下ろすしかないじゃない」

「あ、 あれは示現流!!」

「示現流?」

「日本の剣術の1つだ!! ガードしたらガード毎砕かれる必殺の一太刀が特徴の剣技だ!!」

「セルデン侯爵家は日本の薩摩と言う土地からあの技を如何やってか持ち出し

騎士達に教え込んでいる、 当然ながらジョンもあの技を使えると言う事だ」

「凄い触れ込みですけども振り下ろすしかないじゃないですし、 対策は簡単では?」

「お前の疑問も尤もだ、 サン、 私もそう思った

セルデン侯爵に尋ねたよ、 『最初の攻撃が外れたらどうする?』と

そうしたら彼はこう答えたよ『その時は死ぬ』と」

「滅茶苦茶じゃないですか・・・」

「示現流最大の強みは死を覚悟した迷い無き一撃だ・・・フェザーならば対応は出来る・・・!?」





構えているジョンに構え無しで近付くフェザー。


「迷い無き一撃、 確かに迷いを無くすのはウィルパワーを消費を抑えて

振り下ろしにウィルパワーを全力で費やせる

実に合理的、 と言えば聞こえは良いですが、 今回はポイント制

一撃の強さよりも攻撃回数が多い方が良いのでは?」

「相手を一撃で仕留めればポイントも何も無いだろうが」

「なるほど、 それも確かにアリですね

但し、 一撃で仕留められればの話」

「あぁ?」


フェザーが走る!!


「イェエエエエエエエエエエエエエエエ!!」


フェザーに向かって剣を振り下ろすジョン!!

フェザーの肩口に刃が振り下ろされる!!

フェザーは振り下ろされた刃に逆らわずにその場で一回転!!


「エエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!?」


回転の勢いを利用しジョンを踵落とし!!

踵がジョンの右肩に命中!!

そしてそのまま背後に飛ぶフェザー!!

飛びながらジョンの膝を打ち砕く!!

倒れ膝をつくジョン!! そしてジョンの後ろに立つフェザー。


「ジョン1ポインツ!! フェザー2ポインツ!!」


立会人が宣言する。




「勝負あったな、 あれではもう動けん」


ベルモンド伯爵が呟く。


「呆気無かったわね・・・」

「そうでもないですよ」


サンの言葉を否定するキャタラ。


「ジョン様のウィルパワーは凄まじい

そのウィルパワーの凄さが逆にこの結果を生んだのです」

「どういう事?」

「ウィルパワーが強力だとそのウィルパワーに身を任せれば

あの様な芸当も容易く出来る」

「・・・つまりジョンの打ち込みに費やしたウィルパワーのエネルギーを利用して

フェザーは回転してカウンターをしたって事?」

「その通りですサン様

もしもウィルパワーが弱い一撃ならばフェザーはそのまま斬られていたでしょう」


恐るべきはジョンの技前を瞬時に判断しカウンター狙いに切り替えたフェザー。

カウンターせずに勝てた筈だがカウンター出来ると判断し迷い無く実行する。

示現流も一太刀に全力を注ぐ正気を疑う戦術※5 だがフェザーもどっこいどっこいである。



※5:戦う事自体狂気かもしれないし

今世迄残った剣術なので狂気の戦術かもしれないが強いので問題は無い。



「エエエエエエエエエエエエエエエイ!!」


剣をフェザーに投げるジョン。

フェザーは剣を渡されたかの如く受け取る。


「ここまで差があるのか・・・」


愕然とするジョン。


「・・・首を叩き落とせ!!」


慟哭するジョン。


「断ります」

「生き恥を晒させるな!!」

「・・・・・」


はぁ、 と溜息を吐くフェザー。


「示現流を使って負けた事が恥になるのは薩摩隼人※6 のみ

貴方はそうではない」



※6:薩摩の武士に対して使われていた美称、 転じて示現流の達人を意味する。



「ぎぎぎぎぎ・・・」


歯軋りをするジョン。


「迷いが無いのは認めますが鍛錬が足らない

殺して欲しければもっと鍛えて下さい」


ぱしん、 と木の棒でジョンの額を叩いて失神させるフェザー。


「フェザー3ポインツ!! フェザーの勝利!!」


立会人が叫び、 観客達が歓声を挙げるのだった。

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