ビースト・センス
ガギッン!!
「!!」
ビーストの鈎爪がロージーに肩に激突する!!
本来ならば切り裂く筈だったが固い!!
ウィルパワーで皮膚を強化しているのだ!!
「っ!!」
しかしながら無傷にはならない!!
肩から流れる血を感じながらロージーはビーストを蹴り飛ばそうとするも回避される。
「思ったよりも固いな」
「やる気、 出たかしら?」
「まぁ、 多少は、 でもあんまり強く無いだろお前
その爪の・・・何だ・・・赤いの」
「ネイルアート」
「そう、 それ、 それを使うくらいだったら
普通に鈎爪とかで良いんじゃねぇの? 元が鉄だしそっちの方が頑丈だろう」
「・・・鉄の爪だと重いからね、 こういう事は出来ないでしょう」
ロージーは距離を詰めて両手のネイルアートで攻撃を始めた。
超高速の連撃、 フェザーには通じなかったがビーストには・・・
再び天井を見上げるロージー。
「またか!!」
またしてもこの謎の転倒、 一度目は分からなかったが二度目は理解した。
「蹴りか!!」
「気が付くの遅い」
ビーストは野生児である。
とある深い森で幼い頃を過ごしていた。
何故そんな事になったのか、 詳しい事は分からず物心付く頃には一人だった。
当然ながら弱肉強食の環境で過ごした彼には殺し殺される戦闘の毎日。
そんな中で彼は現在の戦い方の原型を作り出した。
強い獣の手を引っぺがして手袋として使う方法。
当然手には爪も有るのでそれで攻撃が可能である。
また爪を使う前は足での攻撃が主体だった。
足は手よりもパワーが強いのは周知の通り。
故に足技も多用する。
「ならこれよ!!」
距離を取ってビーストに指差しをしてその指のネイルアートを伸ばす遠距離攻撃!!
「そんな物が当たるか」
ビーストは余裕で躱す。
「甘い!!」
「!?」
ざく、 と二本目のネイルアートがビーストに刺さる。
左手でも指差しがしていたのだ、 意表をついて刺す事に成功する、 が。
「!?」
今度はロージーが驚愕する番だった。
固い!! ネイルアートが刺さっていかない!!
ウィルパワーを分散させすぎたか!?
「くっ・・・」
「っと」
伸びたネイルアートを鈎爪で斬りおとしロージーに近付くビースト。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「あ?」
ロージーもビーストに向かって来た。
「・・・・・」
ビーストは呆れた。
コイツは何をやっているのかと、 さっきの攻撃が通用しなかったんだから
攻撃ば効かないのは分からないのか、 面倒極まる。
そうこうしていると、 ロージーがネイルアートを展開して至近距離から突いて来た。
「あ」
ネイルアートを圧縮硬化した爪での抜き手。
ビーストの脇腹を掠める。
「これも躱すのか!?」
「んー? 今の技、 あんまり使って無いだろ?」
ビーストが指摘する。
「・・・練習不足とでも?」
「だな、 でも良い技だったよ、 傷もつけられた」
掠めたとはいえ当たっており、 ビーストから血が出ている、
「じゃ、 こっから本気出すわ」
「来、 いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!???」
鳴り響く金属音の連打。
恐ろしく速い、 連撃の嵐。
「くっ、 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ロージーが全力で応対するも幾つか攻撃を捌ききれない。
ウィルパワーによる皮膚硬化が無ければ既にバラバラになっていただろう。
だがしかし先程よりも深く斬られている!!
「舐めるな!!」
一瞬の隙を突いてロージーがネイルアートでの反撃に移る!!
しかしその攻撃の隙を突いて攻撃をしゃがんで回避したビーストはロージーの足を鈎爪で切り裂く!!
「っ!!!!!」
切断まで行かないが足は使い物にはならない!!
倒れるロージー!! もう起き上がれない!!
「!!」
ロージーは死を覚悟した。
今まで色んな相手と戦ったがビーストはその名の通り、 野獣的な男だ。
生かしてやろうとかそんな事は言わないだろう。
「・・・・・?」
ビーストの追撃が来ない、 一体何故?
ロージーが上体を起こすとビーストは座って待っていた。
「おぉぉぉっと? これは如何言う事だぁぁァァァ?
ビーストが待っているだとぉぉぉぉ?」
解説のファーマーも困惑している。
「何の真似・・・?」
「そこまで出血すれば失血でアウトだろう、 ならば待つ、 何時までも待つ」
「・・・・・トドメを刺す事もしないつもりか!?」
「俺としても不完全燃焼だ・・・物足りない幕引きだが、 次が有るからな」
「次・・・フェザーとの試合?」
「そう、 この不完全燃焼は奴にぶつけるつもりだ
予想外だったな、 お前が弱ければ勝っても萎えて実力が発揮出来なかっただろう
良い感じにあったまって来たし感謝するぞ」
「・・・・・私の負けよ」
ロージー、 降伏を宣言しビーストは勝利した。
ロージーは係員に肩を貸して貰って退場した。
「さぁて!! 出て来いよフェザー!!」
ビーストが叫ぶ。
「・・・・・」
闘技場に現れたフェザー。
「よぉ!! 久しぶり!!」
「久しぶり、 相変わらずの様だね」
「まぁな!! 最近は退屈で退屈で仕方なかったよ!! じゃあやるか!!」
「開始の合図をお願いします」
「速攻で申し訳無いが試合開始いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」
間を置かずにフェザーとビーストの試合が始まった。




