Sランク・アンド・Aランク
ソレデは剣での突きを放つ。
フェザーは剣をギリギリで躱す様に前に進む。
槍の様な刺突武器に対して横に避けるのは愚挙
横に移動でワンテンポ遅れた時点でそこを突かれる。
とは言え、 前に出ると言うのは心理的に困難である。
(今更驚かん)
ソレデは今までに突きを回避された事は多々有るし
前に出て来られた事も多々有る。
A級決闘者ならばこの程度の事はやってのける。
「っふうん!!」
突きから横薙ぎに変更するソレデ。
しかしながらスピードが付く前にガンッ!!
と火花を散らしてフェザーは剣で剣をガードした。
斬る為の勢いが付く前に、 とソレデが驚愕する前に
ギャリギャリギャリと火花を散らしながらフェザーは前に進む。
「ちぃ!!」
バックステップでソレデはフェザーと距離を取ると同時にフェザーの剣が振り下ろされた。
ソレデの指が浅く斬られた。
もしも退くのが遅れれば剣を握っていた指を切り落とされる所だった。
そんな事を思うか思わないか、 即座に距離を詰めて斬りつけるフェザー。
恵まれた体躯なのだから肉を切らせて骨を断つ戦法を取る。
ソレデは戦う前にそんな事を思案に上げていたが無理だと判断した。
肉を切らせたら間違い無く骨まで断たれる、 そう思わせる程鋭い斬撃。
この斬撃の鋭さは以前に自分に指導をしたシンゲツ・バロッグの斬撃を想起させた。
バロッグの剣裁きは真似ようとすら思えない代物だった。
フェザーの剣裁きはバロッグの真似である、 が真似とは言え共
バロッグの領域に片足突っ込んでいる、 間違い無くバロッグの弟子、 子と言っても良い。
「らぁ!!」
フェザーの剣を自身の剣で受け止めて押し返すソレデ。
フェザーの身体が押され揺らぐ。
(好機!!)
揺らいだフェザーに剣を叩き込むソレデ。
ウィルパワー無しならば体格が良いソレデの方が有利な筈!!
「・・・・・は?」
ソレデは前のめりに倒れそうになったので咄嗟に剣を地面に突き刺した。
「・・・・・」
背中から首筋に剣を突きつけられるソレデ。
「・・・俺の負けだ、 だが腑に落ちない、 一体何が起こった?」
「・・・・・」
ちらり、 と解説席のファーマーを見るフェザー。
「本人が負けを認めているからアンタの勝ちだ!!
全く実況も解説も出来なかったから説明して貰えると助かる!!」
「分かったよ」
剣をしまうフェザー。
「まず前提としてソレデは反ウィルパワーでウィルパワーを無効に出来る
故にウィルパワー無しのフィジカルと技能のみで戦わなければならない」
「いや!! ちょっと待ってくれ!! 最後の奴はウィルパワーじゃないのか!?」
「うん」
「ちょっと待て、 最後の奴って何だ?」
「・・・・・君が剣を振り下ろした時に君の股下を潜り
ついでに足首を切って倒している状態にした」
「なるほど・・・体格が良いから股下も広くなって潜り易いと言う事か・・・
たが俺が認識出来ない程に早く動けるのか? ウィルパワーも無しに?」
「うん」
「うん?」
「僕がおやっさん、 バロッグさんに鍛えられた時に体の動かし方を教えて貰った
動き方を意識して全力で動けば通常よりもより良い動きが出来る」
「・・・・・それでこの動きが出来るって言うのか? 信じられないぞ」
「いや、 これは僕が最初に教わった事だし
反復練習する時間は沢山有った大体75920時間位は」
「・・・・・」
フェザーの年齢から行ってそんな時間が捻出出来る筈がない。
即ち、 フェザーは常時自分の身体を動かす様に意識して動いている
いわば無意識の排除、 日々それを実行する、 想像を絶する苦行であろうか
それを事も無げに常時行い続ける、 これ位しなければS級にはなれないのか・・・
そこまで考えた所でソレデはぱたりと倒れた。
足からの出血で立つ事すらままならなくなったのだ。
「相変わらずと言った所かぁ・・・やな奴が来たなー」
闘技場の選手入場口で愚痴るビースト。
「ふむ、 しかしデータの予測の範囲内ですね」
ブラック・シンゲツ・コーポレーションのA級決闘者、 風呂 エヴォルハウフトは
眼鏡をくいと上げて冷製に判断する。
「データの予測の範囲内って・・・お前勝ちあがるつもりかよ」
「その通りですが、 何か?」
「トーナメント表を見てないのか? オメーの相手はマーマレードだろ
アイツもS級、 お前よりも格上だ」
「御安心下さい、 彼女の事は調べ尽くしてあります
その上で対策は既に練って有ります」
「対策ねぇ・・・」
「予言しましょう、 私が負ける確率は99.999999999999%です!!」
「・・・・・負ける確率? 普通は勝つ確率じゃねぇの?」
「あ、 私が勝つ確率でした」
「・・・・・まぁ良いや、 次は俺の試合だしやるか・・・」
「あ、 ビーストさん」
「何だよ?」
「私の計算によると貴方が次の試合に勝てる確率は5%です」
「・・・・・だろうな」
「否定しないんですか?」
「あぁ、 まぁとりあえず行って来る」
覇気のない表情でビーストは試合場に向かった。




