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バター・ティー・イン・ザ・ミルクホール

再誕歴7700年ノーベンバー28日。


ジョンはセルデン侯爵領の侯爵直轄の街にあるミルクホール※1 にやって来た。



※1:牛乳や軽食を提供する簡易飲食店。

セルデン侯爵家は代々『喫茶店で茶を飲むよりも牛乳を飲んだ方が肉体作りが捗る』

と喫茶店よりもミルクホールを好んで建築する傾向にある。



「すみません、 もう営業は終わり、 ってジョンか」


店主のミノタウロス※2 のエトワールが片付けをしながらジョンを見る。

彼女は行儀見習いとしてセルデン侯爵に仕えた後にミルクホールの経営を任された。

任されたと言っても人手が足りない為、 彼女が自分のミルクを絞ったりウェイトレスをしたりしている、



※2:ギリシャのクレタ島原産の牛の獣人。

クレタの王ミノスが神との約定を破った罰として息子を半牛半人の怪物にされた。

この牛の怪物が最初のミノタウロスと言われており

『例え牛でも我が子』と惜しみない愛情をミノス王と妃が注いだ事により

ミノタウロスは名君として成長し、 妻を娶り、 子を成した

その子供達の子孫が現在のミノタウロスである。

今や人の部分が多くなり、 牛の様な角と尻尾が生えた獣人と言う程度である。

男は雄々しく、 女は柔らかく巨乳で乳業を営む者も多い。



「相変わらず敬語使わないな」

「いーじゃん幼馴染だし」

「まぁ気にする事でも無い、 牛に教育する無駄な事をしたくもない」


ミルクホールの席の一つに座るジョン。


「で、 何の用?」

「ミルクホールに来たんだから用件は一つだろ」

「・・・・・ちょっと待ってて」


エトワールは奥に引っ込んだ、 親しい間柄とは言え流石に搾乳する所は見られたくない。


「私のミルクが欲しくなるって事はまた決闘?」

「あぁ」

「今回は誰が相手?」

「隣領の奴だよ」

「そう、 まぁ君なら余裕でしょ」


エトワールがミルクを持って戻って来た。


「はい、 コレ」

「ん」


ミルクを受取ったジョンはミルクを水筒に入れ振り始める。


「私としてはミルクそのままで飲んで欲しいんだけど・・・」

「そうはいかない、 ミルクそのままだと茶葉に負ける」


ジョンは止まり水筒を開けて中身を木のスプーンでかきだす。

中からはバターが現れた、 如何なる魔術か!?

と言う訳ではなく、 牛乳を振り続ければバターになるのだ。

しかしながら常人なら2,30分はかかる。

にも拘らずこんなに早くバターになるとはなんと凄まじい振りの速度か!!


「これで良いか」


バターを盛り付けるとすかさずバターを飲み込む!!

狂ったか!? 否!! バターは鮮度が命!!

バターの鮮度を落とさない為に一気に食べるのは理に叶っている!!

更に紅茶の茶葉を取り出して飲み込む!!


「っ!!」


口を押えるジョン、 目から血が溢れる。


「相変わらずキツそうね・・・」

「何の事は無い・・・」


息を上げながら答えるジョン。

これはセルデン侯爵家伝統のバターティーである。

本来バターティーとは紅茶の中に溶けたバターを入れる物だが。

セルデン侯爵家では『戦時下で湯を湧かせない時にも飲める様に』

こうした飲み方をしている。

湯を使わない分ダイレクトに茶とバターの栄養素を効率的に体に摂取出来ると言うメリットと

湯と言う緩衝材が無い分、 紅茶の成分がダイレクトに体に侵食すると言うデメリットがある。

セルデン侯爵家では『茶とは薬』と言う考え方の為、 戦の前に飲む物とされており

明らかに薬剤としての効能が強くなっている。

ジョンが渡された紅茶も常人が飲めば間違いなく死ぬと言う代物である。


「はぁ・・・はぁ・・・」


立ち上がるジョン。


「肩貸そうか?」

「要らんわ、 これからベルモンド伯爵領に戻らないかん」

「あ、 そう・・・気を付けてね」

「言われずとも」


そう言いながら去って行くジョンだった。


「・・・・・相変わらずね」


決闘の度にここに来てバターティーを飲んで去る。

エトワールは少し寂しく思いつつも店の片付けを進めるのだった。

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