ノンセンス
「始める前に一つ尋ねたい事が有る」
フェザーが口を開いた。
「何だ?」
「いやチーズじゃなくてクロヴィスさんに」
「私に? 何だ?」
「魔物に石に変えられていたが石から人に戻ったって言うルドウィカと言う少女の事です
どうやって戻したんですか?」
「お前話聞いてないのか? 私が戻したんだ」
ロックが胸を張った。
「どの様に?」
「ふん」
ロックはりんごを取り出して息を吹きかけた。
りんごは瞬く間に石の様になった。
「私にはこの通り、 石化のブレスを吐けるんだ」
「話が通じませんね、 石化のブレスは分かりましたが
ルドウィカを如何やって石から人に戻したのですか?」
「石化した物を元に戻す事が出来るのだ」
「「嘘吐け」」
フェザーとチーズが同時にツッコミを入れる。
「嘘では無い、 何故そう思う?」
ロックが尋ねる。
「石になった期間はどれ位です?」
「・・・・・」
ロックはクロヴィスを見る。
「・・・正確な年数は存じ上げませんが
恐らく280年(現実で言うと70年)程だと思います」
「お前そんな長く石になった奴が生きている訳ねーだろうが
1年でも動けなかったら精神が死ぬだろうが」
「チーズの言う通りだと思います、 そんなに長時間動けなくなったら
普通に死ぬでしょう、 動けないから息も出来ず物も食べられない
心臓すら止まるから血も流れない」
「い、 いや、 石になっていたからそういう生理的な現象は行わなくて済む
冬眠と一緒だ」
「いや冬眠中でも呼吸はするだろうが、 眠っている時に呼吸をするだろ」
チーズが突っ込み返す。
「睡眠時無呼吸症候群ってあるだろう!?」
「睡眠時無呼吸症候群はいびきと無呼吸を繰り返す病気だ、 呼吸はする」
「そもそも動かなくなったら骨が衰えるだろう
280年も動かなくなったらまともに歩ける筈が無い
にも拘らず元気そうじゃないか」
「だ、 だから石化していたからだ!!」
「石になっていたとしても風雨に晒されて無事な筈が無い風化するだろう」
「もういい加減にしましょうクロヴィスさん、 ルドウィカなんて人は
ロードリンゲン家に居ないんでしょう?」
「居る!! そ、 その証拠にリヒテンシュタイン公国は否定しなかっただろう!!
そもそもルドウィカがこの決闘に何の関係がある!!」
絶叫するクロヴィス。
「正直に言うと、 復活※1 したかと」
※1:生き返る事。
再誕と言い換える事も出来る。
要するに神の領分。
「・・・・・それだったらそう言った方が支持率集められるからそれは無いだろ?」
チーズが冷静に突っ込む。
クロヴィスとロックは絶句した。
人間の復活、 それは荒唐無稽すぎる話である。
現代人には蘇生魔法や復活の施設などが
想像できるだろうが、 この世界の人間にはとても荒唐無稽である。
もしも貴方の傍にいる人が『家から石油が湧きだした!!※2』と言って信じるだろうか?
それ位荒唐無稽な話である。
※2:石油は地面に埋まっている時は石なので間欠泉の如く沸く事は無い。
「でもそろそろ復活能力持ちが出て来そうな気がする」
「夢のまた夢だな、 それじゃあそろそろ始めるか?」
「・・・・・あ、 あぁ、 そうだな」
「・・・・・」
ロックはドラゴンに変化した。
「この状態から始めさせて貰おう、 ドラゴヴァニア五連星を打ち破ったのだからこれ位は良いな?」
「わりーな、 俺様は雑魚には興味無い、 クロヴィスは俺が殺すから
あのデカブツは任せた」
チーズがロックをスルーしてフェザーに言った。
「雑魚だと!?」
「珍しい、 君が相手を拘るとは、 てっきり両方纏めてとか言い出すかと」
「この俺が雑魚だと!?」
「普段だったら3人纏めてと言いたい所だがなぁ」
「貴様等!!」
「僕も混ざってるの? 見境ないなー」
「無視するな!!」
「まぁ今回はカロリングの息子だし強いだろうから」
「貴様等ぁ!! いい加減にしろ!!」
石化のブレスを吐くロック。
石化のブレスは白い煙の様にフェザーとチーズを包む。
「待てぇい!! 開始の合図も無しに何を勝手にしているんだ貴様ぁ!!」
立会人№124が激怒する。
「ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!?」
急に吹き飛ぶロック。
ガキィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!
そして響く轟音!!
チーズとクロヴィスの鍔迫り合いだ!!
「立会人、 俺様達はS級、 この程度はハンデだ」
「そうですね、 この程度不意打ちにも入らない」
チーズの言葉にロックを蹴り飛ばして着地したフェザーが同意する。
「・・・・・認めているなら構わない、 では尋常に始め!!」
もう始まっているが叫んだ立会人だった。




