タジリー・フォー・エッジ・アザー
ドイツ帝国、 新制フランク王国との国境近くの街フライブルク・イム・ブライスガウに
ドイツ帝国軍が展開していた、 クロヴィスの暴挙に対応する為に待機していたのだが・・・
「・・・敵ドラゴンの様子は如何だ?」
街の暴風壁の上でドイツ帝国軍、 将軍の一人ストリキニーネが部下に対して尋ねる。
彼女はドイツ帝国軍の中でも最も若い女性だが数々の功績を挙げて来た女傑である。
今現在、 彼女は軍の一個師団※1 を率いてフライブルク・イム・ブライスガウでの
フランク王国に牽制していたのだが、 ドラゴニュート数名が国内に侵入。
交戦を開始し互いに打撃を与えられ様子見をしている状況である。
※1:ドイツ帝国軍では一個師団は三個大隊に相当する。
即ち一個師団は3000人である。
「敵ドラゴン14匹の内、 既に3匹が我が軍の高射弓兵※2による矢により死亡
他2匹にも深手を推させております、 突撃しますか?」
「小隊長を集めておけ、 全員だ※3」
※2:高射弓と呼ばれる大型の持ち運びに不便だが高威力且つ連射出来る弓を扱う弓兵。
扱いが難しい為、 殆どの部隊では使われないが
ストリキニーネは積極的に使っている。
※3:一個大隊は1000人だがその一個大隊も
100人の一括りの一個中隊が10個集まって出来ている。
更に一個中隊も10人一括りの一個小隊が10個集まって出来ている。
小隊には小隊長が居るので一個師団には300の小隊長が居る。
基本的には小隊長には戦力が求められるので大体B級決闘者程度の戦闘力が有る。
ストリキニーネの一個師団は手塩にかけた連中の為
B級上位決闘者と言う破格の強さを誇る者が大半である。
これ程の実力者は普通決闘者になった方が儲かるので軍を離れる筈だが
ストリキニーネの人望故か軍に残る者は多い、 そしてこの質と量ならば
ドラゴン10匹程度、 楽勝とは言わないが確実に勝てるだろう。
「待って下さい!! 動きが有りました!!」
見張りの一人が叫ぶ。
外から暴風に吹き荒れながらドラゴニュートが白旗を振って近づいて来る。
「射るな!! 私はドラゴヴァニアのスカル!! 其方達と戦う気は無い!!
交渉がしたい!!」
「む・・・」
「話にならねぇぞ!!」
ストリキニーネの側近、 3人の大隊長の一人マグナムが叫ぶ。
「俺達も何人か死んでるんだぞ!? それを交渉だァ!? ざけんなよ!!」
「マグナム、 少し静かに死なさい」
ストリキニーネの側近、 3人の大隊長の一人トートがぼそりと呟いた。
「今死ねって言った!?」
「気のせいですよ、 決めるのはストリキニーネ様の判断です」
「閣下、 私が話を聞いて来ましょうか?」
ストリキニーネの側近、 3人の大隊長の一人レイゼが尋ねる。
「レイゼ、 君が行く必要は無い、 他に誰か・・・」
「良いんじゃねぇか? レイゼは古参で将軍の古くからの部下と言う事以外には
これと言って特徴も能力も無い奴だし」
「マグナム、 君には人の心が無いのかね・・・」
マグナムの言葉に呆れるトート。
「まさかここで私を襲う事は無いと思いますよ、 安心して下さいよ」
「レイゼ」
レイゼを抱き締めるストリキニーネ。
「死ぬなよ」
「大丈夫ですよ」
男女二人が抱き合うこの流れ、 初めて見る者には出来ているのか?
と思わせる場面だが実態は昔からの付き合いで出来る悪ふざけに近い。
それ位二人は信頼し合っている。
レイゼはスカルの元に向かった。
「私はドイツ国軍大隊長レイゼ!! 将軍ストリキニーネ閣下の命により馳せ参じた!!
交渉とは何か!? 我が国土を荒らしたケジメはどう責任を取るつもりか!! 答えよ!!」
スカルの眼前に立つレイゼ。
暴風吹き荒れる中だがレイゼも大隊長に上り詰めた男。
マグナムに能力が無いと言われたが大隊長のレベルに合った実力を持っている。
「我々はドラゴヴァニアの者だ!!
まずドイツ帝国に危害を加えるつもりはない!!
我々はフランク王国に居るロックを始末しに向かっている最中なんだ!!
だが前を飛んでいた輩が間違ってドイツ帝国に入ってしまい戦闘になってしまったんだ!!」
「そんな子供の言い訳染みた事を信用しろと?」
「本当だ!! 信じてくれ!!」
「そもそもドイツの国境沿いを飛ぶ時点でドイツ側に何か有っても良いだろう
何故何も言わなかった?」
「急いでいたんだ!!」
「急いでいたからと報告を怠r」
そこまで言うと突然顔が真っ青になるレイゼ、 そして胸を抑えて蹲る。
「ど、 どうした!?」
「小隊長全員突撃!! ドラゴニュートを滅しレイゼを救え!!」
ストリキニーネが檄を飛ばす。
「ち、 違う、 俺は」
スカルは狼狽えるも後ろで待機していたドラゴニュート達がブレスを吐き出して応戦する。
「え」
スカルはドラゴニュートのブレス攻撃によりレイゼと共に死に絶えた。
その後ドラゴニュート達と中隊長達は交戦。
深手を負って戦えないドラゴニュートとスカルを除いた8匹は全員死亡。
小隊長300人の内、 52人が死亡。
生き残ったドラゴニュートから彼等がドラゴヴァニア五連星候補であり
次に五連星になる為にこの様な無茶を行ったと証言を受けた。
この事が後の惨劇の始まりになるとは一人を除いて誰も予測出来なかった。




