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第六話 助ける必要、ある?

「へっへっへ、なかなか上玉な娘が2人も手に入るとはな……いいか野郎ども!! 出来るだけ無傷で捕えろ!!」


 山賊の男、そのリーダーらしき男が部下らしき男達に号令を飛ばす、山賊の数はリーダーらしき男を含め5人。


 対して2人組の女の方は1人が剣を構え立っているものの、明らかに膝が笑っている。


「どうしてこんな事を!?」


 恐怖のあまり腰が抜けたのか、へたり込んだ方の女が山賊達にそう叫ぶように問いかける。


「お嬢ちゃんたち、こんなご時世に女だけで2人旅してりゃ、そりゃ危ない目にも合うさ。でもよかったな、俺が相手なんだ、とってもいい思いさせてやるぜ、へっへっへ……」


 下卑た笑い、だがどうやらこの状況を作ったのは女の方らしい。そんな様子を遠くから見て聞いていたソイルは


「お、この木の実使えばパンを作る事が出来るな。集めておこう」


 早速山賊と女に興味を無くしていた。むしろ厄介事の気配しかしないから、さっさと女を捕まえてアジトにでも戻ってくれ、とすら思っていた。


 これがまだ、街から無理矢理攫われた2人とかであるならソイルも助けようとは思っていた。


 理不尽な暴力でいろんなものを奪われる、その苦しみは分かっているつもりだ。


 だが女の方にそれなりの原因があるのであれば、それは自業自得というものだ。


 ソイルは元々、優しい男であったはずだった。だが長年に渡る暗殺者としての訓練、そして実際に何度も暗殺の依頼をこなすうち、人に対しての情というものが希薄になっていったようだ。


 ソイルは気配を完全に消し、そのまま木の実を集める。


 全ては明日の朝ごはんのために……ソイルの視線は完全に木の実に向き、自分が感づかれていないかを確認するための聴力だけを山賊達に向けている。


 ソイルは表情には出さないが、上機嫌である。この木の実で作ったパンは彼の好物の一つだったのだ。近くに厄介な奴らが居ると分かっていても、鼻歌を歌いそうになるほどには上機嫌なのである。


 そんな山賊達にどうやら動きがあったようだ。山賊達がやたらに威嚇をしていたのが鳴りを潜めていた。


「セレーナ、待って!」


 叫んだのはどうやら、剣を構えていた方の女であるようだ。そんな女の声に反するように、女の方から山賊に向かって一歩一歩歩みを進めるような音が。


 座り込んでいた女が観念し、山賊に自ら捉えられようとしているようだ。やっとこれで安全にこの森を突っ切る事が出来る、ソイルはそう思ったその時であった。


「私はどうなってもかまいません、ですから、お姉ちゃんだけは見逃してください」


 ソイルの表情は変わらない、だが先程までの上機嫌は鳴りを潜めていた。



「おお、お嬢ちゃんは賢いな。任せろ、お嬢ちゃんもお姉ちゃんも両方とも俺様が可愛がってやるからよ!」


 いくら一方が身を捧げようとも、この場の支配は完全に山賊側にあるのである。そして山賊は奪える時に奪っておかなければならない。


 いくら劣勢側が交渉を持ちかけようとも、それは足許を見られる行為である。


「そんな!! 約束が違う!!」


 そもそも山賊はそのような約束をしていない。していた所でこの圧倒的優位でみすみす獲物を逃がす事などしない。


「きゃっ!!」


 無防備に山賊の近くに居た女を捕え、山賊は人質として姉に迫る。


「さあ、お前の大事な妹の命が惜しくば、剣を捨てろ!!」


 くっ、と姉は呻くが、そのまま姉は剣を放り捨てる……


「はぁ……」


 そんな様子を遠くから見ていたソイルはつまらなさそうにため息を吐くと、そのまま拾っていた木の実を指で次々と弾く。


――スナイパースキル、指弾


 スナイパーは基本的に弓による攻撃を得意とするが、石のようなものを指で弾く指弾という特技も使える。


 ソイルの指弾の射程はせいぜいが100メートルだが、それでも仮面術でスナイパーに化けていれば、その射程は300メートル程度はゆうに届くのだ。


 指弾を放つと同時にソイルは木の上を飛び移るように高速で移動する。目指すは山賊と2人の女が対峙する場所へ。


「はあ、めんどくさい……」


 ソイルは木から木に飛び移りながら左手で顔を覆う。


 指弾で先制攻撃をしたとは言え、その1撃で人を完全ノックアウトを出来る程のダメージは与えられない。乱戦になる事は間違いないと踏んでいたため、スナイパーから即座に戦士の姿に変身する。


 やがて森の中でも開けた場所に出た。ソイルはそのまま大ジャンプ。


 眼下には山賊と山賊に掴まった女、そしてもう一人の女を他の山賊が取り囲んでいる様子が見える。


――眼下に居る山賊は先ほど見た通り5人。そして、その5人の山賊の腕を狙いすましたかのように先ほど放った指弾が命中しようとしていた。


――パァン


「いってぇぇ!!」


 矢ほどではないにしても、それなりにダメージはある。


 ソイルの放った指弾は山賊の武器を持った手の甲を的確に捉え、先ほど拾った木の実が手の甲を貫き抉り込むように手の甲と一体化していた。


 ソイルはそのまま上空から山賊のリーダーの目の前に着地し、叫ぶ。


「伏せろ!!」


 ソイルの声に咄嗟に伏せた妹を確認すると、そのまま山賊のリーダーの顔面に飛び膝蹴りをお見舞いする。


「ぐぉぉぉぉ!!」


 山賊の親玉はそのまま吹き飛ばされる。それを見た山賊の下っ端4人がリーダーを起こそうと駆け寄る隙に、妹を抱えそのまま姉の元に駆け寄る。


「セレーナ!!」

「お姉ちゃん!!」


 妹と姉が互いに抱き合うが、ソイルはそのまま姉が放り捨てた剣を拾い一言。


「これ、借りるぞ」


「な、こ、この野郎!! やつを殺せ!! 撃て、撃てー!!」


 山賊のリーダーがそう叫ぶ。それと同時にソイルは2発の矢が飛んできたことを察知する。


――やはり伏せていたか、知っていたけど。


 だが、リーダーの叫び声に反応して撃って来たのだ、つまり、それほど離れた所からの狙撃は出来ない輩である。


 ソイルはそのまま剣で2本の矢を弾き飛ばすと、そのまま腰に下げた袋から木の実をさらに2つ取り出し、指弾を放つ。


 叫び声に反応して矢を飛ばせる距離、その程度の距離ならばスナイパーに変身するまでも無い。その指弾はスナイパーの


「がぁぁぁぁぁ!!目が、目がぁぁぁ!!」


 目玉を正確に捉えた。


 上級者になれば目に頼らない、音や空気の流れからスナイパーの仕事が出来るようになるそうだが、山賊なんかをしている以上は、その領域に到達する事はほぼ無理だろう。


 事実上のスナイパー廃業である。さて、とソイルはリーダーを囲うように集まった山賊達に剣を構えながら近寄る。


「さあ、懺悔の時間だ」


 その後、ソイルの一方的な虐殺が始まったのであった。

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