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第十六話 【悲報】勇者レヴァイ、人を見る目が無かった

 今朝、城からの遣いの者から王城に登城するよう告げられたレヴァイは城門をくぐり、謁見の間に向かう。


 今後の魔王討伐について以前国王に要望していた事について、そして今後についての話なのだろう、とレヴァイは思っていた。


 何度となく国王にナックル、チェイスの難点を指摘し、連携の強化のための特訓をする時間、または人員の増加を求めてきたのだ。国王もしぶしぶ、ナックルとチェイスの実力を測り判断すると言って来た。


 現状パーティーで魔王城攻略は不可能と分かってくれるだろう。そう考えると今国王に頭を下げるくらいはどうという事は無い。


「勇者レヴァイ、陛下の招集に応じ参りました」


「ふん。検査官、まずは現在の勇者パーティーの戦力を確認した結果を話すが良い」


 検査官と呼ばれた男が一歩前に出る。この検査官をナックル、チェイス、グレイが護衛し上級ダンジョンに潜る事で3人の実力を確認して来たそうだ。


「はっ! ご報告いたします! 現在の勇者パーティー、ナックル殿、チェイス殿は間違いなく最上位ランク、一部の隙も無くこれ以上無いほどの人材かと。グレイ殿はギリギリ最低ランクより一個上のランクだとは思いますが、純ヒーラーの中では最上位と考えられます」


「えっ!?」


 ナックルとチェイスが、最上位の人材? レヴァイとしても弱いとは思ってはいなかったが、少なくとも敵をしょっちゅう討ち漏らす戦士と途中で矢を使い切ってしまうスナイパーに下す評価とは思えない。混乱するレヴァイをよそに、検査官が言葉を続ける。


「ナックル殿は並居る強敵をバッサバッサと切り伏せ、一度たりとも敵を討ち漏らすような事はありませんでした。チェイス殿も矢を十分に温存し、的確なスナイプで敵を倒しておりました。この2人が居れば人員の増強は不要でしょう。この期におよんで戦力増強を求める人物が居れば……無能と判断せざるを得ません」


 レヴァイは内心、焦っていた。あくまで今回はありのままの姿を見せ、あわよくば戦士か格闘家あたりの戦力を追加してもらいたかったのだが……。


「と、ところで陛下。一つ質問よろしいでしょうか?」


「うむ。許可する。何なりと申せ」


「グレイ……ヒーラーが最低ランクをギリギリ上回るレベルというのは……?」


 確かに魔王城では動きに精彩を欠いていたとはレヴァイも思ってはいた。だが最上級回復魔法が使えて最低ランクとは一体……


「グレイ殿に関しては冒険者でなくヒーラーですから、先に進むに連れて体力が持たずにバテる場面が多々ありました。正直途中で足手まといではありましたが……ヒールの効果も高いのでギリギリ冒険者としては最低ランクは超えてるかと」


「冒険者では、ない……?」


 唖然とするレヴァイに対し、国王は深くため息を吐きながらねちっこく語り始めた。


「知らぬのか、やはり田舎者は……仕方ない我が教えてやろう。30分で5000ポン、これが何を意味する言葉か分かるか?」


 ポンとはこの国の通貨単位である。ちなみに普通の国民は1日1000ポンも稼げれば良い方だと言われているが……


「最上位回復魔法、キュアを使えるヒーラーが町中でヒール屋を開業した時の最低賃金といったところじゃ。30分で5000ポン、それを稼げるのじゃよ。もっとも、キュアを使えるようになるには何十年も回復魔法一筋で部屋に籠り修行をした者くらいしか使えないがの」


「そ……そんな……じゃあ、グレイは……」


「ヒーラー協会に無理を言ってキュアを使える一番の若手に声をかけてもらったのじゃ。もっとも、キュアは特定の大型魔道具を使って長時間かけて初めて使える物じゃがの。全く、何故旅の途中で使う事の出来る訳が無いキュアを求めるのかと」


 確かにナックルとチェイスが言っていた。キュアが使えるのがヒーラーである。だからキュアを使えないソイルはヒーラーとは言えない。


 その通りだ、そもそもヒーラーは「冒険者をする人間ではない」のだから。冒険者であるソイルがヒーラーとは言えないというのも正しいのだ。


「わ、分かりました。それでも、戦力増強のための追加人員を……」


「はぁ……30分で5000ポンを稼ぐヒーラーをわざわざ招集したのだ……どれだけの費用が掛かっていると思っている? これ以上お主の我が儘に支払う税など無いぞ。契約通り、お主が個人的に雇うのも禁止じゃ。我も勇者を支援しなかったと思われるのは癪だからの」


 結局のところ、国王より許可された期間は人員の追加については許可を得られずグレイの体力を鍛える数か月の猶予を許可されただけであった。


「のうレヴァイや、お主ももう30歳だったかの。もうそろそろ勇者を引退したいとは思わぬかね?」


「いえ、私は魔王を倒す勇者として生き、勇者として死ぬ所存です」


「そうじゃな、お主が死んだ方が遺族(・・)は遺族年金で幸せに暮らせるじゃろうからな」


「くっ……」


 既にレヴァイには遺族は居ない。勇者の剣の所有権が王国にあり、これを継ぐために王国と契約を交わしたのだ。


――命を張る者、その命散りし時は相応の年金にて遺族に報いる、と。


 暗にムダ金使いだから止めろと言ってきているのだ、だが……レヴァイは魔王討伐の勇者から降りる訳にはいかない。


 魔王は、俺の手で殺す!!

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