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第十三話 新鮮なお肉

 周囲から見るとケイヴがあまりに無謀なクエストを受けたように見えた事だろう。だがケイヴにも事情と言うものがあった。


――勇者パーティー魔王城攻略開始


 失敗はしたものの、この一報はケイヴの心を乱すには十分であった。


 勇者パーティーが魔王城に向かったという事は、もしかしたらタイムリミットは思ったより早いのかもしれない、そう思わせる程度には。


 救いなのは、ミーシャとセレーナの成長が予想以上に早いところだろうか。


 セレーナはあっという間に回復魔法と攻撃魔法を覚え、ミーシャの剣での戦い方も上達した。


 後は実践のみ、とったところだ。


 そもそも魔王城ともなれば、ダンジョン難易度で区別するどころではないさらに上の位にあるものと想定すべきだろう。


 恐らく勇者パーティーが魔王城攻略に再度取り掛かるまでは、最短で1か月といったところか。


 ケイヴは考えていた。仇討のためにパーティーメンバーとなった3人であるが、現時点で実力がなければいくら成長が早かろうが連れていく事は出来ない。


 なのでミーシャ、セレーナにとって今回のクエストは高難度であるのと同時にクリアしなければならない最低ラインなのだ。



 3人は中級ダンジョン中層までやってきた。


「お、思ったより行けるわね」


「そ、そうだね、お姉ちゃん。これも師匠に鍛えてもらったおかげだね!!」


 2人は息も絶え絶えではあるものの、とりあえず中級ダンジョン中層程度であればそれほど危なげなく突破出来ている事にケイヴはホッと胸を撫で下ろす。


 実際、このレベルで脱落してもらっては困る。本番はここからだ。


「さて、いくぞ」


 ケイヴはダンジョン中層から下層に突入し、その後ろをセレーナ、ミーシャと続く。


 下層に到着し、3人はダンジョンを探索する。すると……


「グルルルルル」


 目の前に現れた怪物、それは獅子に蛇と翼を生やした怪物……


「キ、キマイラ・マンティコア!!」


 セレーナが驚きのあまり悲鳴に似た声を上げる。その声に反応したであろうキマイラ・マンティコアがケイヴ達を視界に捉え、そして襲い掛かる。


「ガァァァァァ!!」


 キマイラ・マンティコアが大きく跳躍し、先頭に居たケイヴに向かって降下してくる。一気に首に食いつき一気に命を奪おうとしているのだろう。


 対するケイヴは解体用のナイフは持っているものの、基本は丸腰である。かといって今の姿は素手での戦闘が得意な姿ではない。強敵相手では刃が立たないだろう。


――だがそれは「強敵」だった場合である。


 勇者パーティーとして魔王四天王のダンジョンに出てくる敵にもヒーラーとして素手で殴り合った身としては、戦士として中級下層モンスター程度は敵ではない。


「たぁ!!」


 飛びつきで隙だらけになったキマイラ・マンティコアに対し、ケイヴは飛び膝蹴りを放つ。その膝はキマイラ・マンティコアの獅子の顔面にクリティカルヒットし


「ガァァァ……」


 と一撃のうちに撃破する。残されたのは元キマイラ・マンティコアだった素材の山と、呆然と突っ立っているミーシャとセレーナ。


「ケイヴ……貴方一体……」

「師匠、すごいです!!」


 ミーシャは驚きのまま、セレーナは目を輝かせてケイヴを見ている。


「いや、ミーシャとセレーナも今からやるんだぞ?」


 ケイヴはすぐさま解体用のナイフで解体を始める。今までケイヴは素材解体屋を暗殺したことはないので、素材解体屋に変身は出来ないものの技術はそれなりの物を持っているのだ。


 イヤイヤと青い顔をして嫌がるミーシャとセレーナを横目にケイヴがさっさと解体を終えるが、解体が終わってもミーシャとセレーナが青い顔で顔を横にブンブンと振っている。


 どこかケイヴは安心していた。自分が1撃で倒してしまった事からモンスターに対して2人が油断してしまう可能性もあったのだが、どうやら油断はしていないようだ。


 だがここで止まる事も許されない。一人一殺、セレーナは確かに厳しいだろうから助力を得てもいいが、立ち向かう勇気くらいは見せて欲しい。


「そうか、じゃあ2人がキマイラ・マンティコアに挑むまではここに住む事になるな」


 首を横に振る2人の首が止まった、しかし、顔は青いままだ。いやむしろ顔色は青すら超えて紫になってきている。


「食事なら……ちょうどここに新鮮な肉が」


 ケイヴは解体して残ったキマイラ・マンティコアの肉をポンポンと叩く。その様子を見てミーシャとセレーナは


「ひぃぃぃぃぃ!!」


 と悲鳴を上げるのだった。



「ガァァァァァ!!」


 魔物に対し、ミーシャは単独で斬りかかる。


「やぁぁぁぁ!!」


 動きの速さだけでいけば既に一流の剣士をも上回るレベルに見える。


「グァ、ガァァァァ!!」


「くっ!!」


 攻撃を受けた魔物がそのままミーシャに食らいつこうとするが、ミーシャはすかさず飛び退き距離を取る。


「ふむ、機動性や観察眼は高いレベルだな。攻撃によるダメージは弱めに見えるが……まあ、問題ないレベルかな」


 ケイヴはミーシャの動きをそう分析する。その横でセレーナは


「ほえー、お姉ちゃんすごい」


 と呆けたような感想を言っている。


「負けられない!! 負けられないのよ!! 私はあんな、あんなお肉食べたくないのよ!!」


 鬼気迫るミーシャがそう叫びながら、魔物を1体撃破した。

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