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第十二話 生活費を稼がないと

 ケイヴ達が特訓を始めてから数日。街に長期滞在をするという事もあり、3人でお金を出し合って家を借りた。


 長期滞在をするのなら宿を取るよりも家を借りた方が安上がりなのだ。


 最初はケイヴが全額出すつもりだったが、ミーシャとセレーナがそれでは申し訳ないという事で、とりあえず半分ずつ出すという事になったのだが、ここにきて問題が出て来た。


「……生活費が厳しくなってきたか?」


 前のように暗殺の仕事をしようにも、暗殺の仕事は師匠からの斡旋で受けており、勇者パーティーに潜入するタイミングで師匠とは別れたために今は暗殺の仕事を受ける術がない。


 さてどうしたものかとケイヴが居間でうんうんと考え込んでいると


「ケイヴ、どうしたの?」


 ミーシャが声を掛けてきた。ふとケイヴは気になった事を確認する。


「そういえばミーシャ、お前たちの路銀は大丈夫なのか?」


「え、ええ、大丈夫よ」


 その反応にケイヴは察した。ミーシャたちもお金がちょっと減って来たようだ。


「じゃあ、稼がないとだな……よし!!」


 この時点でケイヴの考えはまとまった、冒険者登録して、冒険者の仕事をしよう。



 ギルドに冒険者登録し、ついでにケイヴは3人で受けられそうなちょうどよい(・・・・・・)クエストを探す。


「お、あったあった」


 そのままクエストの受注処理を進める。


 受付では「本当に大丈夫か?」というような目線を向けられたものの、そのまま受理される。金払いが良い代わり、冒険者なんて志望者も含め多数いる、替えの利く消耗品程度の認識なのだろう。


 ケイヴがふと見るとミーシャとセレーナは冒険者の男たちの群れにしきりに声をかけられている。


 確かに冒険者となると、どうも男の方が多いようだ。そんな中に美少女が2人も飛び込んでくればそうもなるだろう。


 女の色香というものは簡単に男を狂わせる、暗殺の際に女の色香というものを武器にしたことがある経験を持つケイヴは納得した。


 だが……とケイヴは思う。


「おいそこの兄ちゃんよ、てめえ、美少女2人を連れて調子乗ってるんじゃねぇぞ?」


 まさか男の姿のままで男から熱い視線を向けられるとは思っていなかった。


 まあ、男性好きの男性も居るからな、とケイヴは納得し、そのまま無視して出て行こうと……


「おいてめぇ!! 調子乗ってんじゃねぇぞ!!」


 ダンッ、とテーブルを叩くような音がし、そちらから大きな人影がズカズカと歩いてくるためケイヴはそちらを振り返る。


 周囲からは「ボスだ……」「ボスが怒ってる」「あの新人終わったな」といったような囁きが、どうやらこの冒険者ギルドの中でも一目置かれている存在らしい。


 その男は確かに大男だが……ケイヴは思う。勇者パーティーの戦士ナックルほどではない。


 大きさもだが、実力もだ。いや、ナックルと比較するのすら烏滸(おこが)がましい。


 過去の記憶を掘り起こしてケイヴがどのように相手の実力を例えるか、と考えた所、このようになった。


「ふむ、ギリギリ戦士並の知力とヒーラー並の攻撃力、それにスナイパー並の防御力はありそうだな」


「こ、この野郎!! バカにしてんじゃねぇ!!」


 ケイヴが過去に暗殺をした対象は勇者パーティーに召集されるレベルの人物なので、ギリギリでも比較対象にされた事を喜ぶべきかもしれない。


 ボスと呼ばれたその大男は手に持った斧をケイヴに振り下ろす。


「前言撤回、戦士並みの知力も無かったか」


 そう呟くとケイヴは目にも止まらぬ速さで大男の足元に滑り込む。そのまま足を引っかけ体勢を崩した後に、飛び上がり後ろから体当たりをする。


「うおっ!!」


 大男は前のめりにケイヴに襲い掛かっていたため、そのまま前方に勢いよく倒れ、床と抱き合う事となった。


「全く、こんなところで武器を使うとは……殺されても文句は無いんだな?」


 ケイヴは殺気を少し出しつつ倒れた大男に近寄る。


「ひ、ひぃぃぃぃ!!」


 大男はケイヴの殺気に気が付き、へたり込んだまま後ろにズルズルと下がる。


 内心ケイヴは安堵した。大男が「この程度の殺気は気が付いて欲しい」といったレベルの殺気には気が付いてくれたようだ。


 殺す事にはためらいはないし、しばらくは暗殺稼業が無いから目立つことも別にどうでもいい。


 問題は、冒険者ギルドから殺人犯とされてしまう事で仕事が受けられなくなる事である。


「ま、待ってくれ!! あんたの実力は分かった!! だけれども、あんたの受けたクエスト、それはあの娘達にはまだ早いんじゃないか!?」


 どうやら大男も最初は、クエストレベルの高さを忠告しようとしただけのようだ。ケイヴは首をかしげるが、すぐに考えても無駄な事だと考える事を止めた。


 ケイヴの中の疑問であった「何故大男は怒ったのか」については、彼の中ですぐさま「どうでもいい事」となった。


「そうだな。あの二人がここで終わるなら、そこまでという事だ」


 ケイヴはそう言い捨てると、ミーシャとセレーナの方に向かって歩く。


「おーい、クエスト受けて来たぞ。さっさと出発するぞ」


「ししょ……じゃなかった、ケイヴさん。一体どんなクエストを受けて来たんですか……?」


 セレーナが不安そうにケイヴにそう問いかける。大男とケイヴの会話が聞こえていたのだろうか、不安そうな目でケイヴを見つめている。


「ああ、ただの動物の素材回収だ、ほら」


 ケイヴはミーシャとセレーナにクエストの内容を見せるが、ミーシャとセレーナの顔がだんだんと青ざめていく。


 その依頼書にはこう書いてあったのだ。


――中級ダンジョン下層に分布するキマイラ・マンティコアの盗伐と素材回収 5匹分


 この世界のダンジョンは下級、中級、上級と3つのランクがあり、そのうちの上級は勇者パーティー等のほんの一握りしか攻略出来ないため、こういう冒険者ギルドの掲示板には掲載されない。


 そのため冒険者ギルドではダンジョン攻略系のクエストは自然と中級と下級のクエストを受ける事となるが、中級ですら到達出来ずに冒険者生活を終える冒険者も珍しくない。


 その中の下層、ともなればほぼギルド最高難度のクエストといっても過言では無い。


「あ、ちなみに目標は1対1で1殺な」


「「え、えぇぇぇぇ!?」」


 ケイヴが何事もなくそのような事を言うので、ミーシャとセレーナは驚きのあまり叫び声を上げた後にしばらく放心するのであった。

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