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もう、隠さない

 結界障壁が解除された道路上には、瀕死状態のロベルトが横たわり、そこから少し離れたところに立会人のリズが腰を抜かしてぺたんと座っている。

 魔女殺しの英雄たる勇者と、そのパーティで荷物持ちをクビとなったおっさんとが決闘の末、勇者が負けるという衝撃の光景を目の当たりにした観衆は声も出せずに、しばらく呆然と立ち尽くしていた。


 やがてパーティの連中が駆け寄り、救護班を呼ぶ声が飛び交うようになって、ようやく観衆に(どよ)めきが広がっていく。


 冒険者ギルドの屋根の上には、そんな怒声とも悲鳴ともとれる観衆の声を聞きたくないのか、セシルが耳をふさいでうずくまっていた。


 彼女の肩が震えている。

 思い返せば、セシルにはこれまでもおかしな言動がみられていた。それは魔女の森で、俺の回復薬を飲ませたことが原因なのだろう。

 今もこうして、自ら発した破裂魔法によってロベルトを瀕死状態まで追い込んだことに戸惑い、震えているのだ。


 理屈は分からないが、これは俺の責任ってこと……なんだよな。


 結局――


 俺に関わる女は、みんな不幸になっちまうんだ。

 魔女の子に生まれた呪いなのかな?

 俺は何のためにこの世界に転生してきたんだろう。


「……なあフレア。俺、もう一度下へ行ってくるよ」


 繋いだ俺の手をクイッと引っ張り、金髪美少女が上目遣いで見上げてくる。


「レン、このまま森へ帰るんじゃなかったの?」


「その前にやることができたんだ。なーに、すぐに済むから二人でここで待っていろ」


 すると、ぷくっと頬を膨らませて金髪美少女がそっぽを向いた。 

 こんな状況でなかったら、抱きしめてやりたくなるんだがな。



 ▽



「目を開けろロベルト! 死神に魂を持っていかれちまうぞーッ!」

「回復系の上級魔道士はもういねーのか!?」

「ありったけのポーションを飲ませろ!」

「くそっ、この街に出回ってるポーションは不良品ばかりなのかよっ!」

 

 ロベルトを取り囲むように、パーティの連中が騒いでいる。

 ローブ姿の魔道士が6人がかりで回復魔法を唱えているが、彼が死に向かう速度の方が勝っているらしい。

 こんな状態で普通のポーションなんぞ飲ませても、効果があるわけがないだろう。


「――ちょっと道を空けてくれないか?」 


「うっ、レンか!?  てめぇー、何しに来やがった!」

「おい、あの女はどうした? くっそー、あの女こそ魔女だったんじゃねーか?」

「そうか! 神官のふりをして俺たちに近づいて来たのか!」

「俺たちバーティを恐れて、寝首をかくために!」


 いやいや、お前ら想像力が逞しすぎるだろ! 

 この街の連中に感化されやがったのか。


「よく聞けー! セシルは俺の能力で魔法力が開花したんだ。そしてロベルトを倒せと彼女に命令したのは俺だ!」


「なに? ――って、荷物持ちのおっさんのお前に、そんな力があるわけがねーだろ!」

「セシルを連れてこい! 俺らがミンチにしてやんよ!」

「その前に、俺たちを騙してきた罪を償ってもらうけどなぁ~」

「ぐへへ、たっぷりと可愛がってやるぜぇ~」


 あーあ。パーティのリーダーが死の瀬戸際に立たされているというのに、本当にたくましい奴らだ。


「もう一度言うが、セシルは俺の命令でロベルトを倒した! そしてセシルの魔法力は俺の能力で開花させた! だから、セシルは俺がもらう!」


「はっ!?」 

「ふざけんな、荷物持ちの分際で!」

「てめえを先にミンチにしてやんよ!」


 ……まあ、そうなるわな。

 我ながら、説得力もあったもんじゃない。まるで論理が破綻している。


 だが、俺はもう隠さないと決めたんだ。



「このポーションなら、瀕死の状態のロベルトでも、あっという間に治療することができる!」    


 俺はポケットから出した薬瓶を高く掲げ、声を張り上げた。


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