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地下通路

「おっちゃん、オレっちのパパを知ってんのか?」 

 

「ああ。ついさっき冒険者ギルドで会ってきたばかりだよ! くそっ、あの忌々しい小太りおやじめ! 思い出すだけで胸くそ悪くなるぜッ!」


 思わず愚痴をこぼしてしまったが、リズは怒るどころかプッと吹き出して、


「あはははは、それは否定しないけどさぁー、ああ見えてもパパは仕事だけはできる人なんだぜ? なんせ、ギルドマスターに登り詰めたぐらいだからね!」


 と、人差し指を立ててウインクした。


「……そこで提案なんだけど、その子をうちの店に入れてくれれば、おっちゃんを冒険者ギルドで優遇して貰えるように、パパに頼んでやれるんだけど、どうだい?」


 おおーっ! って一瞬前のめりになってしまったが、それは咳払いをして誤魔化すことにする。

 

「だから、俺とフレアは親子ではないし、俺たちには事情があってこの街に長く滞在する訳にもいかねーんだよ。だからもうこの話は終わりだ!」


「ちぇっ、つまんないなぁー。でも、オレっちは絶対に諦めないから! なあキミ、この分からず屋のパパの気が変わったらいつでもウチに来て良いんだからねぇー?」


「わかったのー」


 だからフレアも考えなしに返事をするなって!

 そんな馬鹿なやり取りをしているうちに、店の外がやけに騒がしいことなっていた。


「いけねえ、オレっち警備隊に通報してそのままだったー!」 


 リズは頭を抱えた。

 ドアを少し開けて外を見ると、エンジ色の制服を着た男達が店の周りを取り囲んでいた。


「困ったな……俺たちは捕まる訳にはいかねーんだ。取り調べなんかされると、いろいろとマズいことになるぞ……」


「なら、店の奥に工場の倉庫に繋がっている地下通路への階段があるから、そこから逃げるといいよ。なーに、礼ならそのうちその子からタンマリもらい受けるから気にすんなって!」


 白い歯を見せて爽やかに笑うリズだが、余計な一言が加えられると素直に礼を言う気が失せるよな。


「それからおっちゃんが探している女神官は、冒険者ギルドに向かうって言っていたから行ってみるといいぜ!」


「ぼーけんしゃぎるどいくぅー!」


「また美味いもん食えると期待すんじゃないぞ?」 


 結局、俺とセシルは行き違いになっちまった訳か。

 俺はため息を吐きつつ、フレアの手を握り店の奥に歩き出す。


「でも、今頃は街の英雄さまの歓迎会で、ギルドは大騒ぎかも知んないけどな。魔女を討伐した勇者の話、おっちゃんも噂は聞いているだろ?」


「まあな……。なあリズ……お前も魔女が死んだと喜んでいるのか?」


「ん? なぜそんな質問をしたんだい?」


「あ、いや……技術者としての立場のお前ならば、他の連中とは違った感性をもっていのかなと思ってな……。あはは、余計なことを言っちまった。今のは忘れてくれ!」


 俺としたことが、フレアの手に触れているときに魔女討伐の話題を耳にして、少し感傷的になっちまったようだ。

 だが、そんなことを会ったばかりの女に言ってどうする? 俺もまだまだ若造なんだ。


「魔女なんかがいるから戦争が起きるんだ! 魔道具の技術は戦争のためにあるんじゃなく、平和のために使われるべきなんだ! 世界に魔女なんていなければ、戦争は起きなかったんだ!」


 語気を強めて熱く語るその声は、街の人々の考えそのものなのだろう。

 だから、俺は彼女を責めるつもりも、誤解を解くつもりもない。


 ただ俺は、フードの上からフレアの耳をふさぎながら、地下通路への階段を降りて行った。


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