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父と娘

 機械から突き出たパイプからは、赤青黄の三色の煙がもくもくと出ている。

 俺には一体これが何のための機械なのかは見当も付かないが、自ら天才と名なるリズが、3年もかけて製作した魔道具だ。相当に珍しい物なのだろう。


「うおぉぉぉーっ、うごいたァァァー!! 何で何で? 燃料も入れていないのに何で? どうしてあんたが触っただけで何で魔道具が動き出した!?」


 リズは機械とフレアの間を交互に見ながら叫んでいる。


「あんたその歳で魔道士の格好をしているけど、本当にただの魔道士なのかい? ――はッ! さては……きみは天使かい?」


 そいつ、魔女なんだけど……

 その当の本人は、リズが何を興奮しているのかも分からないらしく、ボケーっと見上げている。


「いや、オレっちは技術屋だ。そんなメルヘンチックなことを言っては駄目だ。ここは技術屋らしく、技術的見知で考えなければ!」


 アゴに手を当てて、うろうろ歩き始めるリズ。

 

「魔道具の燃料はエーテル。そのエーテルの原料は魔物から採れる魔石。魔物が魔力を含む植物を食べることで、胃の中で少しずつ石のように固まっていったものが魔石――」


 ブツブツと一人語りを始めている。


「つまり、燃料のエーテルも元を辿れば魔力に行き着く。だから、魔道士の魔力をそのまま燃料タンクに注ぎ込んで魔道具を動かすことも原理的には可能なはずよね?」


 だが、そんなことが本当に可能なら、とっくの昔に世界中の魔道士が大もうけしているんじゃないだろうか。

 おそらくは、魔女の魔力は人間の魔道士のそれとは別の性質を持っている。


「ねえキミィ~、うちの店で働かないか~い?」


 ピンク色の作業着を着たリズが、ローブ姿のフレアにすり寄っていく。

 何だかそのセリフ、変な店のスカウトが女の子を勧誘しているみたいな感じになっちゃいねぇーか?


「はたらくのー」


 いやまて、なぜフレアはそこで快諾するかッ!

 お前は王国からの使者を散々蹴散らした恐ろしい魔女だろッ!

 

「待て待て待てーっ! そういう話はマネージャーを通し――いや違う、俺を通してくれないと困る! そもそも俺たちはこの街に長居する訳にはいかない事情があるんだ!」


「その事情とは?」


「うっ……と、とにかくッ、こいつはただの魔道士で、機械に触れて動き出したのは単なる偶然だから――」


「ねえキミ、今度はこれに触れてみて」


「わかったのー」


「ダァァァ――――ッ それ以上機械に触るんじゃねェェェーッ!」


 フレアの身体をヒョイと高く持ち上げ、ギリギリのタイミングでリズが差し出した魔道具から遠ざけさせる。

 まったく油断も隙もあったもんじゃねぇーぜ!


 すると、リズはアゴに手を当てて、白い歯を見せた。


「ははーん、そういうことか……さてはその子、おっちゃんの連れ子だな? で、おっちゃんは奥さんに逃げられちまって、女神官の尻を追いかけているんだろ! どうだ、ズバリ言い当てただろ? オレっち天才ィィィー!」


「この街の人間は、みんな妄想力が(たくま)しすぎだろッ!」


「でもなぁ、おっちゃん。親の価値観で子供を縛り付けちゃあいけねーよ? オレっちもさあ、職人になる夢を叶えるために、この店で働きたいといっても、なかなか許しがもらえなくてよぉー……」


「ほう、どこの世界にもいるんだな、頭の固い親が……」


「でもさぁ、子は親の所有物じゃないんだ。だから何でも思い通りになるなんて考えは捨てなよ! 自分の子供の可能性を否定しちゃいけないんだよー? ギルドマスターをやってるオレっちのパパだって、最後はちゃんとオッケーしてくれたんだからよ!」


「お、お前、あのギルドマスターの娘かよ!」


 ちょっと良い話を期待しちまったじゃねーか!



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