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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
95/754

27.校外学習二日目【不穏な動き】

※7/28 すみません。UPして早々、サブタイトル【】の中、変更しました。

7時38分ころ、変更しています。


 ――ふと、自分はどうなのだろうと、カイルは思った。


 オリビアもアルフィードも、自身の伴魂と信頼関係を築いている。


 自分は――。


「――様、フィーナ・エルド様」


 不意を打って聞こえた声に、過去の記憶に思いを馳せていたカイルは、ハッと我に返った。


 声の方を見ると、騎士姿の男が、椅子に座ってくつろいでいるフィーナに声をかけていた。


(――――?)


 騎士の男を見て、カイルは眉をひそめた。


「王女様が協力を願いたいとお呼びです」


「そうなのですか?」


「――ちょっと待て」


 席を立って付いていこうとするフィーナを、カイルが止める。


「え?」と首を傾げるフィーナを見ることなく、カイルは騎士の男を注視していた。


「――姉上は何とおっしゃっていた」


「いえ、私は内容までは伺っていませんので……。

 連れてきてほしいと頼まれただけです」


「所属と名は」


「ガーヴィス隊所属、ニック・クラントと申します」


 答える騎士に、側にいたカイルの護衛騎士、アレックスが「――確かです。顔も見知っています。本人に間違いありません」とひそめた声で進言する。


 だが眉をひそめて「――今回、同行しているとは思いませんでしたが」とも付け加えた。


 セクルト貴院校生徒の護衛騎士は、オリビアが統率をとっている。オリビアが受け持つ騎士団だけでは到底足りないので、他の騎士団にも要請して、編成していた。


 そうした関係で同行しているのだろうが――彼が所属する騎士団は、オリビアとそれほど親しくないので、要請を頼んだとは思えなかったのだ。


 カイルも騎士団の上層部は記憶している。


 末端は入れ変わりが激しいので、全てを把握しきれていない。


 カイルがいぶかしんだのは「オリビアが呼んでいる」というのに、オリビアが受け持つ騎士団の者ではなかった点だ。


 オリビアの騎士団員は全て把握している。


 オリビアの性格上、自身の騎士団の者を派遣しそうなものなのだが――。


 現にサリアもジェフも、応援を請われた際、オリビア所属の騎士の者が迎えに来ている。


 そうしたカイルの疑念を感じたのだろう。


 フィーナを呼びに来た騎士は戸惑いつつ、事情を話した。

 オリビアも彼女統括の騎士団面々も、手が離せない状態らしい。無理をすれば行けるのだが、受け持っているものが中途半端になるので、仕方なく近くにいた彼に頼んだという。


「――アレックス」


 フィーナに同行するよう促すと、アレックスはカイルの意向に伴い、すぐ動こうとしたのだが、呼びに来た騎士に慌てて止められた。


「そんな、王子の護衛騎士の方を――。

 王子の警備が少なくなります」


「大丈夫だ。もう一人いるし、生徒も徐々に帰ってきている」


「しかし、それでもしものことがあれば、私が咎められます」


 その可能性はあったので、カイルも強く出ることができなくなった。


 そうした問答を、フィーナが不思議そうに見ていた。


「カイル? 私なら大丈夫だよ。

 コースは地図を見なくても覚えてるし、迷子にはならないから」


 道に迷う心配をされているのだと思って、へらりと笑うフィーナに、カイルはあぜんとした。


「お前が――」


(――お前が以前『伴魂を狙われたことがある』と言ったんだろ)


 珍しい伴魂を狙うとすれば、地位も金銭も持っている輩だろう。


 珍しい伴魂は、基本、貴族籍の面々が取得している。


 貴族籍には手出しできないが、市井の民で珍しい伴魂を取得していれば、強硬手段で取り上げる輩がいると、カイルも噂で聞いていた。


 噂では聞いていたが、スーリング祭でフィーナの過去を聞くまでは眉つばの話だと思っていた。


 フィーナの話で、実際に存在するのだと思って、すっと足元が寒くなったのを覚えている。


 その後、フィーナの伴魂が想像以上に注目を集めていること、暗躍が想定される輩が存在する現状を耳にしていた。


 そうした状況なのだが、フィーナが「大丈夫」という以上、カイルも口出しできない。


(騎士団の一員だというから、下手なことはしないだろうが――)


 フィーナはスーリング祭にも参加していて、国王とも面会している。


 国王はフィーナをよく知らなくとも、珍しい伴魂に関しては記憶に残っているだろう。


 国王は契約済みの伴魂の強奪を快く思っていない。


 国王の意向は貴族籍には広く知られていた。


 そうした国王の意向を知りながら、貴族籍の人間が、フィーナの伴魂を強奪するとは思えないが――。


 騎士団に所属していると言うことは、身元も確かなのだろう。アレックスも見知っているのだから、身元に関してはより確実だ。


 自身のことを知られた上で、下手なことはしでかさないだろうと希望的に思いつつ、カイルはなぜか違和感を拭えなかった。


 胸の内にくすぶる感情を抱きながら、迎えに来た騎士に連れられる伴魂を伴ったフィーナを見送ってしばらくしたとき、アレックスの元に慌てた騎士の一人が駆けつけた。


 アレックスも、どうにも「おかしい」との違和感が拭えず、近場にいた騎士に、今回派遣された騎士の確認をとっていたのだという。


 慌てた騎士の返事を聞いて、アレックスも顔色を変えた。


「――殿下っ!」


 アレックスがもたらした情報に、カイルも顔色を変えた。


 ――フィーナを連れ立った騎士は、今回、校外学習に派遣された騎士リストの中に名がなかった。


 ざわりと総毛立つ感覚に息をつめて、カイルは反射的に叫んでいた。


「アレックス、レオロードっ!」


 自身の護衛騎士の名を呼んで、フィーナの後を追おうとしたカイルを「いけませんっ!」とレオロードが止めた。


「エルド嬢を追ってはなりません!」


「どけ、レオロード!」


 怒鳴りつけて、レオロードの脇を通り抜けて無理矢理フィーナの後を追おうとしたカイルを、今度はアレックスが行く手を遮った。


「なぜ止める!」


「そりゃ止めますよ!」


 告げるアレックスもフィーナを気にしているらしく、二人が行った方向に目を向けながら、焦りをにじませている。


「身元が確かな、同行しているはずのない騎士がこの場にいるんですよ! 

 何かあったら疑われても仕方ないのに行動に移している。

 先のことを考えずに行動しているとしか思えないじゃないですか! 

 そうした人間は何をしでかすか、わかったものじゃないでしょう!」


「だったらっ! フィーナが危ないだろう!」


「ええ、確かにっ! 

 確かにそうですっ! 

 けど俺たちは殿下の護衛騎士です! 殿下の安全が第一なんです!」


 アレックスは真面目一辺倒のレオロードと違い、気さくな面も有している。


 許容範囲内なら目をつぶってくれることも多々あるアレックスが、カイルの行為を許さない状況に、緊迫度合いが高いのだと知れた。


 カイルを止めながらも、アレックスもレオロードも、フィーナを案じて、近場にいた騎士や生徒を通じて、オリビアに状況の伝達を頼んでいる。


「エルド嬢を追って、殿下にもしものことがあれば、エルド嬢の立場も危うくなるのですよ!?」


「俺が勝手にしたことだっ! フィーナには関係ないっ!」


 それでもフィーナの後を追おうとするカイルを、アレックスとレオロード、カイルの行動を止めることを請われた近場に居た騎士数人で、行動を封じた。


「どけっ!!」


 叫びは虚しく、フィーナの後を追おうとするカイルは、動きを封じられていたのだった。




やっと!!!

書きたいところへたどり着きました!!!!

スーリング祭で書きたかった流れと少々異なりますが。

第三章の佳境となる部分です。

今も下書き書きながら、想定してた筋書きと異なりつつ、話が勝手に進みつつ(笑)。

……といった感じです。

勝手に動いてくれるので「あれ、そうなるの?」と、自分でも驚きながら書いてます。

前回の「アルフィードの機転」もそうでした。

「え。そういうことするの。そういう流れにしちゃうの。どういう搦め手よ」と、自分でも驚くこと、多いんですよね。

オリビアが言った「卑怯」ってのは、ほぼ、私の心情でした。

……ってことで、佳境です。

下書き書き終えてませんが、上手く着地できるよう、がんばります。

(できなかったら手直し、時間かかる……(汗))

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