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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
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24.校外学習二日目【レクリエーション】


       ◇◇         ◇◇



 オリビアも、ある程度は想定していた。


 参加した運営陣が、好成績を叩きだすだろうと。


 想定したとおりの結果となったのだが、だからと言ってだ。


「なんでそんなに速いの?」


 朝食後、朝から一日がかりで取りかかる予定だったレクリエーションを、校外学習運営陣は、短時間で終えてしまった。


 朝から二刻で昼食となる。


 二日目の昼食は、鍛練場の調理人が準備してくれた軽食を持ち歩き、昼食時間になったら口にする手筈となっている。


 戦時には携帯した食物を口にすることもあり得る。


 騎士の面々も、そうした状況は多々あるので、セクルトの生徒にも経験させるために、校外学習のカリキュラムに組み込まれていた。


 騎士団が考えたレクリエーションは、通常、昼食をはさんだ四刻を想定していた。


 問題も多岐にわたったものを準備していたし、自然の場であるからこそ出された問題もあった。


 授業の一環なので、これまでセクルトで学んだ教科の中からも出題されていたが、ほとんどがセクルトで学ばない内容だ。


 学んでいないものの、日ごろから世情に関して注視していれば、わかりえる内容ではあった。


 問題の中には、誰も解けないだろうものも二つほど忍ばせていたのだが。


 それらが解ければ、想定している最短の時間で終えるだろうと、騎士団面々も考えてのことだったのだが――。


 まさか想定を上回る最短で終える輩が出てくるとは、オリビアも思っていなかった。


 オリビアも、生徒に配った問題は目にしている。


 オリビアも解けなかった問題があったので、手こずる生徒が出るだろうと思っていたというのに。


 最短時間で問題を解き終えた生徒は、鍛練場の広場に設けられた休息場で他の生徒を待つようになっていた。


 その休息場で、のんびりとくつろぐ校外学習運営陣を見て、オリビアは頬を膨らませ不機嫌を露わにした。


 側に来たオリビアに気付いた、校外学習運営陣の面々は、彼女が口にした言葉に互いに顔を見合わせた。


「終えましたが、正解数はわかりませんよ?」


 カイルが代表して答えたが、オリビアは全問正解だろうとわかっていた。


 問題の答えによって、行く先が変わるレクリエーションは、正解続きならば短時間で終了し、間違いが多くなればなるほど、終了が後方となるようにルートを作っていた。


 そうして作成されたもので、全問正解で工程を終える時間帯に、校外学習運営陣が戻ってきたのだ。


 これほどの大差がつくと、結果は目に見えている。


 おかしい。


 問題は多岐に渡ったはずなのに。


 手こずるはずなのに。


 そう思っていたオリビアだったが、ふと、運営陣の面々を眺めて、あることに気付いた。


 思って、手元にあった問題用紙を眺め、運営陣の面々と見比べる。


「ねぇ――」


 運営陣に、カテゴリの異なる問題を投げかけてみる。


 財政面に関してはサリアが答え、騎士に関する問題にはジェフが答え、歴史に関してはカイルが答え、ライフハック的、山での雑学にはフィーナが答えた。


 オリビアは手で顔を覆った。


 最短然り。


 それぞれが得意分野が分散されていて、班員の構成上、多種多様な問題に対処できるようになっていたのだ。


 盲点だった。


 カイルとフィーナは付き合いが長いので得意分野は想定できたが、サリアとジェフの存在が、オリビアには想定外だった。


 よくよく考えれば気付いたはずなのだ。


 サリアがあの大臣の娘である事を考慮すれば、財政面に詳しくてもおかしくないし、ジェフは見た目から「騎士志望」とわかる態度で体の鍛え方も一生徒の域を超えている。


 騎士を目指してのことであれば、納得のものだった。


「つまんない」


 不機嫌に頬を膨らませるオリビアに、運営陣面々は如何ともしがたく、苦笑を浮かべるしかなかった。


 そうして他の生徒が終えるのを待っている間、サリアとジェフが、それぞれ応援を頼まれて席を離れた。


 オリビアも本来、待機するべき場所に戻ったため、生徒待機場にはフィーナとカイルだけになった。


 手持無沙汰になったカイルは、明日の行程表を眺めている。


 周りに人がいないことを確認して、フィーナはおそるおそる口を開いた。


「……もう、大丈夫なの?」


 唐突な会話の切り口に、カイルは眉をひそめてフィーナを見た。


「……何が」


「……いろいろと」


 フィーナもカイルの調子が普通でなかった状況が「何が原因でなぜそうなったのか」わかっていない。


 この場にサリアやジェフが同席していれば「触れるな」とフィーナでも気付く遠回しの発言をしただろうが、今は二人とも席をはずしていた。


 サリアとジェフが同席していなかったものの、カイル自身も自分が普段と異なる行動をとっていた認識は持っている。


 ……それがアルフィード起因であり、想い人の妹に心配されるのは複雑な心境であったが、小さく息をつくと「もう大丈夫だ」と答えた。




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