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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
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22.校外学習初日【夕食】


 午後の授業を終え、それぞれ割り当てられたコテージに赴き、普段着に着替えた後、食堂での夕食調理と食事となる。


 夕食もフィーナが提案したレシピとなっている。


 こちらはそれぞれ用意された野菜を適当に切って鍋に入れ、用意された調味料を鍋に入れて煮込めばいいようになっている。水の分量さえ間違えなければ、おかしな料理にはならない。


 パンは基本、市井でも貴族籍でも、購入が基本なので、今回も日常生活に則って、運営陣で準備していた。


 既に切られた野菜数種を、少なめの分量通りの水を入れて煮込み、規定量の牛乳を加え、最後に用意された白い固形物を入れる。固形物が溶けて全体的にとろりとした感触になれば出来上がりだ。



 フィーナは昼食時も思ったのだが、生徒の半数以上は、事前に渡されたレシピを元に、練習をしていないのではないかと思えて仕方なかった。


 今回は「側仕え許可」が出ていたにしても、生徒一人一人の取り組む認識が低いように思えて仕方なかった。


「誰かがしてくれる」「誰かに任せればいい」


 貴族籍生徒の良からぬ体質が、その点に現われていた。


 自分自身が動こうとしない点に、フィーナは前々から苦い思いを抱いていた。


 夕食も昼食と同じく、そこかしこから悲鳴が上がっている。


 本来は具財を切ることもレシピにあったのだが、昼食時の様子を見るに、ナイフで手を切る生徒が多出するのではとの懸念があったことから、アールストーン鍛練場所属の調理人に頼んで、事前に具財を切ってもらう変更を行った。


 変更してよかったと運営陣は思う。ナイフを扱う手がおぼつかず、見ている側がハラハラする場面も多々あったのだ。


 昼食時は慣れないことであたふたしている面々を「楽しそう」と眺めていたフィーナだったが、あまりにも不慣れな様子に、眉をひそめてしまう。


「今年は賑やかね」


 警備の関係から、オリビアを筆頭とする警護統率陣も、同じ食堂で食事をとっている。


 ここ数年、校外学習に同行しているオリビアには、一学年生とはいえ、過去と比べてお粗末に見えているだろう。……班編成の内情を知らないために。


 ただそこは、フィーナ提案「これまでに見たことない料理」であるため、生徒達は手こずっているのだと思っているようだった。


 運営陣は早々に食事を作り終えて、席についている。


 校外学習運営陣と警護統率陣の食事の席は近い。何かと連絡を密にしておきたい事情で、思い立った時にすぐ話ができる状況にしていた。


 警護統率陣の席にも、食事が準備されている。彼らの食事はアールストーン鍛練場所属の調理人が準備した。生徒とは食事内容が異なるはずなのだが……。


「あの……」


 と、フィーナはオリビアや警護統率陣面々の前に準備されている料理を見て、おずおずと切り出した。騎士団の仕事の際、オリビアは騎士としての扱いになるので、直接話しても構わないそうだ。


「なぜ私たちと同じ料理なのです?」


 確か、警護統率陣とは料理は別だと聞いていたのだが。


「え? 食べたかったから」


 フィーナの言葉に、オリビアはけろりとして告げる。


 フィーナは慌てた。


「いやいやいや。王女様が口にするには質素すぎる料理ですから。何も手の込んだことしてないし、具材切って煮て、調味料入れただけですから」


「でも食べたかったし」


「調理の方が別の料理を準備してくれてたでしょう?」


「でも食べたかったし」


「えーと……ですから、王女様が口にするには庶民的すぎて……」


「でも食べたかったし」


「だから……」


 何を言っても「食べたかった」との返事を繰り返すオリビアに、フィーナも困り果てた。


 簡単に作れる物が大前提なので、質素過ぎて申し訳ないのだ。


 止めるフィーナに、オリビアは寂しげな表情を浮かべた。


「カイルが『初めて経験する味』って絶賛してたんだもの。そんなの聞いたら、誰だって食べてみたいと思うでしょ?」


「え?」


 驚いてカイルを見ると、カイルはサッと顔を背けた。一瞬、バツが悪そうな表情を浮かべていたのが見えた。


(そんなこと、言ってなかったのに)


 料理対決の時に口にしたときのことを言っているのだろう。驚いた顔をしていたが、気にいってくれていたとは思わなかった。


「それにアルも食べたがってたし」


 統率陣にオリビアがいるので、側仕えのアルフィードも同行している。側仕えなのでオリビアの側に控えているが、共に食事はとっていない。後でとるのだろうが――。


「え?」と、またまた初耳のことに驚いて姉のアルフィードに目を向けると、こちらもバツが悪そうに、さっと顔を背けた。


 そう言えば。とフィーナは思い出す。休息日、実家に帰って来た折、口にしたことがあったっけ。好んでいるのは見ていてわかったが、オリビアに話すほど気にいっていたとは知らなかった。




次の話で料理名が出てきますが、料理はシチューです。

食材として、バターはある、小麦粉もある、牛乳もある。

けれど料理としてシチューはない。そうした世界観です。

シチュー……。自分で作る時、以前はルーを使用してたんですが、最近は「バターと小麦粉(ホワイトソース作って)とコンソメがあればできる」と思ってから、それで作るようにしてます。ホントはコンソメ入れたほうが味はいいんですけど、コンソメ……作るの時間かかりすぎるしなぁ。(作ったこと、ないし。顆粒や固形のコンソメにお世話になってるし。)

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