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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
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20.校外学習初日【レクリエーションの提案】


 運営陣班は、早々にサンドイッチを作り終えて、食事をしていた。


 模範となるべき立場でもあるから、事前に料理の練習も行っていた。


 ……何度も練習が必要なほど、難しいものではなかったのだが。


 事前準備のおかげもあって、どの班よりも先んじて空腹を満たすに至っていた。


「いい思い出……に、なるの……? ……あれが……?」


 訝しげにつぶやくサリアに、カイルも同様の表情を浮かべていた。


「なるなる♪」


 軽い調子で断言するフィーナに、カイルもサリアもジェフも疑念を持っていたが、深く追求はしなかった。


 カイルは一時期の落ち込んだ様相から立ち直って、通常仕様に戻っていた。


 カイル自身に、落ち込んでいた時期の認識があるかどうかは不明だが、そこは踏み込まなくてもいいだろうとの運営陣の認識なので、敢えて触れていない。


 通常仕様に戻ってくれたことに、フィーナもサリアもジェフも、安堵していた。


「最終確認なんだけど――」


 手早く食事を終えた運営陣は、翌日の日程を確認し合った。


 二泊三日の校外学習二日目は、運営陣が考えたレクリエーションを行うことが通例となっている。


 レクリエーションはその年によって異なる。


 いくつかの班に分け、運動、魔法等の成績を班ごとで競う年もあれば、全生徒が出された同じ課題にそれぞれ取り組み、タイムアタックを行う時もある。


 珍しいものでは勝ち抜け形式の、問題解き対決もあったという。出題される問題は、勉学に限らず、日常知識から計算問題、地理や特定の地域の者でないとわからないものなど、多岐に渡っていたらしい。


 レクリエーションは何にするかの話になった時、問題形式がおもしろそうだと、話がまとまりかけていた。問題自体は生徒から一人数問ずつ募り、教師陣からも一人数問ずつ提出願おうとしたとき、フィーナが「……そう言えば」とふと、口にし、「こういうの、どうかな?」と告げたのが、事の発端だった。


        ◇◇        ◇◇


「最初に皆に同じ地図と回答用紙を渡しててね。

 歩くコースが決められてるの。

 その途中途中にチェックポイントがあって、数字なり記号なり割り振られてて。

 そこには問題が書かれた用紙があって、答えは選択制になってて。

 1の答えを選んだら、次のチェックポイントは「う」へ、2の答えを選んだら「さ」へ。

 ……とか、答えによって、行き先が違ってね。

 回答用紙に書き込んだ答えが合っているかどうかは、戻ってきてから答え合わせるするの。

 同時に、タイムアタックも兼ねてて、正解が多ければ早く帰ってこれる。

 時間と正解が多い班順に順位が決まるとか――」


 そこまで言って、フィーナは言葉を止めた。


 カイルもサリアもジェフも、目を丸くしてフィーナの話を聞いていた。その表情は驚きだけではない。なぜそのようなことを考え付くのかとの、畏敬の念も少なからず感じ取れた。


(まず……っ!)


 焦った。


 向けられた表情で思い出した。


(これって伴魂が言いだしたヤツだ……っ!)


 中児校時代、伴魂が提案した遊びを元に、フィーナやマーサ、ジークやクラスメイトと共に手を加えていったものだ。


 ルートや問題など「誰が考えたものがおもしろかったか」「難しかったか」など、教養を兼ねたものとして遊んでいた。


「し……知らない? ドルジェではやってたんだけど……」


 驚く三人に、焦った風体で話すと「市井の一村民間ではやったこと」として理解を得られた。


 ことの始まりは伴魂からで少々状況が異なるのだが、理解はすんなりと得られた。


 フィーナの提案から、興味を持った三人の意向で、こうしてレクリエーションが決まったのだった。


       ◇◇        ◇◇


 レクリエーションでは、山岳地帯の一角を使用して、自然の中で行おうこととなっていた。


 校外学習の理念に基づいて、通常の教科以外の、実践的なものや生活に基づいたもの、緊急時の知恵も問題として含まれた。


 危ない場所ではないと言っても、山の中の散策のため、騎士団の面々による「ルート監視」が必要だろうと思われた。相手は貴族の子女子息。獣道があったとしても、わからず、外れた道を行きかねない。


 オリビアに相談すると「おもしろそう」と嬉々として賛同してくれた。騎士団の面々も、興味を引いたらしく「こうした問題はどうか」との提案までしてくれる。


 結局、ルートも問題も、オリビアが統率をとる騎士団が考え、運営までしてくれることとなった。


 ……してくれる、と言うより「任せろ」と奪われた感が強い。


 接するうちに、彼らの思惑はそれなりにわかったので、深く追及することなく、任せることにした。


 騎士団に所属する面々は、ほとんどがセクルトの卒業生だ。


 警護につく彼らは、同じ学び舎で勉学を経た先達者として、多少ながらも矜持を持ちたいのだ。


 ……というのは建前で、世間の荒波も何も知らない後輩が、自分たちが準備した場で、わーきゃー騒いで右往左往する様を、先輩として遠巻きに眺めて楽しみたいのだろう。





フィーナが提案したレクリエーションは「ウォークラリー」を参考にしています。

小学生、中学、高校と経験して、おもしろかった記憶があります。

どういった形式かはうろ覚えなんですが……。

問題より、宝探し的なおもしろさがあったような……。


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