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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
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18.班編成【打開策】


 今度は同席している教師に判断を仰ぐ。


 教師は戸惑いつつ、自分一人では判断できないと、懸案事項として教師陣に持ち帰ることとなった。


「警護の騎士の統率は、オリビア様が担当されているのよね?」


 サリアはカイルに確認する。


 カイルは頷いた。


「だったら」とサリアは続けた。


「カイルは反対の意向であったでいいわ。

 私たちが嘆願書を教師陣に提出して、教師陣が認めてくれたのなら、話が進めやすいのですけれど――先ほど話した、班編成を懸念してでもいいです。

 セクルトとしては、学び舎として生徒たちの状況を考慮して、許可したのだとすれば、他からの理解も得られやすいでしょう。

 カイルは反対していた。

 私たちは要望があったから、教師陣に嘆願書を提出した。

 教師としては一部生徒が苦慮する可能性を見過ごせなくて、許可した。

 カイルは知っていたら反対しただろうから、許可が下りたことすら知らない。

 教師としても、校内で運営する事項だからカイルに許可を得る必要も報告義務もなく、警護に影響があることさえ知らないから、カイルに伝えていない。

 側仕えが同行すると知らなかったオリビア様がどう判断されるかは――当日、判明するでしょうね」


 サリアがつらつらと口にする提案事項を、付き添い教師がぽかんとして聞いていたものの、はっと我に返ると「そのように検討します」と返答した。


 ジェフはサリアの提案に、若干引いている。


「何と……腹黒い」


 最終的な判断事項はオリビアにかかっている。


 オリビアが状況を鑑みて、許可すれば側仕えも同行できるが、警護の面からして、想定外の人間は受け入れられないだろう。


 それより何より、伝え聞くオリビアの性格上、側仕えに身の回りのことを任せようとする考えを良しとするとは、接点のないジェフでさえ思えなかった。


 十中八九、オリビアが当日確認する時点で、側仕えの同行は望めないのだ。


 最終判断をオリビアが下し、また、途中経過にカイルが関わっているものの、カイルの知らぬところで話が進んでいた。


「側仕えが同行してもいいと言ったじゃない!」


 ――との非難が運営陣に向けられても、運営陣は教師に判断を任せた。


 教師は良しとしたが、まさかのオリビアの「否」。


 オリビアもいたしかたない状況であれば許可するだろうが「自分でするのが面倒だから」との理由では許可するはずがない。


 そうした状況を見越しての、サリアの提言なのだ。


 ジェフはこの場に置いて、サリアを空恐ろしく感じていた。


(さすがあの大臣の娘――)


 と、知略家で知られる大臣との血の繋がりを感じたのだった。


 ジェフの発言に、サリアは「心外だ」とばかりに眉をひそめた。


「それは否のない者を策略にかける時に使って。今回は自業自得でしょう」


「え~と?」


 イマイチ理解が追い付いていないフィーナが、眉をひそめつつ首を傾げた。


「結局、どうなるってこと?」


「自分で努力しようとしなかった人に、皺寄せが来るってこと」


「そっか。なら仕方ないね」


 理解しきれていないのに、サリアの言葉で全てを了承するフィーナに、他人事ながらジェフが慌てた。


「ちょっと待て。それでいいのか?」


「え? 何が?」


 不思議そうに首を傾げるフィーナに、本当にそう思っているのだとジェフが感じて、戸惑いを禁じえなかった。


「……さっきの説明で、わかったのか?」


「うん」


「……どんなふうに?」


「自分で頑張ろうとしなかった人が、苦労するってことでしょう?」


「……俺達、運営陣がしたことは?」


「先生への嘆願書の提出」


「カイル殿下は?」


「反対してたけど、知らないうちに通ってた」


「……非難の行先は?」


「頑張らなかった人」


「違――」


「ジェフ」


 フィーナとの問答の途中で、冷やかなサリアの声が割って入った。


 うっすらと頬笑みを浮かべているが、冷笑がそこはかとなく恐ろしくて仕方ない。


「フィーナも理解しているのだから、変に混乱させないでもらえるかしら。

 フィーナにも全てを理解してほしいのなら、それでも構わないけれど、うるさ――、もとい、しつこい「どうして」攻撃はジェフが対処してね」


「大丈夫だ、フィーナ! 間違いない!」


 サリアの言葉に、ジェフは細部までの説明を放棄した。


 主軸が間違いなければ、大丈夫だろう。


 フィーナの「どうして」攻撃がどれほど粘質的かは知らないが、自ら進んで関わりたいとは思えなかった。


 非難の矛先。


 それは最終的な判断の場所にオリビアが存在することによって、煙に巻いている構図となっている。


 運営陣は教師陣に、教師陣はオリビアに。


 それぞれ決定権を委ね、もしくは反論できない形をとっていた。


 異論がある生徒としても、王族に文句を言えるわけがなかったし、「自分の身の回りのことは自分で」が校外学習の目的でもあるのだから、根底を反故している事項で反論しても、説得力などあるはずがない。


 貴族籍の生徒としても、突発的に王族が否と下したものの責任を、教師に向けたりはしないだろう。


 事前に話をつけてなかったのかの点に関しては、警護騎士とのやり取りをするカイルが反対しているのだから、相談した事態で却下されているのは目に見えている。


 だからこそ、敢えて相談しなかったのだろうと、生徒としても想像できた。


 そして――誰もがよくよく考えれば、結果的に「側仕えの同行が認められない」状況に成り得ると、想像できたはずなのだ。


 そうした点も加味して、一所に非難が集中するとは思えなかった。


 カイルもある程度、状況を理解しているようだったが「知らなかった」との態度をとることとなった。


 後に「側仕え同行許可」の話が噂で広がり、それに伴い、班編成変更を受け付けると通達すると、変更願いが次々と提出された。


 ラナも当初の班から変更となった。後に、アルフィードの礼儀指導時に共に学んだ生徒との班になれた、当初、望んでいた班員だと嬉しげな表情でラナは告げた。


 そうしてアールストーン校外学習の準備が着々と進んでいったのだった。

 



 

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