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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
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13.カイルとオリビアの事前打ち合わせ【オリビアとアルフィード】


 魔力なら常日頃、微量ずつながら伴魂に提供しているはずだ。


 オリビアの考えを察したように、アルフィードは首を横に振った。


「日常の糧ではなくて。伴魂の体調が良くないときに……」


 言いながら、アルフィードもどう説明すればいいのか、わかりかねているようだった。


 けれど、オリビアにはアルフィードの言わんとしていることがわかった。


 わかったが、なぜとも思う。


「それで、よくなるの?」


「応急措置としては……何もしないで時間がかかるより、数段――ましなのよね?」


 最後は伴魂に尋ねて確認をとっている。


 理屈はわかるが、なぜとオリビアは不思議でならなかった。


「どうして、そんなこと知ってるの」


 聞かれて、アルフィードは一瞬、答えに詰まりつつ、もごもごと話した。


「私の伴魂も、怪我をしたことあって……。

 あの時は有無を言わさず、こっちに伺いもなく、強制的に魔力を取られたんだけど……。

 ――わかってる。

 ひどい傷だったんだろうけど、一言言ってくれてもよかったんじゃない? 

 ……とにかく、伴魂の怪我には効果あるんだけど……提供する側は気持ち悪くて、数日寝込むだろうから、魔力提供を進めるわけではないんだけど……伴魂が怪我の治りは格段によくなるし、危篤状態は免れるだろうから。

 ……ただ、与えすぎ、取られ過ぎには気をつけて。

 取られ過ぎると、今度は主の命が危なくなるから……」


 考えずとも、オリビアの答えは決まっていた。


「フィービーが助かるのなら、教えて」


 オリビアの言葉を聞いて、アルフィードも覚悟を決めると自分が行っていた方法を伝えた。


 感覚としては魔法を使う際の魔力の流れを、伴魂に送る感じだという。


 伴魂が受け取ってくれれば魔力の供給となるし、伴魂がそれに便乗して、魔力を求めてくる場合もあるので気をつけるようにとも言われた。


 魔力提供の適量は、経験で得ていくものなので、初めは調整が難しいという。


 オリビアの伴魂は体格が小柄なので、魔力を取られすぎはないだろうが、何があるかわからないものだ。


 アルフィードに言われたように試してみると、途中から内臓の奥を探られる感覚に、気持ち悪さを覚えた。


 伴魂に魔力を吸われていると、感覚的に思えてすぐ、ふっと意識が遠のいた。


 視界が暗くなる中、「しっかりして!」と呼びかけ、周囲に助けを求めるアルフィードの姿が見えていた。


 その後、アルフィードの助けに応じて王宮の者が駆けつけて、オリビアを介抱した。


 同時にオリビアの伴魂も伴魂専門の伴医の元に運ばれ、事なきを得た。


 オリビアとアルフィードが親しくなったのには、そうした経緯がある。


 かいつまんだ話しながら、オリビアとアルフィードの話を聞いて、カイルは驚きを隠せなかった。


 オリビアとアルフィードの初めて対面した状況にも驚いたが、兄である第一王子の行動が信じられなかった。


 獅子の伴魂を、体格的に不利な小動物の伴魂にけしかけるなど……。


「兄上はいったい、何を考えて……」


「悪気はないのでしょうね。弱いから悪いと思っているくらいでしょう」


「そんな……」


「そういう方なのよ。……残念ながらね」


 確かに、第一王子には「力が全て」と思っている節がある。


 力だけが全てではないとの考えが、オリビア、カイル姉弟の見解なのだが、兄にはそうした考えがないようだった。


「――あなたも、気をつけなさい」


 静やかな声で告げるオリビアに、カイルは驚きを隠せない。


「姉上?」


「表立ったことはしないだろうけれど……そうね。

 伴魂が傷つく不測の事態もありえるから、アルから伴魂への魔力提供の方法を、聞いておくのもいいかもね」


「ま……待ってください。それではまるで兄上が――」


 兄上が、危害を加えようとしているように聞こえます――。


 言葉は、最後まで声にならなかった。


 カイルの声に出来なかった思いは、オリビアも想定できた。


「誰も兄上がとは言っていないわ。

 いつ、どこで、何があるか、わからないから。

 知っていて無駄な知識でもないし。

 ……アルが手をとって教えてくれるのよ?

 心惹かれない?」


 からかうようにほくそ笑むオリビアに「話を逸らさないでください」とため息混じりに答えて「考えておきます」と返事をしておいた。


 アールストーン校外学習時の、警護の打ちあわせのはずだったが、最後の方で思わぬきな臭い話になったことに、カイルは怪訝に思いつつ、結局、姿を現さなかったアルフィードを残念に思いつつ。


 そうして騎士団の鍛練場を出ようとした時に、アルフィードの声を耳にした。

 

 

王族兄弟の関係性がほの見えたかなぁ。と思ってます。

そして、オリビアとアルフィードの出会い。

これも校外学習の打ちあわせで明かす予定ではなかったんですが、話の流れでこうなりました。

オリビアと第一王子の伴魂も、書ける機会あってよかったです。

シマエナガ。

画像を挿絵として添付しようかと思ったけれど「挿絵とは違うかな」と思ってやめました。

実物。見てみたいです。

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