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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
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12.カイルとオリビアの事前打ちあわせ【オリビアの伴魂】

※7/13

「アールストーン校外学習」を第三章としました。それに伴い、サブタイトルの章タイトル数、タイトル名、ちょこちょこ修正しています。



 オリビアはそこで笑みを消した。


 冷やかな声で告げられたのは、カイルも知らなかった事柄だった。


「兄上の伴魂をけしかけられたの」


「兄上の?」


 ぎょっとするカイルに、オリビアは息をついて頷く。


「あの頃は時折、癇癪を起されていたから。

 私の伴魂が弱々しいから鼻についたんでしょうね。

 稽古をつけてやるとか何とか、急に言い出して。

 周りも止める間もなくて、私も何もできなくて。伴魂が逃げるので精いっぱいだったわ」


「それはそうでしょう。……体格差がありすぎる」


 普通に考えれば、子供でもわかることだ。


 第一王子の伴魂は、主と同じ大きさほどもある獅子、かたやオリビアの伴魂は片手に収まる大きさの小動物だ。


 獅子は遊びでじゃれついているつもりでも、相手となる小動物は遊びでは済まない。命の危険さえある。


 そうして逃げ出した伴魂は、オリビアがいくら呼びかけても怯えて呼びかけに答えてくれなかった。


 伝わってくるのは、ただただ恐怖だけだった。


 城の者も使って探したが、なかなか見つからない。


 伴魂自身が身を隠しているので、捜すのも困難を極めていた。


 加えて、伴魂の体が小さい事も、困難さを増していた。


 そうした時、オリビアの伴魂を見つけたのがアルフィードだった。


「これっ! あなたの伴魂!?」


 泣きそうになりながら、植木側を捜しているオリビアに声をかけたのが、アルフィードだった。


 アルフィードはオリビアを知らなかった。


 当時、アルフィード、オリビアともセクルト校の一学年生だったがクラスが違っていた。


 アルフィードはオリビアの存在は知っていたが、見姿は知らなかった。


 王女が同じ学年に在籍していること、それがオリビアという名だとは知っていたが、自分には関わりないだろうと思っていたのだ。


 突然、声をかけられたオリビアも、事態が事態なだけに細かな礼節にはこだわっていられなかった。


 涙目で振り返ったオリビアに、額に汗を浮かべて肩で息をする上がった呼吸で、アルフィードが手の中の物を見せる。


 急いで駆けてきたのだと、様相から判断できた。


 そのアルフィードの手の中で、弱り切ったシマエナガがぐったりとしていた。


「フィービー!」


 オリビアは伴魂に名前をつけていた。


 伴魂に名前をつけるのは珍しくない。


 シマエナガは、綿毛のような毛並みが特徴的な小鳥だ。


 丸い体型につぶらな瞳、小さな嘴が愛らしい小鳥だった。


 その綿毛のように白くふわふわとした毛並みは、泥にまみれて汚れている。


 ――それだけでないと、アルフィードが教えてくれた。


「――怪我をしているみたい」


「え……?」


 言われて確認すると、確かに泥に混じって鮮血が見受けられた。


 ぞっとするオリビアに、アルフィードは「意識が混濁しているみたい」と容体が芳しくないと伝えた。


「なぜわかるの」


 恐ろしさで声が震えるオリビアに、アルフィードは肩に止まっている自身の伴魂に目を向けた。


 朱色の美しい羽を持つ鳥を見て、オリビアが相手が誰なのか悟った。


「アルフィード・エルド――」


 彼女の話は、珍しい伴魂と市井出身者ということで何かと話題に上り、耳にしている。


 オリビアのつぶやきはアルフィードの耳には届かなかった。


「なぜ」と聞かれて、アルフィードはそれについて答えていた。


「――この子が、そう言ってるの。伴魂同士だからなのか、わかるみたい」


 そこでアルフィードがオリビアの伴魂を見つけた経緯を話した。


 セクルトの校舎内に居た時、アルフィードの伴魂が「危ない」「大変」等、何やら騒ぐので、連れられるまま足を向けた先の木の茂みの奥で、シマエナガの伴魂を見つけた。


 傷を負った姿に驚いて、主を捜した。


 側にいると思っていたが、人影すら見当たらない。


 主を捜すアルフィードに、伴魂が「こっち」と案内してくれて、伴魂に導かれるまま、オリビアの元にたどり着いたのだと言う。


 オリビアがいたのは王宮内だ。


 本来ならセクルト校舎から直接入れるはずがないのだが、この時はそこまで考えが及ばなかった。


 何にしろ、助けてくれたのだ。


 だが、傷ついた伴魂を前にして、オリビアは気が動転していた。


 すぐに伴魂専門の伴医に連れて行こうとしたが「待って」とアルフィードに止められた。


「なぜ」と視線で問うと、アルフィードは自身の伴魂に目を向けた後、緊張した面持ちで口を開いた。


「――時間がかかると、間に合わないかもしれないって……」


「――そんな」


 おそらくオリビアの伴魂は、獅子の伴魂の爪か牙で傷を負ったのだろう。


 逃げるさなか、傷はひどくなったのではないかと思われた。


 真っ青になって震えるオリビアに、アルフィードは迷いつつ、口を開いた。


「――伴魂に、魔力を与えたこと、ある?」


「……え?」


 オリビアにはアルフィードの言っている意味がわからなかった。




オリビアの伴魂、シマエナガ。

かわいい小鳥です。

写真でしか見たことないんですけど、実物見てみたいです。

ネットで検索して頂ければ、想像がしやすいかと。


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