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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
79/754

11.カイルとオリビアの事前打ちあわせ【アルフィードへの想い】

※7/13

「アールストーン校外学習」を第三章としました。それに伴い、サブタイトルの章タイトル数、タイトル名、ちょこちょこ修正しています。



「……そう」


 カイルの答えに、アルフィードはふわりと微笑んだ。


 頬を紅潮させ、やわらげに微笑むアルフィードに、カイルの胸の鼓動が跳ねあがった。


「あなたのこと、大事にされているのね」


 アルフィードの言葉に、カイルは目を瞬かせた。


 美しい伴魂を褒めそやす言葉は幾度となく耳にしたが、両親が自分を思ってのものだとの言葉は聞いたことがなかった。


 親が子を想うのはごく一般的なことなのだが、伴魂から両親の思いを感じることを、カイルは聞いたことがなかった。


 年を聞かれて、来年、小児校に入るのだと答えると、アルフィードは少し驚いていた。


「フィーナと同じ年巡りね」


「『フィーナ』……?」


「妹よ。……フィーナも、あなたみたいにいい伴魂が見つかればいいけれど」


「……これがいい伴魂か?」


「見知らぬ私が側にいて怯えているけれど、あなたを心配して、頑張って側から離れないでしょ」


「……伴魂なら、それが普通だろう」


「……いいえ」


 アルフィードはゆるりと頭を横に振った。


「伴魂とて生物に変わりないから、危険を感じると逃げてしまうの。

 たとえ主に危険が及んでいたとしてもね。

 危険だとわかりながら主を助けようとする伴魂は、そうそういないわ。

 あなたの伴魂は怖がってるけど、主を心配して、懸命にこの場に留まっているの。

 ……本当、いい子ね」


 アルフィードがカイルの伴魂に手を伸ばしたのは、無意識の行動だった。


 美しい伴魂、そして主を思いやる伴魂。


 カイルの伴魂が止まっている枝位置では、アルフィードの手は届かない。


 カイルとアルフィードを見ていた伴魂の行動も、自然なものだった。


 ふわりと羽を広げると、すいっと羽ばたいてアルフィードの肩へと降り立つ。


 驚くアルフィードの頬へ頭をすり寄せ、くるる、と喉を鳴らした。


「え、ええっ、えええっ!?」


 基本、伴魂は主以外に懐かない。


 その伴魂の行動に、アルフィードは慌てふためいた。


 手を伸ばしたのは無意識の行動で、伴魂に触れるとは思っていない。


 それが伴魂からの思わぬ歩み寄りだ。驚かずにはいられなかった。


 カイルも自身の伴魂の行動に驚いていた。


 臆病な伴魂が気を許すだけでなく、自身の体を預けるのは、相当の信頼を寄せての行為だ。


 驚いていたカイルだったが、それも伴魂から伝わってきた思いで何となくだか理解した。


「誉めてくれたのが嬉しいらしい」


「美しい」と賛辞を送られる伴魂だったが、口にする人々の真の思いを、カイルと同じく伴魂なりに感じ取っていたようだ。


 アルフィードの純粋な賛辞を嬉しく思い、心を開いたようだった。


 アルフィードは戸惑いつつ、カイルに触ってもいいのかと伺いをたて、了承を得てからそっと伴魂に触れた。


 伴魂はくるる、と喉を鳴らしながら気持ちよさそうに目を閉じていた。


 その後、アルフィードを捜す声で彼女はその場を離れた。


 後にオリビアを通じて紹介されて、アルフィードとカイルはお互いを知る事になる。


 アルフィードはカイルが第二王子と知って青ざめたが、カイルはオリビアの手前、初対面で通した。


 カイルの意図に気付いたアルフィードも、カイルに合わせて初対面で通した。


 後にアルフィードはカイルに無礼を謝罪した。


 それからカイルは、アルフィードの逸話を耳にすることとなる。


 そうした話やオリビアを通じて接するうちに、アルフィードへの思いが募っていったのは確かだが、やはりカイルにとって、アルフィードへの思慕を抱いたのは、自分の伴魂を認めてくれた時だ。


 あれ以来、伴魂に対する気持ちも接し方も変わっていった。


 相変わらずの気弱ぶりには頭を抱えることも多いが、気が弱いくせにカイルを心配する時は懸命に前に出ようとする。


 ――雄々しいだけがいいわけではない。


 誰が言っていたか忘れたが、そうした気持ちも少しだがわかるようになっていた。


 オリビアにアルフィードと自身の伴魂の話を、かいつまんで話すと、オリビアはゆっくりと頬を緩めた。


「そうだったの」


 言いながら、くすくすと笑っている。


 気弱な態度が消えたのはいいが、何だかからかわれているように思えて、カイルは憮然とした。


「何がおかしいのです」


「いや~。兄弟だなぁ。って思ってね。

 ――私もよ。

 アルが伴魂を助けてくれたから、今の私があるの」


 オリビアの伴魂は小さく、危険が及んだ際、自身で身を守るのが困難なため、普段はオリビアの自室に隔離している。


 伴魂と常に行動をとることが通常であるこの世界において、必要以外、部屋の外へは出さないようにしていた。


「……昔、伴魂の居所がわからなくなって、騒動になったことがあったでしょう?」


「……そういえば……」


 言われれば、そうしたことがあったような気がするが、はっきりとは覚えていない。




前回に続いて、カイルとアルフィードの出会いです。

ぼんやりとは考えていたんですが、思わぬところでその場を出すこととなりました。


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