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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
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9.カイルとオリビアの事前打ちあわせ【カイルの過去】

※7/13

「アールストーン校外学習」を第三章としました。それに伴い、サブタイトルの章タイトル数、タイトル名、ちょこちょこ修正しています。



 そうした状況を理解して、カイルは小さく息をついた。


「わかっているのでしたら、行うだけでしょう」


「……え?」


 ソファの上で膝を抱えて、項垂れていた頭をゆるりと上げながら、オリビアは弟に目を向けた。


 カイルはオリビアの意気のない瞳を見ながら、口を開いた。


「試されているのは姉上でしょう? 

 アルフィード様との繋がりを切ることなく、これまでと違った手法を試みてはいかがですか」


「……どんなふうに?」


「それはこれから模索していきましょう。

 まずは、アルフィード様を通した提言を聞かないことから始めてみては?」


 言ったものの、カイルは眉を寄せた。


「――それはそれで、言われたことをそのまま行動に移すだけのようで、何だか腹が立ちますね」


 うまく踊らされてる気もして、カイルは顎に手を当てて考えこんだ。


 そうした弟の様子を見たオリビアは、小さな笑いを漏らした。


 耳に届いた姉の小さな笑い声に、カイルは怪訝な面持でオリビアに目を向ける。


「姉上?」


 どうかしましたか。


 尋ねるカイルに、オリビアは緩やかな笑みを浮かべてゆっくりと頭を横に振った。


「うんん。

 ……ありがとう。話を聞いてくれて。

 後のことは私が考えるから。

 ……私自身の、ことだから」


 そう告げたオリビアに、弱々しい様相はもう見えなかった。


 いつもの凛としたオリビアだと感じて、カイルも安堵の息をついた。


 アールストーン校外学習の警護の件も話し終えているので、そろそろ帰ろうかとカイルが腰を上げようとしたところへ、オリビアが声をかけてくる。


「ところで……アルのどこが好きなの?」


 ……回避したはずの話題は、回避しきれていなかった。


「さきほども申したように……」


「さっきも言ったけど、ここだけの話にするから。約束は守るから。

 ……私は、私から見たアルフィードしか知らない。

 他の人が――カイルから見たアルフィードがどう見えるか、教えてほしい」


 真摯な眼差しは、からかう想いはないように見えた。


 カイルは戸惑い、迷った。


 第二王子としての自分の立場を考えると、軽はずみな発言はできない。


 オリビアの「秘密にする。他には言わない」との言葉を信じているが、告げた内容は記憶に残るだろう。


 何かしらの折に、思わず口をついてでる状況を、カイルは懸念していた。


 懸念しつつ、オリビアの苦悩も理解できるので、慎重に言葉を選んでいた。


 当たり障りなく、けれど真意が含まれるように――。


 カイルはオリビアを姉として慕っている。


 オリビアが初めてカイルに見せた弱音に、どうにか応えたい思いもあった。


 考えた末に出た結論は――事実を話すことだった。


「私の伴魂を――『美しい』と言ってくれたのです」


 出会いは偶然だった。


 オリビアとアルフィードがセクルト在学時に親しくなって、王宮の私室にも連れだって訪問することが増えたある日。


 当時、小児校に通う前のカイルがべそをかいて、私室から逃げ出して庭木に隠れていたところを、アルフィードに見つかった。


 正確に言うと、アルフィードはカイルの伴魂を見つけて、それに釣られた。


 庭木の陰にうずくまってべそをかくカイルの側木の上で、伴魂がおろおろしている。


 伴魂は魂の伴侶。


 話せずとも、感情は伝わってきた。


 泣いているカイルに「どうしよう、どうしよう」とあたふたしつつ「大丈夫? 大丈夫?」と心配している。


 伝わってくる感情は、カイルの神経を逆なでした。


「お前が弱いからっ! バカにされるんだっ!」


 第一王子である兄の伴魂は獅子だった。


 対してカイルの伴魂は、姿は美しいものの、強さを誇示できない鳥だ。


 第一王子と何かと比較されて、そのたびにカイルは忸怩じくじたる思いを抱えていた。


 加えてカイルの伴魂は、とにかく気弱だった。


 人前に出ることを怯え、主の側であろうと人の側には近寄ろうとしなかった。


 そうした伴魂を、周囲の人間は苦笑していた。


「仕方ない」と見つつ、第一王子の伴魂を褒めそやす。


 ――子供だからわからないだろう。


 その思いからカイルが近くにいても口にしていた事項は、全てが分からないなりにも真意はカイルに届いていた。


 先ほども、第一王子の伴魂を褒めそやし、カイルの伴魂を苦笑する。


 苦り湯を噛みしめて我慢することも、素知らぬふりで受け流すこともまだできない子供であった。




第一王子の伴魂が何か、初めての登場です。

今回のカテゴリには王族兄弟の関係性も盛り込んでます。

……意図せず、盛り込む形となりました。

そしてまさかのカイルとアルフィードに関しても。

んんん?

最初の構想では、ここでこの話の予定ではなかったんだけれど??

あれれ? 

そんなことが多くて、長くなった回です。

まだまだ盛り込まれてること、多いですよ~。

これからですよ~。

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