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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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127.精霊の寵児 46


 フリージアの両手を――自分の両手で包んで、引き寄せる。


 互いの息が触れあうほど近いゲオルクに、フリージアは目を見開いて――頬を赤らめた。


 フリージアの困惑を察しながら、ゲオルクは続ける。


「ジアが全てを背負う必要はないんだ。

 困ったら、相談すればいい。

 誰かを頼ればいい」


 ゲオルクの話に、フリージアは呆然とした。


 しばらくそうしたあと、ぽつりと声をもらした。


「……たよ…る…?」 


 ゲオルクの言葉を反芻するフリージアは、どこか遠くを――今、ここではない場所を見ていた。


 過去の出来事か、身近な者たちを思い起こしているのか――家族を思っているのか……。


 フリージアの表情からよぎった推測は――ゲオルクの意識に流れ込んだ、過去の情景が肯定した。


 両親、親族、教鞭をとる教師――。


 フリージアが彼らに助けを求めても「フリージアなら大丈夫」等と返される。


 意識に流れたフリージアの過去世は、アグロテウス視点のものだろう。


 アグロテウスも――他の精霊神たちも、フリージアの心情と周囲の状況に懸念を抱いていたが――人の心を真に理解しきれない彼らは、踏み込んだ行動を起こせなかった。


 強大な力を有するフリージア。


 ――神の庇護を受けるフリージア。


 力があっても、万能ではない。


 全てを完璧にこなせるわけではない。


 敵とはいえ――攻撃を受けたとはいえ。


 フリージアは見知らぬ者相手でも、傷を負う姿に心は痛むだろう――。


 そのフリージアを助けたいと、ゲオルクは思う。


「まずは戦線にならない防衛策を考えよう。

 他国民が領土に侵入しなければ、戦にもならない」


「けど……そんなこと……」


 呆然としながらつぶやくフリージアの言葉から、試そうとしたものの、上手くいかなかったと聞こえた。


 ゲオルクは、アグロテウスからの過去情報の意識流入で「人の手だけによるもの」の対策だったと知る。


 苦い思いを抱きつつ「精霊神達にも協力を頼むべき」と告げた。


 フリージアは「そんなこと、頼めない」と慌てて首を横に振ったが――。


「精霊神達は、寵児ディーバの願いなら喜んで受けるはずだ。

 私利私欲でなく、国を護るためなのだから。

 ――逆に。

 助けを乞われなかったことが理由で、寵児ディーバ――ジアが被害を受けるほうが、精霊神達にはつらいはずだ。

 彼らは――請われて答える存在だ。

 自分たちから提案できないんだ。

 ――例えば。

 村の子が、親の病状等、助けを求めようとしたものの、その子は「恐れ多い」と遠慮した。

 結果、親は息を引き取った――。

 ジアならすぐに助けられた症状だったのに」


「どうして……頼ってくれたら……」


 自然に漏れ出た自分の言葉で、ゲオルクが言わんとすることをフリージアは理解した。



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