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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
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6.カイルとオリビアの事前打ち合わせ


     ◇◇      ◇◇


 アールストーン校外学習は、王宮騎士団が所有する遠征施設で行われる。


 王族が受け持つセクルト貴院校の生徒が、王宮騎士団の所有物を一時的に借り受けるのは、関連上、何ら問題ない。


 しかし、現地に赴くのは貴族の子女らだ。


 そうした男女生徒らを警護するために、王宮騎士団の中からいくつかの班が同行する手筈となっている。


 護衛として派遣される騎士団は、オリビアがセクルト在学時より筆頭として統率を取っていた。


 カイルはアールストーン校外学習時の打ちあわせに、オリビアの騎士団を訪ねた。


 仕事の一環なのだと自身に言い聞かせながら、はやる気持ちを抑えられない。


 オリビアは自身の騎士団へ、足しげく顔を覗かせている。


 オリビア本人が鍛練を行うためでもあるが、所属する面々との対話を求めているようだともカイルは思っていた。


 オリビアが居る場所には、側仕えであるアルフィードも同席している確率が高い。


「仕事なのだから。オリビアと校外学習時の警護の打ちあわせを行うのだから」と自身に言い聞かせつつ、我知らず口元が緩んでいた。


 オリビアが統率をとる騎士団の修練場に着くと、事前の約束通り、オリビアも到着している。


 剣の修練の途中だったが、カイルに気付くと修練をやめて、弟の元へ足を向けた。


 近くに居た騎士の一人からタオルを受け取って汗を拭いつつ、来客室へと促す。


 側にアルフィードの姿はない。


「どうかした?」


 周囲を見渡すカイルに気付いたオリビアが声をかける。


「アルフィード様は、今日はいらっしゃらないのですか」


 訊くと、オリビアの口元が緩んだように見えた。


 目も細めて、何か言いたげな素振りを見せる。素振りを見せるが、口にはしない。


 カイルも人並みの神経は持ち合わせている。


 姉のそうした行動が意味するところにも勘付いていた。


(アルフィード様を慕っていると、気付かれてるのだろうな)


 多少の気恥かしさはあるものの、恥とは思っていない。


 オリビアも何も口にしないので、カイル自身も心情に関する話題を口にすることはなかった。


 カイルとしては、敢えて口にしないでいてくれるのはありがたくもある。


 ありがたいのだが……カイルの目の届かないところで「うふふ」とほくそ笑んでいるだろう姉の姿を想像すると……身の置き所のない恥ずかしさに苛まれた。


「今日は仕事で来たのだ」との大義名分を掲げつつ「運が良ければアルフィードに会えれば」とのささやかな思惑を、カイルは胸に秘めていた。


 残念ながら、鍛練場にアルフィードの姿は見当たらなかった。


「あれ?」とオリビアも首を傾げる。


「一緒に来たんだけどね」


 打ち合わせはアールストーンでの警護に関してなので、アルフィードは必要ない。


 鍛練場でどのように騎士を配置するか、授業や校外活動による生徒の行動範囲、それに伴う騎士の配置、配置する騎士の数やそれぞれの距離によって、セクルトへの要望等、話を詰めていった。


「来客室で打ち合わせするって伝えてたから、後で来るんじゃない?」


 生ぬるい笑みで告げるオリビアを視界に入れないようにしながら「そうですか」とカイルは平静を保って答えた。


 カイルの返事を受けて、オリビアの笑みが深まったのが、視界の隅でも確認できる。


「『誰が』とは聞かないのね」


「………………」


 しくじった。


 思いつつ、カイルは思わず、地図にメモ書きしていた手が止まってしまった。


 どう答えようかと考えているカイルに、オリビアが苦笑交じりに「ごめんごめん」と告げる。


「イタズラが過ぎた」


「……イタズラ、なのですか」


「そう。イタズラ」


 くすくすと笑う姉を、しばらく伺い見ていたカイルだったが、それ以上の他意はないと判断して、オリビアとの話に出た警備の配置に関して、地図に書き込んでいく。


 書きこまれていくカイルの手元を見ながら、オリビアが落ち着いた声音で、おもむろに口を開いた。


「……アルの、どこが好き?」


 静やかな声だった。


 声だけでなく、オリビアがその言葉を発したその空間、その時間。


 全てが清廉とした雰囲気に満ちている。


 オリビアの言葉に、再度、手を止めたカイルは、ゆっくりと顔を上げて姉に目を向けた。


 オリビアは静かに、カイルを見ている。


 そこからは何の感情も読み取れない。


 ただ、カイルの返事を待つオリビアが居るだけだった。


「……素晴らしい方だと、お伺いしていますので」


 オリビアがどういった意図で尋ねているのか計りかねて、カイルは対外的な返事を口にした。




やっと書き終わった~~~!!(校外学習の打ち合わせ分、話の区切りまで)

でも、書きたい主題が消化しきれてない……。

結構書き溜め分、できました。

まさか、こんなにかかるとは思ってませんでした……。

途中から「あれ? ここでこの話?」的なのが増えていったので。

オリビアとカイル姉弟の校外学習の事前打ち合わせです。

長くなるので、前後では収まらないので、数字をふってます。

7か8までは行っちゃう予定。

ふあ~~。長かった~~~。

恋愛要素もちょこっと踏み込んでます。

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