表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
721/754

94.精霊の寵児 13


 ゲオルクはファ・ディーンに定期的に来訪していると、縁者以外に隠していた。



    ――ファ・ディーンへの来訪は人には言わないように



 両親に何度も言われたし、招待に応じないのは、リージアの家、エルド家の意向だろうと思った。


 複雑な状況から、繋がりを持つ相手をルスター家一つに絞ったのだろうと、ゲオルクは思っていた。


 その選別の日と婚姻話がどう結びつくのか。


 困惑するゲオルクに、フリージアはおもむろにつぶやいた。


「あの日。

 私はそなたに惚れた」


「――――は?」


 思考が停止したゲオルクは、その後、初めて聞く――彼が知らなかった話を聞いたのだった。




「あの茶会の後、両親に聞かれたんだ。

 同席した子達に関して。

 私は即座に答えた。

『オズマが欲しいっ!』

 ――と」


(……ああ……)


 フリージアの言葉に、ゲオルクは頭を垂れて額と目を押さえた。


 思い起こせば、心当たりはいくつもある。


 茶会の翌年、フリージアはオズマと遊びたがり、それは数年続いた。


 さすがに「他人の伴魂とふれあうのはいかがなものか」とファ・ディーンの有識者に諭され、控えたものの――気落ちしたフリージアが気の毒に思えて、ゲオルクはこっそり、フリージアとオズマが触れ合える時間を作っていた。


 オズマが発端となり、フリージアとゲオルクの婚姻話が進んだということか。


「――そなたは……どうしたい」


 困惑を解消しきれない中、ゲオルクがつぶやく。


「……どう?」


 首をかしげるフリージアに、ゲオルクは続けた。


「想い人がいるのでは?」


 顔を伏せたままのゲオルクは、フリージアの表情が見えなかった。


 ――見るのが怖かった。


「それは――っ!」


 話そうとしたフリージアが、何かに気付いて言葉を止める。


 怪訝に思ったゲオルクが、フリージアを見上げた時には。


 馬上のフリージアは、東方面に厳しい眼差しを向けていた。



      ◇◇      ◇◇



「そなたに……隠し事はしたくない」


 フリージアは東方面に厳しい眼差しを向けたまま、つぶやく。


「婚姻話以外に、話していなかったことがある」


 フリージアは告げると、ゲオルクに乗馬を促す。


 朝の散策時、他の者とはぐれた理由を明かすと告げて。


 駆けるフリージアにゲオルクは続いた。


 ――途中。


   「オズマの解放を」


 告げたフリージアの言葉にも応じた。


 その時は「なぜ」と不可思議に思わなかった。


(共に早駆けしたいんだろうな)


 と、呑気に思っただけだ。

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ