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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
71/754

3.フィーナとカイルの調理対決

※7/13

「アールストーン校外学習」を第三章としました。それに伴い、サブタイトルの章タイトル数、タイトル名、ちょこちょこ修正しています。



 料理の課程も審査対象なので、面々は厨房で調理にも立ち合った。


 場所はセクルト食堂の厨房である。


 学生食堂の昼食を提供する場で、カイルのレシピを元に料理人が調理し、フィーナは自分で調理する手筈となっていた。


 調理を行う台には、それぞれ準備された食材が並んでいる。


 立ち合いの教師の「始め」の合図で、フィーナとコック、それぞれ料理を始めた。


 カイルのレシピは豆を煮たスープにパン、鹿肉をトマトベースのソースで柔らかく煮たものに目玉焼きだった。


 それは寮でも提供されるごくありふれた朝食だった。品数は多いが、一つ一つの量は少ない。


 自分が考えたレシピが調理される様子を見ながら、カイルは眉を寄せた。


 思った以上に工程が多い。料理をする際の、材料を切る、煮るの知識はあったカイルだったが、その他の肉の臭みを取る下処理や、香草を使ったひと手間など、これほど手間がかかっているとは思っていなかった。材料によっても火の通り具合に大きな差があるのが、何よりの想定外だった。


 豆のスープがメニューにあると知った際、調理人が戸惑いつつ「前日に水煮までしておきたい」と言った意味を理解する。それでは実践と違うではないかと眉をひそめたが、校外学習でも前日の夕食を作る際に、豆の水煮をしておけばいいと考えて、了承した。


 思いのほか時間がかかっている様子にカイルはやきもきしていた。慣れている調理人でも時間がかかるのだから、これが慣れていない生徒が行うとどうなるのか……。


 そうした懸念が頭をかすめたが、今のカイルが気になっているのは、フィーナの状況だった。


 フィーナが面する調理台には、いくつかの食材と一つが人の顔ほどの大きさのある大ぶりのパンが並んでいる。


 審査員の数、他、この場に居合わせる面々の数を確認して、パンの数揃えようとしたが、そこで首をひねっていた。材料は審査員の分しか用意されていない。


 それを見て、腕を組んで考えていたところ、何か思いついたらしく、調理室に控えている料理人に何か話していた。


 話しかけられた調理人は、戸惑い、自分で答えを出せないと考えたのだろう。


 おそるおそるカイルの元へ足を運んだ。


「あの……エルド様が、今用意されている倍の数のパンと、卵を余分に欲しいと言われているのですが……。その……殿下や私共の分も作るからとおっしゃって……」


 カイルは少々、考えあぐねいたものの、正直、フィーナが作るものが気になっていた。


 尋ねた調理人に「好きなようにさせろ」と告げると、ほっとした表情を覗かせた調理人がフィーナの元に戻って行った。


 彼から材料を受け取ったフィーナは、調理台に向かうと「よし!」と気合を入れて調理を始めた。


 調理台に並ぶ、円形の大ぶりのパンを左右に分けるように切る。それを更に上下に切って、結果、四分の一の大きさに分断した。そして上下に切り分けたパンの内側にバターを塗り終えると、野菜に手をつけた。


 野菜はサラダで食せる生野菜が並んでいる。葉物野菜は手でちぎり置き、トマトを薄く輪切りにして種を取り除いていた。干し肉を細切りにし、細かく刻んだ香草を入れて熱した鍋で軽く炒めて鍋から皿に移していた。チーズは薄く切ったものをいくつも準備している。


 そうした作業をしたあと、卵をいくつも割りいれ、塩やいくつかの調味料を入れて味付けしている。卵を手早くかき混ぜると、干し肉を炒めた鍋に残っていた油を綺麗に拭き取って、新たにバターを落とした。そこに溶いた卵を入れて、器用に巻いていく。途中、何か入れたようだが、カイルからは手元が見えなかった。そうして焼いた厚みのあるものをいくつか作って、取り皿に置いて、荒熱をとっているようだった。


 その間に、上下に分けたパンの間に、切り分けた野菜や細切りして炒めた干し肉、薄く切ったチーズ、最後に葉物野菜を再度重ね置き、最後にナプキンで覆った上に逆さにした平皿を置いて重しとしているようだった。


 残りのパンの間には、焼いた厚みのある卵を切り分けて、はさんでいく。


 間に野菜らを挟んだものと同じように、ナプキンをかぶせて逆さにした平皿を置いている。


 そこでフィーナは「終了~!」と手を上げた。


 あっけにとられる面々に、フィーナは自慢げな笑みを浮かべたのだった。




食材に関しては迷いましたが、中世欧州を参考にしています。

食材はこちらとほぼ一緒です。トマト、チーズ、バター、パン……等々。

和食・中華・エスニック等は基本、ない世界観を考えてます。

異世界なので、全く異なる食材がいいのではとも思ったのですが、説明が途方もなく長くなるので……。

(当初、転生者視点で書いてたとき、挫折した要因でもあります。それでフィーナ主体の話となってます。)

近々「アールストーン校外学習」は一つの章に編集予定です。かっこ書きがサブタイトルに変更予定。

メイン書いて過去振り返りパターンも試しましたが、どうも上手くいかなかったので……。


※7/13

「アールストーン校外学習」を第三章としました。

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