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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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70.貴族裁判 63


 トーマスは眼を潤ませ歓喜で震える唇を引き結び、ニルディアートに最上級の礼を送る。


『――とは言ったけれど……』


 ニルディアートとトーマスのやりとりに、場内は静やかにざわめいていた。


『長子が持つ権限を、部分的に第二子以降に譲れる決まりはなかったよね?』


 ニルディアートは法令に明るかった。


 トーマスとしては「精霊神の意向」として例外が認められれればと願っての事だったが、その点をニルディアートが言及してくるとは思っていなかった。



   ――規定に無いのならできない――



 そうした流れを感じ、裁判長は顔色を明るくし、弟、トーマスは焦りをにじませた。


 兄である裁判長と弟であるトーマス、それぞれが各々の思いを口にしようとした時。


『だったらトーマスが家長になれば「万事解決」だよね?』


 ――と。


 ニルディアートはあっけらかんとした口調で告げたのだった。




        ◇◇         ◇◇




 軽い口調で告げられたニルディアートの言葉に、場内は、しん、と静まりかえった。


 サヴィス王国は家督を「長子継承」としている。


 過去の歴史を鑑みての取り決めだった。


 静まりかえる場内に、ニルディアートは小さく笑う。


『この国の仕組みは把握してるよ?

 ――だけどね?

 君たち以上に、僕は知ってることが多いんだ。

 ――僕の言いたいこと、リディアならわかるでしょ?』


 首に腕を絡めて抱きつく精霊神に頬ずりされながら、リディアは問われる。


 ニルディアートの行為に戸惑いながら、リディアは小さく息をのんだ。


「上位十二貴族内、過半数の意向を得、加えて陛下の意向を得られるのであれば――上位貴族籍の長子でなく、第二子、第三子への家長の変更は……可能……」


 記憶にある知識を口にするリディアは、言いながら、自分でも確信が持てず、声は次第に小さくなった。


 不安に顔色を陰らせるリディアを、ニルディアートは優しく微笑んで抱き寄せた。


『大正解。大丈夫。間違ってないよ』


 告げた次の瞬間には、その身を場内上空に移していた。


『聞けっ!

 古より精霊われらの加護を厚く受け継いだ家系の者達よ!

 我らは己の欲に固執する者達に好意はない!

 我が愛すべき者は、血筋身分に関係なく、我が見いだす!

 リディア、トーマス、二人がこたび私の寵愛を受けし者達だ!

 二人を排除するというなら――私は二人について国外に行こうぞ』


 ニルディアートの発言に、場内が大きくざわめいた。


 精霊神が国外に行けるのか。


 反射的にアクアリューネ達を見たフィーナに、三精霊神が答えた。


『本人が望むなら可能』


 ――と。




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