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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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66.貴族裁判 59


 閲覧制限の書物は、古物故の扱いに気をつけるべき物と――秘匿されるべき歴史の裏事情が書かれた物とがある。


 大半は前者なのだが、後者もわずかながら存在する。


 そのため、グレイブも二つ返事で了承できなかった。


「理由を――お伺いしてもよろしいでしょうか」


『この国の為になるからに決まってるでしょ♪』


 言いながら、ニルディアートはリディアに抱きついて、惜しみない好意を示している。


 ――リディアは戸惑うばかりだが。


『うふふ~♪』……と、リディアに抱きつき、頬を密着させながらニルディアートは続けた。


『ボクとしては警戒するキミが理解できないけど。

 だってさ。

 ボクっていう精霊神の後見受けて、これまでと違う生活を望めるのに。

 金銭を望むでもなく、権威や名誉を望むでもなく。

 日常生活の向上を願う前に、知識の享受を求めるこの子が……自分の利益のために秘匿事項を利用すると思う?

 閲覧制限かかってるのも、なぜかは理解してないんじゃない?

 ――ねぇ、リディア。

 王立図書館で閲覧制限されるのって、どうしてだと思う?』


「え……?

 ……に……日記……とか……個人的な物だから……?」


『~~~~~~~っ♪』


 リディアの答えに、ニルディアートはとろける笑みを浮かべる。


 正否を告げないニルディアートに、リディアは焦った。


「に……っ、日記を人に読まれるのって、すごく恥ずかしいじゃないですか!」


『うんうん。

 そうだね~。

 ――ってことは、リディアも日記、つけてるの?』


「~~~~~~っ!!」


 赤い顔をさらに赤くするリディア。


 純粋無垢なリディアを愛でつつ、ニルディアートは少量の現実を織り交ぜた話を口にした。


『日記は個人的なものだけどね?

 歴史に関与したら、それはもう公のものなんだよ。

 その辺は教えていくけど――』


 ニルディアートはグレイブを――正確にはグレイブがいる階――見上げた。


『この子はこの場にいるどの裁判官より、過去の判例を把握してる。

 なのに――こんなにも欲がない。

 悪用される恐れなんてないのに、許可しない理由が、ボクにはわからない』


 ニルディアートの話を聞いて、グレイブも納得した。


「了承致します」


 グレイブの承諾を聞いて、ニルディアートはにんまりと笑みを浮かべた。


『キミの要望はかなえられたかな?』


『どう?』と、笑みを浮かべて訊ねるニルディアートに、リディアは自然とうなずいていた。


「お――お待ちをっ!」


 焦ったのは裁判長だった。






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