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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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65.貴族裁判 58


『侯爵、カディス・フォールズの処罰は君たち――上級裁判に任せるよ。

 上級裁判のあるべき結果を示してほしい。

 通常、審議は二週間程度だけどね。

 念のため言っとくけど――ボクたちは、知ろうと思えば、時間はかかるけど全てを知り得る。

 下手な画策は、きみたちの首を締めることになるから』


 にこやかなニルディアートだが、内容は辛辣だ。


 裁判長を始めとする裁判官達は、萎縮してニルディアートに礼をとった。


『――あ。リディアには頼んないでね?

 この子はボクが引き取るから。

 ――シア。

 いいよね?』


 ニルディアートはリディアの首下に腕を絡めて抱きついている。


 ニルディアートの言葉に、リディアは「え!?」と戸惑った。


 暴走する精霊神達の行動に、シアは口を挟めず、意気消沈していた。


 何もかも諦めたような――茫洋とした表情で状況を見ていたシアは、ニルディアートの言葉でリディアを見てしばらく――弾かれるように顔を輝かせた。


「もちろんっ!」


 告げて、遠く離れた席にいるリディアにぶんぶんと手を振る。


「ぜひぜひっ!

 私たちはあなたを歓迎します!」


「お――お待ちください!」


 焦ったのは裁判長だった。


「きゅ、急に生活の場が変わるのは、その者も望んでいないのでは――」


『そうなの?』


 首下に腕を絡ませるニルディアートは、寂しげな表情と眼差しで、リディアを見上げる。


 精霊神は共通して見目麗しい。


 幼子を連想させるあどけなさ、小柄な体躯、大きな瞳。


 造形美の懇願に、リディアは反射的に従いそうになるのを、顔を背けて我慢した。


 加護を受けていなければ、脊髄反射で了承しただろうが、加護のおかげで、ニルディアートを直視し、会話できる耐性は備わっている。


「そ……その場所で、過去の判例は学べますか?」


 その質問に、ニルディアートは眼を瞬かせて――リディアの考えを悟り、高らかな笑い声を上げた。


『グレイブ・ウォルチェスター!』


 突然、精霊神ニルディアートに名を呼ばれた国王は、反射的に礼を取った。


『我が加護を受けしこの者に、王立図書館への制限無き入館と、閲覧の許可を!』



   ――制限無き入館と閲覧



 その声に、場内がざわめいた。


 王立図書館は、入館にも一定の位が必要だ。


 中位下位貴族籍は事前に申請し、受理されなければ入館できない。


 それだけでなく、一部の書物は、閲覧制限がかけられている。


 ニルディアートは、リディアが望む物を制限なく開示するよう命じている。





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